2010/11/11

Dinant 2010:ファイナリストのみなさんの経歴

NOVIKOV, Evgeny(ロシア)
ノヴォシビルスク特別音楽学校にてサクソフォンを始め、その後奨学金を得てフランスに留学。サン=モール音楽院でニコラ・プロスト氏に師事し、現在はヴェルサイユ音楽院でヴァンサン・ダヴィッド氏に師事。経歴からも判るとおりシャポシュニコワ流の演奏、というわけではない。ちなみに、この名前を調べようとすると、同名のラリードライバーの名前が多数引っかかる。

RAUTIOLA, Joonatan(フィンランド)
なんと、ヘルシンキのシベリウス・アカデミーでは、あのペッカ・サヴィヨキ Pekka Savijoki氏のお弟子さんだったそうな!その後、モーリス・ラヴェル音楽院(クリスチャン・ヴィルトゥ氏に師事)、サン=モール音楽院(ニコラ・プロスト氏に師事)、パリ国立高等音楽院(クロード・ドゥラングル氏に師事)等で学んだ。前回大会のセミファイナリストでもある。ファーストネームは、ヨナタン、と読むそうな。

ROGINA, Miha(スロヴェニア)
もはや説明の必要もないでしょう。リュブリャナ音楽院でMatjaž Drevenšek氏に師事し、フランスへ留学。セルジー・ポントワーズ音楽院(ジャン=イヴ・フルモー氏に師事)、ヴェルサイユ音楽院(ヴァンサン・ダヴィッド氏に師事)、パリ国立高等音楽院(クロード・ドゥラングル氏に師事)等で学んだ。ピアノの李早恵さんとの室内楽団であるDuo Kalypsoにて、数々の国際コンクールで入賞しまくっている。前回、前々回大会ではセミファイナリスト。第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールでは3位を受賞。2007年来日時に初めて演奏を聴いたが、まさに圧巻であった(日本のサックスが、10年間置いてけぼりにされていると感じた)。

SOUILLART, Alexandre(フランス)
モーリス・ラヴェル音楽院(クリスチャン・ヴィルトゥ氏に師事)、モンペリエ音楽院(フィリップ・ブラキャール氏に師事)を経て、パリ国立高等音楽院第3課程でクロード・ドゥラングル氏に師事している。ADAMI(芸術家演奏家権利管理非営利団)クラシック大賞受賞。既に教員免許も取得し、いくつかの音楽院で教鞭をとっている。Osmose四重奏団メンバー。日本のサクソフォン奏者、安井寛絵さんと親交が深く、2009年に初来日した。

ZIMIN, Nikita(ロシア)
モスクワ第2地方音楽院(プロコフィエフ音楽院)卒業後、現在はグネーシン音楽学校でマルガリータ・シャポシュニコワ教授に師事。第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールでセミファイナリスト。第4回のアドルフ・サックス国際コンクール優勝者であるセルゲイ・コレゾフ氏と並ぶ、ロシアの若き俊英。YouTubeのここのアカウントに彼の演奏がたくさんアップロードされているが、豪快かつエモーショナルな演奏をする方である。

DIRICQ, Simon(ベルギー)
ベルギー王立モンス音楽院に学んだのち、フランスへ留学。ヴェルサイユ音楽院でヴァンサン・ダヴィッド氏に師事したのち、パリ国立高等音楽院でクロード・ドゥラングル氏に師事。現在は卒業している。いくつもの国際コンクールでの入賞歴がある。前回大会では、セミファイナリストだった。Ensemble Squillanteメンバー。

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経歴をきちんと調べると、見えなかったものが見えてくるが…。とりあえず結論としては、

フレンチスクール、強し!

といったところ。もう、圧倒的すぎて開いた口がふさがらない…。国籍が違えど、ほぼ全員がフランスで学んだ奏者である、という状況は、1978年のギャップ国際コンクールでの状況を想起させる。ちなみに今回は、前回まで幅を利かせていたスペインの奏者の参加が少なが、もしスペイン勢の参加比率が高ければ、ファイナルの状況が多少なりとも変わってきたのではないかとも思う。

4 件のコメント:

sonore さんのコメント...

門外漢で恐縮ですが、kuriさんの親切丁寧なナビのおかげで1次予選の様子をいろいろ拝聴させていただきました。日本人の演奏はどうかな?と集中して聴いてみましたが。kuriさんも触れられていたバッハを聴くと、メカニックな技術や音質、ダイナミックス、アーティキュレイションがどうのこうのという前に、音楽として基本の基本がさらけ出されていました。5度、4度、オクターブなど、動かしようのない音程のたたずまいが日本人の奏者の多くで広すぎたり、狭すぎたりしているようで聞くに堪えないという印象を受けました。これはデジタルチューナー的にはさほど問題のない状態であったのかもしれませんが、聴感的に違和感を覚えたと言い直してもいいかもしれません。
大工仕事に例えれば、カンナやノミの技術は特段問題がないのだけれど、柱と天井がきちんと直角でない建物を建てている感じでしょうか。
サックスを志す人たちの多くが中高校の吹奏楽を経験していることを考えると、デジタルチューナーあたりまえの環境の悪い影響が出ているのでなければいいのだが....と心配になります。
これは決して日本人だから、そういう音程感覚に弱いということはないはずで、邦楽の世界だって5度4度オクターブでお琴の調弦してますから!

kuri さんのコメント...

Sonoreさん

おお、観戦されましたか。
音程に関しては、たしかにちょっと苦しい部分が散見されました。やはり欧州のプレイヤーと比較してしまうと、音程感覚の弱さは顕著でしょう。
フランスに留学している知り合いが言っていたのですが、耳をどこまで使うか、どのように使うか、といった部分が、日本とフランスではかなり感覚が違うようです。まわりの環境も大きく影響してくるのだと思います。

…と、エラソーなことを書いていますが、音程に関しては私も人の事を言えた立場ではないです(^^;

Sonore さんのコメント...

日本の奏者、これはフルートなどまさにそうなのですが、音色をどうするか?に関心が高すぎなのでは?と思います。それも単音での音色感へのこだわりが強い。
申し上げた5度、4度、オクターブは耳を使うかどうか以前の問題なのではないでしょうか?
これらが耳を使い、息を、アンブシュアを、喉をetcして調整しなければ平常的に得られないとしたら、音色云々よりも奏法が間違っているか、楽器によほど問題があるかです。

こういう基本が出来た上で、音色が問題となるべきでは? また単音での音色感よりも、複数の音の前後関係によって得られる音色感の方がむしろ重要だと思います。そのためには、前後する音の強弱などを瞬時にコントロールできる技術が重要になると思います。

これは同じ日本人として自分自身の問題点としても発言しているところでありまして、偉そうなことを言うつもりではありません。

kuri さんのコメント...

一次の全ての日本人奏者の演奏を見たわけではないですが、楽器のコントロールに問題のある奏者は散見されました。一次課題曲のバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタでは、特に跳躍等の前後でコントロールしきれず音程に問題を生じたり、音色が潰れたりといったことは頻繁に起こっていました。ゴトコフスキーは、それでも比較的サクソフォンらしい旋律の形を描いていますから、バッハに比べればだいぶマシだったと思います。

耳を使うことに関しては、演奏者自身がそもそもその問題に気づかなければダメなわけで、意外とそういった部分て周囲の環境に影響される部分もあるのではないでしょうか。そもそも音程に対して気を使おうとする人が、音楽を専門に学ぶ方の中にどれだけの割合でいるか、ということも気になります。意外なほどにその割合は低かったりして…。