2006/08/07

ロンデックスのCrest盤

かつてCrestから出ていたジャン=マリー・ロンデックスのLPの音源をお貸しいただいた。デザンクロ「PCF」、ロベール「カデンツァ」、ミヨー「スカラムーシュ」他入曲。収録時間から推測するに何曲か欠けているような気がするが、これだけでも十分貴重な音源だな。

ロンデックスの復刻音源と言えば、EMI Franceから発売された「Le saxophone francaise」に含まれるソロや室内楽の録音が大変注目すべき内容だが、アメリカのCrestにソロを録音していたことは良く知らなかった。Googleで検索をかけると、ポール・ブロディ氏との親交があったことが分かるが、そのあたりの繋がりで実現した録音なのだろうか。

しかしまたしてもCrest!古きよき時代のワンマン・マイナーレーベルの一つだが、1980年代に取締役が亡くなったために、今ではほとんどの音源が散逸しているという幻のレーベル。デファイエが演奏したブートリーやガロワ=モンブランのLPだってここで録音されているためか、復刻されないわ中古でもほとんど出てこないわ…。ごくごく稀にCrestのLPとめぐり合うことがあったら、それはけっこうラッキーなのかもしれない。

さて肝心の演奏だが、さすが大御所ソリスト、貫禄十分の演奏だ。テクニック的にかなりハイレベルな曲目が揃っているが、ドビュッシーの「ラプソディ」でも聴けるあの輝かしい音色で悠然と吹ききっていく。カッコイイ!中音域の音色がいかにもロンデックスの個性炸裂という感じで、このあたりの音域で速いパッセージを吹かれると圧倒されてしまう。中でもロベール「カデンツァ」のすさまじい集中力(まるで狂気)は、デザンクロをも抑えてLP全体の中核を担う演奏だと思う。終わった瞬間にスカラムーシュに突入すると、かなりホッとします(笑)。

この粘りのある独特の質感、今となっては時代錯誤もいいところだが、こういうスタイルがサクソフォーン界からほぼ完全に消えうせてしまったのはちょっと寂しいな、なんだか。現代のプレイヤーが同じ曲を録音したら、全く違った感じになるのだろう。

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