2011/03/09

須々木由子「デニーソフ<アルトサクソフォンとピアノの為のソナタ>曲目分析」

今年洗足学園音楽大学の大学院を卒業される予定の、須々木由子さんから、大学院の卒業試験の副論文を頂戴した。デニゾフ(デニーソフ)「ソナタ」について書いたということで興味を持ち、私の方から連絡して送ってもらったものである。須々木さんにはこの場をお借りして改めて御礼申し上げる。

デニゾフの「ソナタ」については、さすがに有名な作品だけあって、本ブログでこれまでも何度か取り上げている。そのどれもが、ちょっとつまみ食い程度に調べたものであり、これまで体系的に調査を行ったことはなかった。デニゾフの経歴について記事にしたこともあったのだが、実はかなり付け焼刃的な調べ方によるものであり、あまり気に入ってはいなかった。
エディソン・デニゾフの経歴
デニゾフ「ソナタ」の作曲経緯
デニゾフ「ソナタ」の別アプローチ

須々木さんの論文は、私のデニゾフの「ソナタ」に関する興味を、十分すぎるほど補ってくれるものであった。デニゾフが、どのような苦労(ソヴィエト連邦時代の政府による圧力)を経て、ソヴィエト~現代ロシアを代表する作曲家の一人となったかが丁寧に時代に沿って解説されており、面白い。デニゾフが、西側の作曲家…ブーレーズやシュトックハウゼンといった作曲家と、どのように関わっていたかについても書かれており、初めて知るエピソードばかりであった。

「ソナタ」については、特にジャズからの影響について深く掘り下げており、譜例を示しながらこちらも充実した解説がなされている。こうしてピアノスコアを見てみると、いかに厳格に書かれているかが判る。第3楽章など、聴くだけであると勢い先行のようにも思えるが、ずいぶんと緻密な書かれなんだなあ。

いやいや、本当に面白い。デニゾフ「ソナタ」を演奏される方は、サクソフォン奏者もピアノ奏者も、ぜひ一度は読むべきだと思う。洗足学園音楽大学の図書館所蔵になるのかな?

ちなみに、本試験(演奏)では、須々木さんはデニゾフ「アルトサクソフォンのためのソナタ」「アルトサクソフォンとチェロのためのソナタ」を演奏されたとのこと。予定が合えば聴きに伺いたいくらいだったのだが、残念ながらかなわなかった。

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