2011/11/19

クラシック・サクソフォンの源流を辿ると…(続き)

前回の記事にて、伝統的なフレンチ・スクールのクラシック・サクソフォンを特徴付ける要素…甘美な音色、演奏会場中を満たす大音量、ヴィブラート、弦楽器をお手本としたフレージング…のルーツはポップス音楽、すなわち、世界の大多数でクラシック・サクソフォンと思われている演奏スタイルのルーツはポップス音楽にある、と結論づけてしまった。

少なくとも、サクソフォンの発明者であるアドルフ・サックスが意図した方向性とはまったく逆の流れである。シガード・ラッシャーの流派は、こんにちどちらかと言えば亜流と捉えられているが、ラッシャー派のほうがよほど"クラシック"なのかもしれない(アドルフ・サックスは、まさか自分が発明した楽器のメインストリームが、このような方向に進むとは夢にも思っていなかったことだろう)。

数あるコンサートやコンクールやレコーディングが"ポップスがルーツ"の演奏スタイルを軸に評価されていると考えると、ある意味不思議と言うか、ちょっと怖いものがある。いや、サクソフォンの中で閉じていれば全く問題はないと思うのだが、他の楽器からの視線などを考え始めてしまうと、ちょっといたたまれないものすら感じる。サクソフォンがオーケストラに入れなかった理由も、クラシック音楽でなかなか使われなかった理由も、実はそのあたりにあるのではないか。

サクソフォンを取り巻く諸々の事情が、"クラシック・サクソフォンのルーツはポップスである"という考えのもとに成り立っていると考えていけば、これまで説明をつけられなかった様々なことに明確な理由を与えられるかもしれない。今後は、フレンチ・スクールのサクソフォンを考えるときに、そういった切り口も組み入れたい。

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