つくばから実家に戻るときに立ち寄った楽器屋さんで、ジャン=ドゥニ・ミシャ氏演奏のCDを見つけたので買ってきた。「Bach, Mozart, Schubert(JDM 002)」というアレンジものを集めたアルバム。
あんまり日本では知られていない奏者かもしれないので、簡単に経歴を説明すると:パリ国立高等音楽院をサックス、作曲、アナリーゼ、音楽史で一等賞を得て卒業。卒業後ドゥラングル教授のサックス科アシスタントを務め、さらに国立リヨン音楽院の教授に就任。使用楽器はなんとヤナギサワ。演奏だけでなく、作曲活動にも余念が無く自作が幅広く演奏されている…という音楽家。(公式ページ→http://jdmichat.brulin.chez.tiscali.fr/)
まあそんな経歴は何となく知っていたけれど、実は実際の音はほとんど聴いたことが無く、たまたま見つけた勢いでつい購入。バッハ「パルティータBMV1013」、エマニュエル・バッハ「ソナタBMV1020」、モーツァルト「弦楽四重奏曲ニ短調K421」、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」。一曲目は言わずと知れた無伴奏フルートのための作品だし、エマニュエルの作品は松雪先生のアルバムにも入っていたなあ。アルペジョーネは今でこそ広く演奏されているけれど、サックスで一番最初に取り組んだのはもしかしてミシャ氏なのかも?
とにかく隅から隅まで隙無く演奏されている事がわかる。作曲もするミシャ氏のこと、細かなアゴーギクの変化は必然的なのだろう。フレーズは思い入れ先行の歌い上げ、というよりも、これは細かなアナリーゼを施した上でのフレージングなのだろう。音色の変化は意外と少ない(トレンドですからね)が、美しくコントロールされている。
一番楽しみだった「アルペジョーネ・ソナタ」は雲井さんや栃尾さんの演奏と聴き比べてみると全然違う曲に聞こえる(笑)。サックスが本来持つ「雄弁さ」を幾らか意図して抑えた演奏で、そう言えばオリジナルは古弦楽器だったっけ、ということを思い出させる。サックスは抑え気味なので聴き流そうとすればさらっと聴いてしまえる演奏なのだけれど、よく聴くと細かいフレーズが超速で吹かれていたりして驚異的。かっこいいな。
そんなわけで随分と素敵なCDなのだが、自主制作版ゆえ普通のCDショップにはまず置いていないと思う。プリマ楽器の某氏が日本に200枚だけ持ってきたとかで、ごく一部の楽器屋さんでのみ入手可能なようだ。もう一枚、メンデルスゾーンとグリーグの小品が入ったアルバム(JDM 001)はまだ幾らか残っているらしいけれど、こちらのCDは残り少ないらしいのでサックスの方は見つけたら即ゲットしましょう(笑)。というか、この演奏なら他の管楽器の方にも十分薦められるなあ。楽器店の方も「サックス吹き以外にも推薦できる数少ないCDのうちのひとつだよ」みたいなこと言っていたっけ。
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