服部吉之先生とともに、長野県の木下直人さんのお宅を訪問した。サクソフォーン協会に寄稿する記事の準備のためである。内容は準備中だが、まさに「木下直人さんとそのコレクション・復刻環境について」という形になりそう。読み手に、こういった活動を続けている方がいることや、その貴重なコレクションや復刻に対するこだわりの一端を知っていただきたい、という意図がある。
金曜日の22:00に服部先生の車で東京を出発し、私の実家に一泊(服部先生にも泊まっていただいた)。11時に飯田に到着するや、ついつい話が弾んでしまう。一時間のお昼ご飯を挟んで19時頃までと、なんと8時間に及ぶ邂逅となった。だがまだしかし、話し足りない・聴き足りないという感じ。
話題はいくつもあったのだが…いずれ記事にもするが、少しここにも書いておこう。木下さんは、このたびオルトフォンSPU-Gカートリッジの調整を完了し、ステレオLPの復刻を開始したとのこと。すでに復刻を開始した盤をいくつか聴かせてもらったのだが、その音のすばらしいこと。プリアンプはマランツ1、パワーアンプはマランツ9、スピーカーはタンノイのGRF(モニターシルバー)である。ミュールQのErato盤のLPを聴いたときの服部先生の言葉「演奏している奏者の気持ちの動きが解るよね」は、実に的確な感想である。音のアンサンブルではなく、「ここでこいつがああ吹いたからこのタイミングで、あ、立ち上がりがかすれた」のような奏者の心の動きすら読みとれるほどの音が迫ってきた。
服部先生が持っていた情報で面白かったのが、フランソワ=ジュリアン・ブラン指揮ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のセッション録音によるスッペ「詩人と農夫」の冒頭のサクソフォンソロについての話。「ミシェル・ヌオーのアルトサクソフォン・ソロ」というのが一般的な認識だが、実は演奏者本人の情報によれば「ロンム、ヌオー、ブーンの3本のアルトサクソフォン・ユニゾン」らしい。なるほど、木下さんのシステムで聴くと、確かにユニゾンに聴こえる…。これには驚いた。
ほかにも様々な話題が飛び出し、ギャルド衰退の話、フランス人の伝統に対する考え方の話、木下さんのギャルドとの出会いの話、復刻環境の話と、話題がつきない。そして、木下さんのシステムで聴く極上の音に酔いしれた。阪口新、ミュールのSP、ミュールQのLP、ルボン(やはりルボンは最高だ…デボストなど問題にならない)、ギャルド、カラヴィニエリ、ソシエテ(Teppazレーベルの盤も!)、宮島基栄、ルイ・メナルディ etc.
いやあ、楽しかったなあ…。夢のような時間。また、服部先生の興奮ぶりも相当なもので、一緒に行って良かったなあと思ったのだった。写真はそのうちアップします。
お世話になった木下直人さん、服部吉之先生には、この場を借りて改めて御礼申し上げたい。
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