2006/11/30

北欧のサックスCD

あまり知られていないことではあるが、北欧のサックス界は、1990年代から多くの名手を輩出している。その驚異的な演奏レベルの割に、あまり日本では知られていないのが惜しい(ありがち)。そこで、彼らが録音したCDの中から、いくつかをご紹介したいと思う。

一つ目は、スウェーデンの作曲家、ラーシュ=エリク・ラーションが作曲した「サクソフォーン協奏曲作品19」が収録されたディスク(Caprice CAP21492)。ラーション作品集というフレコミであるため、サックス系統の録音一曲に数千円は痛い出費だが、これは外せまい。独奏は、フランスでジャン=マリー・ロンデックスにも師事したクリステル・ヨンソン Christer Johnson。現在はスウェーデンで活躍する奏者である。

本アルバムで取り上げられているラーションの協奏曲は、往年の名手シーグルト・ラッシャーに捧げられた20分程度の作品。曲中のここぞ、という場所でフラジオ音域が多用されいるためか、至極演奏困難な作品として見向きもされなかった。しかしここ最近の演奏テクニックの向上に伴い、管打楽器コンクールの本選課題曲として使われたり、アドルフ・サックス国際コンクールの本選選択曲として使われるなど、人気を博している。

ラーション「協奏曲」はこの他にいくつか録音は存在するのだが、このヨンソン氏の録音が現状では最高のものではないだろうか。驚くほどしなやかな音色、安定したテクニック。ここまで洗練された音色の持ち主は、なかなかいないのでは?ソロに拍車をかけるようにオーケストラも大変上手で、録音も良い。日本では無名なプレイヤーにもかかわらず、この演奏の質!最初に耳にしたときは、驚きを通り越して唖然とした。

二つ目は、サクソフォン・コンセンタス Saxofon Concentus というサクソフォーン四重奏団のファースト・アルバム「Premier Quatuor」。デンマークで活動する四重奏団で、今までに二つのアルバムを発表。コンサートや新作委嘱なども、精力的に行っているようだ。

黎明期のサンジュレ、中期のシュミット、現代のゴトコフスキーと、サクソフォン四重奏の響きの歴史を一気に俯瞰できるのが嬉しい。フランスのレパートリーといえば、世界中の四重奏団が演奏&録音を繰り返しているが、それらと比べても遜色ないのは、驚くべきことだ。

高レベルな四重奏団で、洗練されたサウンドとテクニックが素敵。どの演奏にあっても、余力の抜けたリラックスした響き。聴いていて疲れる演奏というものは世の中には多々あるが、シュミットやゴトコフスキーのような難しい曲でも、楽譜の表面上の再現に終わらない、余裕ある演奏が楽しめる。

三つ目は…極限のサックス。演奏はヨリエン・ペッテション氏というスウェーデンのプレイヤー。おそらく奏者と親交の深い、北欧の同時代の作曲家への委嘱作品を集めたディスク「Saxophone Con Forza」。この「Con Forza」はどうやらシリーズもののようで、「Trombone Con Forza」など、ショップで見かけたこともある。

これはとにかくすごい。様々な室内楽形態(無伴奏、声楽・ギター・ピアノとのデュオ、ピアノ三重奏、テープ)によるサクソフォーンのための高難易度作品を、次から次へとこなしてゆくペッテション氏。楽曲がハードなら演奏もハードで、ほとんど極限的な演奏技術を見せ付けられる。ディスクの最後に置かれたフェリエ「Tio Stupor」は、テクニックに次ぐテクニックの連続で、開いた口が塞がらない…。

しかし、ディスク全体はただの技巧の見本市ではない。きちんとした音楽の流れがあり、そして美しい音色が随所にあふれていることが、価値を高めていると思う。確かに難解ではあるけれど、見通しが良くて、ただのワケノワカラナイ現代音楽のようには聴こえない。曲ももちろんだが、ペッテション氏の高度な演奏によるところも大きいのだろう。

以上三枚。北欧のサクソフォン界を代表する(と思われる)アルバムをご紹介した。フランスや日本だけでなく、世界には他にも素晴らしいサックスがあるんだぞ、ということで、ぜひ耳にしていただきたいと思う。まとめかたがベタだなあ…。

2006/11/28

リュエフ「ソナタ」

ジャニーヌ・リュエフの「ソナタ」。無伴奏曲のための古典的作品としては、ボノーの「ワルツ形式によるカプリス」と並んで高名なものの一つだ。

1922年パリに生まれ、作曲をビュッセルに師事、1948年にローマ大賞を受賞。女流作曲家。サクソフォンの世界とジャニーヌ・リュエフとの関わりは結構深いもので、 CDのライナーノーツを読んでみて驚いたのだが実は彼女はパリ国立高等音楽院でマルセル・ミュールのクラスの伴奏者を務めていたことがあるそうだ。「ソナタ」はミュール退官後にサックス科の教授がダニエル・デファイエに交代し、そのころに書いた作品だ。

1967年に当時の名手デファイエに献呈された、無伴奏アルト・サクソフォンのための曲。特殊な技巧を必要とするところは一切なく、演奏に際しては純粋に奏者の技量が試されるのだが、名曲の割りに録音が少ないところを見るとプロ奏者でも難しいのかな、と思ってしまう…(そんなことないか)。三つの楽章からなり、第一楽章ではリズミックな主題が面白く聴かれ、第二楽章は一転、静かな部分から徐々に頂点へ向かってゆくシャンソン。そしてなんといっても第三楽章、曲を挟む形で存在するスラーのパッセージの速いこと!

ところで実はこの曲、特に第二楽章はリュエフがデファイエを想う愛の歌(!)、だという噂がある。いや、本当に根も葉もない噂であるし、真偽のほどは、今となっては知る由もない。しかし仕事上で比較的近い位置にあった二人が、私的にはどんな関係だったのか…というのは、興味あるところだ。

それは、楽譜の最初に記された献呈辞からも読み取ることができる。「A Daniel Deffayet en toute amitie」…つまり、for Daniel Deffayet with totally friendshipである。こういった、「en~」付きの献呈辞はなかなかお目にかかれるものではない。それに、女性から男性へ向けて献呈された作品が「無伴奏」という演奏形態である点も、いろいろ考えさせられるものがあるではないか?

ファブリス・モレティ氏のCD「SONATA!(Momonga Records)」やケネス・チェ氏の「Sonate(RIAX)」、そして国内奏者のものでは、須川さんの「Exhibition of Saxophone(EMI)」など、最近になってようやく入手しやすいCDが増えてきた感がある。とくにモレティ氏の演奏は、師匠デファイエ譲りの美音と超絶テクニックが堪能できる一級品のディスクで、イチオシ。チェ氏や須川さんの演奏も良いのだけれど、どちらも録音が悪いのが玉にキズ。

もし機会さえあれば、デファイエ自身の演奏(Crest)も聴いていただきたい。1970年代に、この曲の完成形を提示してしまった、恐るべき録音だ。上記のエピソード(というか、噂か)を知りながらこの演奏を聴けば、第二楽章の聴こえ方が変わってくる…かもしれない。

2006/11/27

No Man's Land

以前投稿した記事(こちら→トンでもないCD) に書いたCDをゲットしたのでご紹介。結局、とある知人を通じて音だけ入手することになった。

1. フランク・ザッパ - FZ for Alex (originally for Saxophone?)
2. フィル・ウッズ - ソナタ (originally for Alto Saxophone)
3. グラハム・フィトキン - GATE (originally for Soprano Saxophone)
4. エンリコ・ピエラヌンツィ - Elisions du Jour
5. パクイト・ドリヴェラ -小組曲 (originally for Saxophone?)
6. 吉松隆 - ファジイバード・ソナタ (originally for Alto Saxophone)
7. カルロ・ボッカドーロ - エレジー マイルス・ディヴィスの思い出に (originally for Trombone?)
8. フランコ・ダンロレア - トレント

アレッサンドロ・カルボナーレ Alessandro Carbonare 氏(クラリネット)と、アンドレア・ディンゴ Andrea Dingo 氏(ピアノ)のアルバム「No Man's Land(CVLD07000)」。カルボナーレ氏と言えば、リヨン歌劇場管弦楽団やフランス国立管弦楽団、スーパー・ワールド・オーケストラの主席を務め、ソリストや教育者としての名声も高い有名な奏者。何年か前に知人が来日時のコンサートを聴きに行ったらしいが、それは良いコンサートだったとのこと。ブラームスのようなロマン派には、イタリア人ならではの「歌」で、そして現代モノには圧倒的なテクニックと美音でと、とにかく器の広い奏者なのだ。

そしてこのCD。セルマーのサポートを受けて、2003年に録音・発売されたアルバムだそうだ。もう何度か聴いたけれど、こいつは凄い!最近聴いたCDの中では、いちばんのヒット。

何が凄いって、まずサクソフォンのために書かれた曲をBbクラリネットで演奏してしまっていること。須川さんの演奏で慣れ親しんだ、あの吉松隆「ファジイバード・ソナタ」がBbクラリネットで演奏されているのだ!ちょっとサックスをかじったことのある人であれば、衝撃的ではないか?

ファジイバードだけではない。フィル・ウッズ「ソナタ」に、グラハム・フィトキン「GATE」、ジャズサックス奏者のドリヴェラ d'Riveraの作曲した「小組曲」と、フランク・ザッパのメドレー「FZ for Alex」…クラシックの範疇を超えながらも、一貫してコンセプチュアルなプログラム。この選曲のセンスは、他のクラシック・クラリネット吹きには到底、真似できないだろう。

クールでカッコよくて、クラシックなのかロックなのかジャズなのか…こういう世界はサックスの独壇場であるとばかり思っていたが、クラリネットでもできるんだな(しみじみ…)。失礼ながら、こんなに幅広い表現を持っている楽器だとは思いもしなかった。

吉松、ウッズ、フィトキンの作品はサックスで聴いたほうがさすがにしっくり来ると思ったが、これはこれでクラリネットがクラシックを飛び出した形態の極限形と断言できる。演奏テクニック、ノリ、即興演奏、音色、どれをとっても文句のつけようがないすばらしいCDだ。

フィトキン「Gate」はオリジナルのソプラノ・サックス版の演奏を聴いたことがないが、ここでのカルボナーレ氏の暴れっぷりはすさまじいの何の。アルバム収録曲中で白眉の演奏だと思う。ウッズやファジイバードの即興部分も聴きモノ(サックスではこうは吹けないだろうな)。ザッパのメドレーは特殊奏法も生かしながら、ネジが一本外れた感じを表現しているし、小組曲での愉悦感も楽しい。

あらゆるクラリネット吹きにオススメ。クラリネットを見る目が変わるとはこのことだ。サックスを吹いている方も、ちょっとキワモノを聴いてみたい方はどうぞ(笑)。

日本語でこのCDについて書かれたページが見つからなかった。日本ではまだほとんど知られていないCDなのだろうか?もったいないなあ。

2006/11/26

アマチュアの演奏の価値?

アマチュアの演奏を、わざわざお金を払って聴きに行くことの目的は何なのだろうか。特に吹奏楽の世界では、コンクールやアンサンブルコンテストの全国大会に行くと、びっくりするほどの満員で、たくさんのお客さんが演奏を楽しんでいる。その熱気は異様なほどだ。また、吹奏楽が有名な学校のコンサート。入場料が1000円を超えるにもかかわらず、チケットは売り切れ、開演前には長蛇の列ができる。

…しかし、自分の感覚からいえば入場券を買ってコンクールやコンサートを観に行こうという気にはなれないのだ。誰か知り合いが出場しているとか、応援が目的だとか、毎日吹奏楽を聴かないと禁断症状が出るだとか、そういうのなら事情が分かるけれど、 果たして吹奏楽を楽しむのに、高価なアマチュアの演奏会に出かける必要があるのだろうか?

1000円以上のお金を払って音楽を聴きに行くくらいなら、絶対プロの演奏を聴いたほうが満足できると思うのだがなあ。それでこそのプロだし、演奏は比べ物にならないだろう。

とまあ、しかしそんなことばかりを言っていたら、最終的には私たちアマチュアの発表場所がなくなる。アマチュアの存在価値すらなくなってしまうのだが。

2006/11/25

NSF最新号

ノナカ・サクソフォン・フレンズ最新号(第18号)が、PDF形式でアップされていた(こちら→(http://www.nonaka.com/j/new/nsf_report/index.html)。内容はセルマー寄り…当たり前か。しかしこういった冊子が無料で読めるのは、大変ありがたいことだ。

原博巳氏の世界サクソフォン・コングレスのレポートなど、楽しい記事が多い。

2006/11/24

デニゾフ「ソナタ」の別アプローチ

平野公崇氏のデニゾフ「ソナタ」第3楽章ジャズアレンジ。

「こりゃあおもしろい!」 この曲をジャズ風に編曲するということのアイデアの奇抜さ、それに演奏者一人一人の技術の高さ。 このトラックを初めて聴き終わった後しばらく、興奮が冷めなかったのを鮮明に覚えている。それに、この演奏を聴くまでは原曲はあまり 頻繁に聴かなかったのだが、この演奏に接した後に改めて聴きなおすといろいろな妙技が散りばめられているのに気づいて今ではお気に入りの曲の1つになってしまった。

エディソン・デニゾフ。シュニトケやグバイドゥリナと並び近現代ロシアを代表する現代音楽作曲家の一人である。最初数学を専攻していたが、モスクワ音楽院でショスタコーヴィチに師事し頭角を現す。カンタータ「インカの太陽」で国際的に広く知られるようになり、その後モスクワ電子音楽スタジオなどで 自由な作風で活動を続けた。

「ソナタ」は1970年、フランスの名手ロンデックスに献呈された。古典的なアレグロ→レント→アレグロのソナタ形式でまとめられている、三つの楽章からなる ピアノ伴奏つき独奏曲。当時サクソフォンのレパートリーはアカデミックなものに限定されており、これに危惧を感じたロンデックスはデニゾフに現代の書法に よるサクソフォン曲を委嘱、世界で初めてサクソフォンのための現代曲が誕生することとなった。委嘱に際してロンデックスは特殊奏法を作品に織り込むことを合わせて 依頼したため、演奏には重音奏法、フラッタータンギング、微分音、スラップタンギングなどの技術が不可欠である。

今回紹介している演奏は、第3楽章の伴奏をクリヤマコトがアレンジしたもの。モダンジャズの影響下にあったデニゾフの当時の作風を極限まで引き出した見事な編曲である。 ノリのよいトリオの伴奏に乗って楽譜どおりに走るサクソフォンが破綻のないスマートな演奏を繰り広げ、曲に合わせて自然と興奮してきてしまう。

原曲を知っている人は「この曲の面白さってこんなところにあったんだ!」と再認知できるはず(というかやはりドゥラングル演奏の原曲をたっぷりと 堪能してからこちらの演奏に接してほしい)。アレンジ、演奏ともども、「曲の面白さを引き出すってこういうことなのか」と思わせてくれる。

ブログへ乗り換え

「ダイアリー」をブログへ移行しました。本当は、過去ログを全て移し変えた後にリンクする予定だったのだけれど、早速Googleにクロールされてしまったので、仕方なく中途半端な状態で公開。

しばらくは過去ログの移行作業のため、更新が滞ると思います。

モレッティ氏、今年のリサイタル情報

ファブリス・モレッティ氏の 、今年12月のリサイタル情報を教えていただいたので12/5まで載せておこう。

昨年こそは聴こうと思っていたのだが、あいにく都内でのリサイタルが行われず、さらに忙しい時期と重なったこともあって聴けずに悔しい思いをしたのだ。今年は来日しないのか…と思い込んでいたので、このリサイタル情報はうれしい!(情報提供ありがとうございましたm(__)m)

いくつかのCD(ソロ、四重奏)を聴く限り、デファイエがミュールから継いだ伝統的なフランス・アカデミズムを21世紀に伝える大変稀な奏者。クランポン吹き(珍しい!)。音色が美しい上に、とてつもなく上手い。サックス吹きとして、これは聴かなければ大損でしょう!

あの服部吉之先生とは留学当時から親交があるそうだ。以前モレティ氏の話を伺ったところ大絶賛していた。

追記:PDF形式のポスターもらったので、リンクを張っておきます(こちら→リサイタルポスター)。
どうやら洗足学園の学園祭前夜祭と日程がぶつかっているらしい…。しばらくトップに貼り付けておきます。

・ファブリス・モレッティ サクソフォンリサイタル
出演:ファブリス・モレッティ(sax)、服部真理子(pf.)
2006/12/6(水)19:00開演 上野公園内奏楽堂
前売り:3000円 当日:3500円
曲目:リュエフ「ソナタ」、サンカン「ラメントとロンド」、パスカル「ソナチネ」、バッハ「ソナタ第6番」、プラネル「プレリュードとサルタレロ」、シャイユー「アンダンテとアレグロ」、ミヨー「スカラムーシュ」
問い合わせ:モモンガラボ(048-810-2332)
order@momonga-lab.com
http://momonga-lab.com/

2006/11/19

スタイルのるつぼ

 平野公崇氏、雲井雅人氏のアルバムを買うのが楽しみでならない今日この頃。雲井氏のアルバムが発売(12/20)されてから、まとめて買ってしまおうかな。

日本には、本当に多種多様なサクソフォニストが活躍しているものだと思う。CDショップの棚に並んだCDを一枚一枚手にとって、プログラムを見ていくだけで、奏者たちが取り組むレパートリーの多様さに驚き、いざ音を耳にすれば、その音楽的アプローチの違いや、音色の違いに驚く。

何年か前のサクソフォン・フェスティバルのメインプロで、雲井雅人氏、平野公崇氏、原博巳氏がそれぞれ、自分の好きなプログラムを持ち寄って、30分程度の演奏を行う、という企画があった。いずれも日本を代表するサクソフォニストということで、どの演奏も鮮烈な印象を受けたものだったが、それ以上にここまで各個人で演奏スタイルが異なるものかと、驚いた。

しかしこのレベルになってくると、既にサックスをコントロールする技術云々とか、普段私たちが気にしているつまらないことよりも、演奏家の個性というものが重要になってくるのだと感じた瞬間だった。目を閉じて聴いても誰の演奏か判るとは、まさにこのこと。

そのフェスティバルの催しをさらに面白くした要因が、曲の選択をプレイヤーに一任したことだったと思う。雲井氏=マズランカ、平野氏=ローバ&ヒンデミット、原氏=フランク、これほどツボにはまる組み合わせをまとめて聴く機会も、なかなかないのでは。演奏家の個性は、演奏そのものだけではなく、その人の音楽活動全てに表れる。

さて、まさにサックスの「るつぼ」である日本のサクソフォン界の現状を作り出した原因は何か?というと、フランス、アメリカ等への留学文化の賜物だろうか。 海外の特定の国のサクソフォンは、例えばフランス、イギリス、アメリカなどは、自分自身のなかでは「こういうものだ」という定義みたいなものを連想してしまうのだが、その特徴がそのまま日本に持ち帰られて、国内にエクスクラーフェンのような海外サックスのミニ文化を作り出したのだろう。

そういったところで、多種多様性ばかりで日本のサックスの独自性は?と言われると、「そういえばどこにあるんだろう??」と答えざるを得ない。その辺は、今後に続く奏者たちが創り上げていくのだろうか。

なんだか読み返してみると、ずいぶんまとまりがないぞ(汗)。

2006/11/18

トンでもないCD

アレッサンドロ・カルボナーレ氏と言えば、言わずと知れたクラリネットの名手だが…。今日インターネットを徘徊していたところ、氏のCDの中に、トンでもないものがあるらしいことが判明。

な、なんと、



吉松隆「ファジイバード・ソナタ」&フィル・ウッズ「アルトサクソフォン・ソナタ」をBbクラリネットでやっちゃったアルバムですよ、奥さん!!

し、信じられない。アルトサックスのために書かれた作品としては、両方ともかなりカッコいい名曲だが、それをまさかクラリネットでやったアルバムが存在するとは…。え、常識だって?ちなみにアルバムタイトルは「No Man's Land」。

これ、聴いてみたいなあ(久々に物欲燃焼)。探してみよう。

2006/11/17

Rob BucklandのCD

「イギリスのサクソフォン」に新着資料。なかなか鮮烈なレコーディングだったので、ページに加える前に、とりあえず速報を…。

ロブ・バックランド Rob Buckland氏のソロ・アルバムで、「Towards the Lights(Quartz QTZ 2020)」というCD。「ロブ・バックランドって誰だ」という方には、アポロ・サクソフォン四重奏団のアルト奏者、といえば分かるのではないだろうか。イギリスのサクソフォン界の中でも、比較的若いサクソフォニストである。

詳しいレビューは「イギリスのサクソフォン」ページに回すとして、雑感を少々。

イギリスのサクソフォン奏者って、どうしてこうも上手いのかなあ…。使っている楽器は、師であるジョン・ハールの影響か、ヴィンテージ(セルマー)。昔の楽器よりも現代の楽器のほうが性能が良いわけで、その点から言えばヴィンテージ・サクソフォンというのはけっこう演奏上の制約があるものだと考えるのだが。それを全く感じさせない演奏…。

そして、このエモーショナルな音色と独特のヴィブラート。日本やフランスのサックスとは、そもそも根本的な発音の方法が違うのが良く分かる。肺と楽器の間に何も抵抗がないのか?日本のコンクールなどでは、特に迎合されなさそう。

楽曲の山場のフォルテ部分って、日本人だったら普通は響かせよう響かせようと思って吹くものじゃないだろうか?そうではなくて、とにかくサックスを震わせようというブレス・コントロール。だから息はストレートにどんどん入るし、ヴィブラートなどによるごまかしが全くきかないのだ。初めて聴くとかなりびっくりするが、これこそイギリスのサックス!曲のツボにはまると、これほど魅力的な音色は他にない。

吉松隆「ファジイバード・ソナタ」が入っているのが楽しい。自分に刷り込まれているのは須川さんの演奏だが、ババックランド氏の演奏はそれに勝るとも劣らないかっこよさ。ピアニストのノリもすばらしい!殊更にテンション・ノートを強めに弾き、和音が重なるところなど完全にジャズ化させているあたり、本当にクラシックの人かな…と思ってしまうほどだ。

アンディ・スコットの作品(サックスとヴィブラフォンのデュオ)は、これエマーソン・レイク&パーマーそのまんまでしょ、というツッコミを入れたくなる。まさにプログレッシヴ・ロックの影響ですなあ。

タワレコで買ったところ、ちょっと高かったが(\2,510)、このれはなかなかの逸品ではなかろうか。

2006/11/15

Bloggerへ移行

この「ノート(ダイアリー)」だが、状況によってはGoogleのツールの一つであるBloggerへの移行をする…かもしれない。というのも、「Bloggerのバージョンアップが近い」と各所で囁かれているため。現在のBloggerにはあまり魅力を感じないが、徐々に洗練されてゆくGoogleのツール群はどれも魅力的だ。 

もしGoogleがWebスペースサービスを提供し始めたら、間違いなくメールアドレスからWebページまでYahoo!から全部引っ越すのだがなあ。

本日、ピアノ四重奏のスコアが到着。ピアノ四重奏とは言っても、[violin, viola, cello, pf.]ではなくて[ssax, asax, tsax, pf.]。とある編成の組曲の編曲譜である。曲名はまだ伏せておくけれど、この編成を見ただけで何の曲の編曲譜か分かってしまう人も、もしかしたらいるのではないだろうか…。とても素敵な曲です。 さて、怒涛のパート譜起こしだっ。

2006/11/14

ジェローム・ララン氏、再来日

フランスのサックス奏者であるジェローム・ララン氏(本人のブログ→http://www.jeromelaran.com/)は、なんと12/23&24のサクソフォン・フェスティバル2006に合わせて来日するらしい。

今年の7/19に大泉学園ゆめりあホールで聴いた「サクソフォーン旋風」は、ある意味、今まで聞いたサクソフォンのコンサートの中でも特に印象に残ったものの一つだが、今度の来日では一体何を披露してくれるんだろうか…?

聴いたことのないような魅力的な曲だろうか?それとも正統派のフレンチ・アカデミック作品?どちらにせよ、とても楽しみ!!

2006/11/12

コンクール結果速報

アドルフ・サックス国際コンクール2006の表彰式、リアルタイムで観ている(現在日本時間で8:00少し前)。

音も映像も悪くてよく分からないが、コレソフ氏一位、フェリペ氏二位、貝沼氏三位。のようだ。

レニングラード

先ほどアパートの隣の部屋からショスタコーヴィチの「交響曲第七番"レニングラード"」が漏れ聴こえてきたので、対抗して同じ曲を再生してみている(←なんだそりゃ笑)。

爆音では負けない、スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト連邦交響楽団の演奏。1978年2月18日のライヴ録音。シカゴ響の演奏を聴いて、「美しすぎて曲の雰囲気を損なっているんじゃないか」なんて思ってしまう向きにはぜひどうぞ。これぞ最強のレニングラードだと、勝手に思っています。

アドルフ・サックス国際コンクール2006終了

アドルフ・サックス国際コンクール2006が終了。参加者の皆さんはお疲れ様でした。野次馬の身ながら、二週間近くに渡って大変楽しませていただいた。

特に今回は、インターネットでのリアルタイム中継が観られる&全参加者の演奏の様子の録画が観られる(!)ということで、結果だけではなくて内容もばっちり堪能することができた。Adolphesax.comの運営者の努力の賜物だと思うが、ぜひ次回も続けていただきたい。

コンクールを通しての様々なデータ(結果や曲目など)は、個人的に以下のページにまとめた。

こちら→アドルフ・サックス国際コンクール2006非公式集計ページ

このコンクールは、もちろん奏者個人同士が戦うコンクールだとは思っているのだが…別の側面から捉えれば、参加者のバックボーンである「教育者」の戦いでもあると思っている。

第一回優勝者のヴァンサン・ダヴィッド、第二回優勝者のアレクサンドル・ドワズィー氏は、いずれもパリ国立高等音楽院のドゥラングル・クラスの出身。第三回の優勝者である原博巳氏は東京藝術大学別科の出身であるが、そのほかの入賞者はほとんどがドゥラングル・クラスの出身だった。そんなわけで、今まではドゥラングル門下圧勝という感じだったのだが(本選もドゥラングル門下対抗という感じ)、今年はずいぶん毛色が違ったようだ。

さて、ここで今回の優勝者セルゲイ・コレソフ Sergey Kolesov氏の経歴を追ってみよう。グネーシン音楽アカデミー出身で、マルガリータ・シャポシュニコワ Margarita Shaposhnikovaに師事、キエフ国際サクソフォーンコンクール優勝、サクシアーナ国際コンクールではセルマー賞を受けている。ここで驚くべきはやはり、フランスへの留学経験がないこと、ではなかろうか。

また、六位までの入賞者も、カナダ、スペイン、日本、フランスなど世界各地にばらけた。これは、一昔前から考えれば驚くべきことだと思う。

世界中のサクソフォン教育が、フランスのレベルに追いつかんと必死にグレードアップを図っていることが、今回のコンクールから窺えるのではないだろうか。

2006/11/11

アトム・ハーツ・クラブ・デュオ

Yahoo!オークションで落札した、福田進一&フェルナンデスのアルバム「アトム・ハーツ・クラブ・デュオ(DENON COCQ-83079)」を聴いた。

吉松隆氏の「アトム・ハーツ・クラブ・デュオ」が入っているということで、以前から気になっていたが、どうやらいつの間にか廃盤になっていた模様。慌ててインターネットを使って探し、2000円弱で落札。クラシック・ギターのCDを買うなんて、もちろん初めての経験だ。

吉松作品以外に、ロッシーニ「どろぼうかささぎ」のデュオ版編曲(そんなのあるんだ!)、ロドリーゴのオリジナル組曲、アルベニスの小品から武満まで、かなりごちゃまぜの選曲。この「なんでもアリ」こそがこのアルバム最大のコンセプトであり、それに乗じて演奏までも楽しい雰囲気に仕上がっている。

クラシック・ギター演奏を聴く初心者としては、気楽に聴けてとても嬉しい。休日の昼下がりに、美しいギターの音色にのせて、19世紀から現代までの珠玉のメロディがスピーカーから流れてくる…なんて、ちょっと贅沢な時間ではないだろうかね。

落ち着いた雰囲気も、乱痴気騒ぎも…ギターという楽器の表現力には驚き。拡張奏法(ボトル・ネック)も、かなりウケます。アゴーギクの変化が多いのは、気心知れた二人のデュオだからなのかどうなのか、弾き飛ばされている部分がたくさん。ギターって譜面の再現に関してはこんなもんなのかな、それとも奏者のクセ?

吉松隆「アトム・ハーツ・クラブ・シリーズ」については、また今度。

2006/11/10

グラズノフの難しさ

最近、グラズノフの「四重奏曲」をさらっている。思えば今までやってきた曲は、デザンクロやら何やらだった。しかし今回取り組んでいるのは、サックスの世界としては大変珍しいロマン派の生き残り。難しい。

サックスの世界に多く存在するネオ・ロマンティックの作品は、どんな難しい作品でも、登攀するときにも足がかりとなる部分があるものだった。それまで吹奏楽などで触れてきた現代の音楽と、どこかしら共鳴する部分があって、その部分を自分たちのアンサンブルの武器として聴かせてゆけば良かったのだ。

グラズノフの難しさは、演奏するときにそういうものがほとんどないこと。好きな曲であることには違いがないのだが、いざ演奏するとなるとこれが大変。いったいどこをどうやって組み立てていけば良いのか…中途半端なフィンガリングの難しさと相まって、これから苦労しそうな予感だ。好きな曲だからって、吹くときも上手くいくとは限らないものなんだなあ。

…というかそもそも、ロマン派の作品をほとんど聴かないのにも原因はあると思う。

でも、グラズノフははまると面白いかもな、なんて奥の深い作品なんだろうか。他のどの曲でも感じたことのない哀愁、そして渋さに惚れる。

2006/11/09

本選進出者決定

集計ページにも情報を追加したが、アドルフ・サックス国際コンクールの本選進出者が決定。日本からは貝沼拓実氏が唯一の進出者となり(おめでとうございます!)、その他フランス、カナダ、スペイン、ロシアと、国際色豊かな面々となった。

本選は10日から2日間に渡って行われる。

ところで本選課題曲の作曲者と曲名が分からないのだが…?

ライヒとリゲティの鏡絵

アドルフ・サックス国際コンクール、二次予選の課題曲「ライヒとリゲティの鏡絵」。作曲はファルシャンプ氏で、タイトルの「ライヒ」「リゲティ」とはもちろんあのスティーヴ・ライヒとジェルジー・リゲティのことだ。

今回のコンクール、演奏の様子が全てストリーミングビデオで観られるということで、あちこちで話題になっているが、さっそくこの課題曲も聴くことができた。

曲は大きく分けて三つの部分からなる。「ライヒ」を意識した第一部は、単音のパルスが徐々に展開されてゆくイメージ。調性感抜群で、ファンキーなフレーズがバリバリ、とてもかっこいい。

第二部は「リゲティ」だろうか。サクソフォンが特殊奏法とアルティシモを駆使するモノローグ。重音からフラジオへの大跳躍、グロウ、微分音、高速フレーズと、技巧の見本市のようになんでもあり。

第三部は爽やかで快速なフレーズに、時折第一部や第二部のエコーを交えながら進んでゆく。最終部ではフラジオがこれでもかとばかりに連続。こりゃ凄いな。 一次予選課題曲の「Ge(r)ms」よりも、聴いていて格段に楽しい作品だと思った。技巧だけではなくて、音楽性、とかノリとか構成感、と言ったものも一緒に露呈してしまう。二次予選ともなれば、審査される部分が変わってくる、ということなのだろう。

2006/11/07

ランベルサールの作曲コンクール

フランスのランベルサールで行われた吹奏楽作品の国際作曲コンクールで、日本人の田中久美子さんが優勝されたそうだ。情報元はこちら(→http://www.bandpower.net/news/2006/11/02_tanaka/01.htm)。

それだけでももちろんニュースなのだが、今回のこのコンクール、普通の吹奏楽曲部門のほかに、アルト・サクソフォン協奏曲部門なんていうのもあり、田中さんが優勝したのはそちらの部門だったのだそうだ。曲名は「セドナ」。最終選考は演奏会形式で行われ、フランスのプロフェッショナルな吹奏楽団(フランス機動憲兵軍楽隊)に、サクソフォン独奏はダニエル・グレメル Daniel Gremelle(!)。

しかも、審査委員長にパリ警察音楽隊の超有名指揮者、デジレ・ドンディーヌ(!)。審査委員にはアラン・クレパンの名前まである。初めて存在を知ったコンクールだが、一癖ありながら豪華な催しのようで興味深い。

「セドナ」は太陽系の矮小惑星の名前だが、一体どんな作品なんだろうか。聴いてみたいな。de Haskeなどから出版される可能性はある…かも。

2006/11/06

High-Jinks宣伝

学園祭中の本番を宣伝しておきます。High-Jinks Wind Orchestraという、ポップス専門の吹奏楽集団の演奏。テナーサックスで乗っています。

今回は素敵なゲストを多数お迎えし、盛りだくさんでお送りする予定。

High-Jinks Wind Orchestraライヴ@学園祭
出演:High-Jinks Wind Orchestra featuring Special Guests!
2006/10/7(土)14:00開始 筑波大学学園祭松見池ステージ 雨天中止
入場料:もちろんタダ。
パストリアス「Soul Intro ~ The Chicken」、ロジャー「ドレミの歌 ジャズアレンジ」、エリントン「キャラバン」、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー ポップスアレンジ」他
お問い合わせ:http://www7a.biglobe.ne.jp/~high-jinks/

セミ・ファイナリスト決定

現在日本時間で8:00am。三連休の後は眠い。

アドルフ・サックス国際コンクール2006、一次予選が終了。同時に、二次予選への18人進出者(セミファイナリスト)が決定したようだ。集計ページにも情報を追加中。

18人中2人が日本人。パリ国立高等音楽院で勉強なさっている白井奈緒美氏と、日本の管打コンクールで二度の入賞経験を持つ貝沼拓実氏。

個人的には、ミハ・ロジーナ氏やアントニオ・フェリペ=ベランジェ氏あたりも気になるかな。

2006/11/05

ハバネラのDVD

昨日のハバネラの演奏会、即売所でひと悶着…最初、机の上に並べられていたのは室内楽コンクールのライヴCDと、alphaレーべルの市販CDだけだった。既に持っているし、もう一枚買う必要はないよね、ということで気楽に眺めていたのだが…。

後ろのケースの上にぺらっと無造作に置かれた品目リストに目をやると…alphaレーベルの三枚と、自主制作のオムニバスCDと、ん?んん?DVD!?「これください!」と、即買いしたのは言うまでもない。というか、始めから机に出しておいてくれ…。

売り手の方曰く、「ツアー最後まで売り切れることはないでしょう」とのことだったが、開演前も休憩時間中も終演後も飛ぶように売れていて、昨日を終えた時点でほとんど余りがなかったぞ…(^^;恐るべし。

…さてそんなわけで、昨日の演奏会場で販売していた、ハバネラ・カルテットの自主制作DVD-R。ボルドー市の「Base」と呼ばれる潜水艦ドック内でのライヴを収録したもの。

バッハ「平均律クラーヴィア曲集よりBMV847, BMV863, BMV857, BMV873」、リゲティ「バガテルより1, 4, 5, 6, 7, 8」、棚田文則「ミステリアス・モーニングII」、マルケアス「コンポジション・ヴァーティカル」、ピアソラ「肉屋の死」「フガータ」「ミケランジェロ70」。

早速観てみたが、いやあ昨日の演奏会の記憶を呼び覚ましますなあ。もちろん生で聴いたほうが数段に良いが、カメラワークやライティングがなかなかカッコよく構成されていて、観応え十分。←かなりミーハー。

2006/11/04

ハバネラQグランプリコンサート2006

本日2エントリ目。ハバネラの演奏のこと(1エントリ目はUTSBの定演のこと)。

・ハバネラ・サクソフォン四重奏団 グランプリコンサート2006
クリスチャン・ヴィルトゥ(ssax)、スィルヴァン・マレズュー(asax)、ファブリツィオ・マンクーゾ(tsax)、ジル・トレソス(bsax)
2006/11/4(土)14:00開演 東京文化会館小ホール
バッハ「イタリア協奏曲」、ラヴェル「弦楽四重奏曲」、リゲティ「6つのバガテル」、ドビュッシー「ベルガマスク組曲」、ビゼー「カルメン組曲」、ピアソラ「3つのタンゴ」

現在、世界最高のサックス四重奏団とも評される、ハバネラ・サクソフォン四重奏団のコンサート。昨年の第5回大阪国際室内楽コンクールでの優勝以来、心待ちにしていた全国ツアーの初日。上野公園の喧騒からしばし離れた空間で響くサックス四重奏は、噂に違わぬ素晴らしいものだった。

ただのサクソフォン四重奏ではない。常軌を逸したコントロールと美音。そして、考えられる限り緻密かつ有機的なアンサンブル。

まず、サックスという楽器の制約(低音のアタックが云々とか、弱音が安定しない云々とか)は、彼らの前では無意味。しかもハバネラが向かう先は、単なる高レベルなサックスではない。とにかく彼らが表現しているのは、美しく、聴いて心地よい「音楽」そのものの高みだ!

そしてさらに、極限まで練られたアンサンブル。普段いろいろな演奏を聴いて「このアンサンブルはすごい!」と感心することは稀にあるが…その考え方は甘かったんだな。一体の巨大な生き物が、呼吸して、メロディを吹く。ただそれだけのこと。「受け渡し」!?「和音」!?いやいや、一体の生き物が四つ音を出すだけなのだから、そんな心配は俺たちには無用だぞ、ということか。なるほど。

はあ、ハバネラの演奏をなんとかして言葉に落とそうとしているのだが、まったくもって意味不明になってしまった。それだけ衝撃的で、度肝を抜かれた、ってことにしといてください。

筑波大学吹奏楽団第56回定期演奏会

ハバネラ、凄すぎ。きっとあれはサックスじゃないんだ!!弱音はクラリネット?トゥッティは金管?コントロールは声楽か、ただの日常の息遣い?和声は弦楽器?あれ?いや、あれこそがサックスなのか?あー、もう良く分からん。

…ハバネラのほうは余韻が強すぎて、まだ言葉に落とし込めない。言葉に落とそうとする行為自体が愚なのかもしれないが。

とりあえずは今日もう一つ聴いてきた筑波大学吹奏楽団第56回定期演奏会のことを書こう(笑)。

・筑波大学吹奏楽団第56回定期演奏会
筑波大学吹奏楽団(客演指揮:鈴木竜哉)
2006/11/4(土)17:30開演 つくば市ノバホール
アッペルモント「ノアの箱舟」、ガレスピー「チュニジアの夜」、ヘス「グローバル・ヴァリエーションズ」、レスピーギ「ローマの祭」他

吹奏楽団の30周年、満を持しての盛りだくさんのプログラム。もう引退から一年が経っているとも思えないなー(遠い目)。ハバネラ聴いていて途中入場だったので、アッペルモントから聴けた。トランペットとユーフォニアムの絡みもきちんと聴けた!しかし上手くなったなあ(?)。

ポップスは音のカタマリがぽーん、と飛んできて客席が大いに沸いていた。各ソロも素敵。続く第三部のローマはさすが、貫禄の指揮っぷりに終始一貫したテンションが見事。長い曲にもかかわらず、お客さんみんな引き込まれていた。つづくアンコール、うーん、本当に楽しい!

同じプレイヤーとしての嫉妬?も忘れて、惜しみない拍手を送ってしまった!ここ最近の定期演奏会の中では、演奏も演出も一番だったんじゃないかと(^_^)いやあ、本当に最大級のブラボーです。

2006/11/03

茂木大輔スーパークインテット

この三連休はコンサート三昧だな、芸術の秋ってやつかな(?)。

茂木大輔スーパークインテット、聴きにいってきた。第22回つくば国際音楽祭の一環の催し=ノバホールでの開催!なのだ。交通費がかからないのは地味に嬉しい。

さすがつくばノバホール開催だけあり、知り合いがたくさんいた(笑)。Mぽむさんとか、Nやんさんとか、偶然座席がとなりになったfさんとか、MMさんとか、M田さんとか。ちょっと会っただけでもこんなに。

・第22回つくば国際音楽祭 茂木大輔スーパークインテット
出演:神田寛明(flt.)、茂木大輔(ob.)、磯部周平(cl.)、丸山勉(hrn.)、水谷上総(fg.)
2006/11/3(金・祝)14:00開演 つくば市ノバホール
イベール「三つの小品」、ハイドン「ディヴェルティメント変ロ長調より第二楽章」、ダンツィ「木管五重奏曲第一番」、茂木大輔「父の掌」、カルク=エラート「ソナタ・アッパショナータ(フルートソロ)」、山下洋輔「山下洋輔組曲より(三重奏)」、茂木大輔「タミヤのためのミニアチュール」

曲間に茂木さんのトークを交えながらの、終始リラックスした雰囲気。「木管五重奏」という室内楽形態のレクチャーコンサートとも言うべき構成で、古典から現代まで幅広いプログラムを聴かせてくれた。

イベールから早速引き込まれた。最近ではアマチュアの演奏会でもやっちゃうくらいの曲だが、そこはさすが気心知れたプロ同士の演奏。イベールの「軽妙酒脱」っぽさを何気なく表現してしまうあたりはさすが。こんなに軽やかな曲想の中に、新しい発見がいっぱい。

楽器紹介は、メンバー一人一人のトークを交えながら。そのおしゃべりがまた楽しくて、場内爆笑の連続だった。楽器紹介の曲ネタに、自作の超絶無伴奏曲を抜粋して吹いたクラの磯部さんには、場内一同唖然。

茂木さんの解説に導かれて始まったハイドン「木管五重奏曲」は、「聖アントニウスのコラール」として知られる第二楽章の抜粋。さらに続いてダンツィ「木管五重奏曲」。オーソドックスな曲なのに、CDなんかで聴くのと違って何て面白い!これぞ生で聴く醍醐味なり。

休憩の前に茂木さんの自作による「父の掌」という曲をやったのだが、なんと面白い曲!楽譜買ってサックス四重奏に編曲してみようかなあ、と思わせるほどだった。日本の旋法を使った一つの主題を、緩急の曲想に乗せていくのだが、何だか懐かしい気持ちになってしまったのだ。なんだそりゃ、と思われるかもしれないが、そんな気持ちになったのだから仕方がない。茂木さんがベルリンにいた1986年ごろの作品ということで、茂木さんの望郷の気持ちが強く表れている…とは邪推だろうか。

休憩。CDが飛ぶように売れていた。

さて後半。暗譜ででてきた神田寛明さん演奏で、カルク=エラートの無伴奏フルート曲「ソナタ・アッパショナータ」。うぅ、かっこいい。無伴奏ってすごい。もうちょっと近い席を取ればよかったか…。

続いて「山下洋輔組曲」から3つの楽章を抜粋。木管三重奏(オーボエ、ファゴット、クラリネット)で、性格の違う各楽章が面白い。ジャズピアニストの作だけあって、リズムや音運びなど随所にモダンジャズの影響を見て取れた。他の楽章も聴いてみたいな。

最後に茂木さんの自作で「タミヤのためのミニアチュール」。タミヤ、とはもちろんあのプラモデルメーカーのタミヤであり、いろいろな模型を題材とした曲なんだそうだ。楽章の名前と、曲想のマッチ具合が楽しい。「蜂」と名づけられた楽章に、アントニーノ・パスカッリ作の同名のオーボエ無伴奏曲が題材として使われていた…ということには、あとから気付いた←これをマニアックな聴き方といふ(^^;。

アンコールに「鳥づくし」にて終演。「鳥づくし」に関しては、詳しいことは書きません。茂木さんの解説付きで聴いてみれば爆笑モノなので、ぜひ耳にするチャンスがあったらお聴き逃しませぬよう!

気付いたらあっという間の二時間。終演後のお客さんの顔を見れば、皆様満足の様子。演奏者にももちろん、企画者にもブラボーを送りたいな。

明日はハバネラ

明日はハバネラ・サクソフォーン四重奏団のコンサート!前回2002年の来日のときは聴けなかったが、インターネット上の随所で話題になっているし、わずかながら聴くことのできるCDはなんだか物凄い演奏だし、期待大。どこかで聴いた話だが、すでに東京公演のコンサートは売り切れ状態らしい(本当!?ちなみに11/8の長野公演はずいぶんチケットが余っているとのことで、長野県在住のアナタ、チャンスですよ!)。

とりあえず予習予習…と、エマーソン弦楽四重奏団のラヴェル「弦楽四重奏曲」、アンサンブル・ウィーン=ベルリンのリゲティ「6つのバガテル」、演奏者不明のバッハ「イタリア協奏曲」を聴き流す…ふむふむ。明日のプログラムはアレンジ物が中心だが、果たしてどんな演奏が繰り広げられるんだろうか。

あ、全く関係ないが、Yahoo!オークションで福田進一&フェルナンデスのギターデュオCD(廃盤)を落札!やったー。吉松隆氏の「アトム・ハーツ・クラブ・デュオ」入曲。

2006/11/01

コンクール集計ページ

アドルフ・サックス国際コンクール2006のデータ集計ページを作ってみた(→こちら)。前回のコンクールで原博巳さんのページで行われていた集計のアイデアを参考にしたものだ(たしか原博巳氏の奥様が集計をしていた、と記憶する)。今回は自分でやってみようと思った次第。

とりあえず、審査員(すごい顔ぶれ)、一次予選での参加者国別割合と、一次予選での選択曲の割合を掲載。