2008/04/02

Henri Pousseur「Vue sur les jardins interdits」

アンリ・プッスール Henri Pousseur(1929 - )は、ベルギーの作曲家。1950年代にダルムシュタットの講習会で頭角を現し、以降ドイツ、イタリア、アメリカ等を回りながら国際的に活躍した。作風としては、セリーや偶然性といったところを起点とし、多岐に渡る。サクソフォンを含む作品は、ディナンのアドルフ・サックス国際コンクールに際して委嘱された「カプリス・ド・サクシカレ Caprice de saxicare」のほか、室内楽編成のパートとしてサクソフォンが含まれるものがいくつか見られる。

サクソフォン四重奏曲である「Vue sur les jardins interdits(禁じられた庭の眺め/禁断の園へのまなざし)」は、1973年の所産。Ministere belge de la culture francaiseの委嘱で書かれ、11月25日に完成(もともとはオルガンのために書かれたとも言われているが…?)。作品はフランソワ・ダニール率いるベルギーサクソフォン四重奏団へと献呈された。また、この作品は、イタリアの指揮者・作曲家であったブルーノ・マデルナの追悼の意味を込めて作曲されている。

おおよそ10分に及ぶ本作品は、まず不安定な半音のハモりから開始され、フラッターやトリル、そしてしつこいほどのインタラプトを挟みながら、ぼんやりと熱を帯び始める。中間部では、突如として響き渡るバロックのハーモニーと、攻撃的なフレーズの対比が印象的。最後は、波が引くようなpppの伸ばしにて終わってしまう。クリスチャン・ローバの「アルス」にも似ていたり、またコンセプトは全く違うが、中間部の響きから、なぜかエルッキ=スヴェン・トゥールの「ラメント」を思い出した。

録音は、XASAXのものがもっとも手に入れやすい。「Ars Subtilior」と名づけられたアルバムで、同時代の作曲家の作品と、14世紀の"新しい"音楽様式を担った作曲家のひとり、Jacob de Senlechesの作品を交互に配置し、最後に「Vue sur les jardins interdits」を置くという演出が憎い。ちなみにこのへんから買える。実演機会も時々あり、近年では、日本においてはトラクシオン・アヴァンや雲井雅人サックス四重奏団によって演奏されている。数年前のフェスティバルでトラクシオン・アヴァンが演奏したときの、客席をも巻き込んだ不思議な雰囲気は、今でも思い出すことができる。

楽譜も持っている(出版はEdizioni Suvini Zerboni)。なぜか大学の吹奏楽団の練習場所の机の上(本やら楽譜やらが積み重なっている)に放り出されており、あやうく処分されそうになっていたところを確保。なんでこんなマニアックな曲が吹奏楽団の練習場所にあったのかは、大変な謎。せっかく楽譜があるので演奏もしてみたいけれど、メンバーからは印象が悪そうだなあ(^^;

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