須々木由子さんより、洗足学園音楽大学大学院卒業で演奏したデニゾフ作品の録音を送っていただいた。卒業試験での優秀者には追加での演奏機会として「グランプリ演奏会」が与えられるそうなのだが、須々木さんは見事その機会を獲得したのだそうだ。以前このブログ上で論文を紹介したとおり、テーマはデニゾフ。サクソフォン界では最も有名であろう「アルトサクソフォンのためのソナタ」と、ドゥラングル教授のために書かれ、CDレコーディングも存在する「アルトサクソフォンとチェロのためのソナタ」が演奏されている。
「アルトサクソフォンとチェロのためのソナタ」は、ドゥラングル教授のBIS盤を聴いたことがあって、その自らをも手綱で抑えているかのような演奏からすると、あまりこの曲に興味をそそられなかったのだが、須々木さんの演奏を聴くと全然別の曲に聴こえてしまった。そうか、こういう曲だったのか、と。チェロと一触即発のセッション、という趣であり、勢いがあって、ダイナミックで、非常に感銘を受けた。しかも、ほぼノーミス。録音自体は客席から録ったような、音場の遠いものであるが、実際に会場で聴いたらもっと凄かったかもしれない。
「アルトサクソフォン・ソナタ」のほうは、第1楽章が時間の関係でカットされているのが残念…やはりこの曲は第1楽章から演奏されてこそだと思っている。というのも、第2楽章と第3楽章の演奏がこれまた素晴らしくて、数ある名演にも劣らないくらいなのだ。第1楽章の素晴らしさが想像できそう。
特にデニゾフの「アルトサクソフォン・ソナタ」について言える事だが、すでに作曲から40年(!)が経過し、すでに10年前には特殊奏法やフィンガリングの問題は完全に解決されたと言って良いだろう。「アルトサクソフォン・ソナタ」本作品の演奏は、次のステージに入ったのだ。すなわち、アカデミックで古典的な作品と同じように、完璧な技術を背景として、奏者がそれぞれの個性を出して、時代に残る名演を創りだしていく必要がある…と。須々木さんの演奏を聴いて、なぜかそんなことを再認識した。
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