2008/10/08

国立音楽大学専攻生によるサクソフォーンアンサンブル2008

ご案内を頂いたこともあり聴いてきた。月曜の昭和音大のサックスオケのときと比べて、かなり時間的余裕があり、京王線に乗り換える前に、ドルチェ楽器に寄って新しいメトロノームを買った(TSQの演奏会の直前に壊れていた)。

【国立音楽大学専攻生によるサクソフォーンアンサンブル】
日時:2008年10月8日(水)18:30開演
会場:府中の森芸術劇場ウィーンホール
プログラム:
C.パスカル「四重奏曲」より1,2,4
A.ピアソラ/宮崎達也「Time for Piazzolla」
R.R.ベネット「四重奏曲」
E.グリーグ「ホルベルク組曲」より前奏曲
E.フォン=コック「11本のサクソフォーンの為のモデラートとアレグロ」
D.ウィレン/荻原和音「弦楽合奏の為のセレナーデ」
B.ウィーラン/柏原卓之「リバーダンス」 他

府中の森芸術劇場は初めてだったが、外観から内装にいたるまでとても美しい。写真はホール正面広場に鎮座する噴水。広場の床には、宝石のような小さいライトが埋め込まれていて、幻想的な雰囲気。建物自体も、ずいぶんとモダンな外観だ。ウィーンホールと呼ばれる中規模のホールは、パイプオルガンを備えた高天井のシューボックス型のホールで、ウィーン・ムジークフェラインのグローサーザールをモデルとしていることが明らか。

パスカルから始まった演奏会は、第一部が比較的小編成のアンサンブル、第二部が大編成のアンサンブルとサクソフォーンオーケストラ、という形で進行していった。先日の昭和音楽大学の演奏会と違って、小編成で聴ける分、個人技が光る場所が多い。50人規模の大編成を何曲も聴かせられると、やはりちょっと飽きちゃうかな。

パスカルからピアソラにかけては、上手いなあと思いながら何気なく聴く。ピアソラは、「ボーデル1900」「エスクヮロ」「ブエノスアイレスの夏」「アディオス・ノニーノ(このバリトンサックス独奏の歌い上げが、かなり濃密でブラボーだった)」「リベルタンゴ」という5曲のメドレー。ピアソラとサックスって、改めて聴いても相性が良い。

そしてベネット。日本ではなかなか演奏されない、このイギリスの作品を取り上げるとのことで、どんな演奏になるか興味津々だったのだが、鳥肌がたつほどの名演だった。高い技術と凝縮されたテンションに、客席も引き込まれていくのがわかるほどだった。学生としてではなく、プロフェッショナルとして音楽を作りこんでいくような強靭な気合いが感じられた。すごい…。

休憩後の第2部は「北欧の音楽」というテーマ。作品の方向性としてはバラバラだが、これはこれで多彩な音楽が飛び出してきて面白い。グリーグは、ステージ前方に並んでの立奏&暗譜。第二部の始まりにふさわしい、爽やかなリズムが耳に心地よい。続くフォン=コックの「モデラートとアレグロ」は、これが実は一番楽しみにしていたものだったが、大変楽しく聴けた。基本的には新古典主義の風合いが強く、ただし和声はフォン=コック独特な涼しげな響きがする。「モデラート」の最終部分なんか、ほとんど「サクソフォン協奏曲」と同じ響きだし。このパートを、きっとカリーナ・ラッシャーが吹いていたんだろうなあとか、ブルース・ワインベルガーが吹いていたんだろうなあ、とか考えながら聴いていると、ちょっと面白いかも。ソプラニーノが使われていたが、楽譜にそんな指定があるのだろうか?今回に限って、フラジオ音域のサポートに使用した、ということだろうか?

ダグ・ウィレン(ヴィレーン)「弦楽のためのセレナーデ」。作曲家の名前も、楽曲の名前も初めて聴いたが、スウェーデンの生まれであり、現代音楽には傾倒せずに分かりやすい作品を多く手がけた作曲家であるとのこと。そんな解説のとおりの音楽だった。イージーな響きであったので、印象には残らなかったのだが、ひとつだけ。なんか第4楽章が「ポケットの中にはビスケットが一つ~」のメロディに凄く似ている。そんなことを思っていたら、Wikipediaにも同じ記述が(^^;

最後に置かれた柏原卓之氏編曲のサックスオーケストラは、30人以上のサックスに、コントラバスサクソフォン(!)、パーカッション、ハープ、コントラバス、ギターまでをも交えた、一大スペクタクル!といった感じの豪華な編成。指揮は下地啓二氏。演奏も良いし、アレンジも、多種多様な要素が織り込まれていて素晴らしい。原曲とは違った切り口からウィーランの音楽に迫っていると感じた。ところで、リバーダンスに関しては、個人的に相当思い入れが強いので(ジュネーヴ公演のライヴDVDなど、何度観たことか!)、Reel Around the Sunのテンポ設定が謎だったとか、The Countess CathleenやFiredanceのBメロが聴きたかったとか、まあそんなことも思ったのだが(笑)。

アンコールに、グリーグ「ペールギュント」より"朝"。終演後は、雲井さんや柏原さん、チケットを用意してくださった小田島さんなどと一言二言交わす。茨城県から東京の西側までは遠いが、無理してでも行ったかいのある、聴きどころ満載の演奏会だった。

2 件のコメント:

mcken さんのコメント...

ををー、これご案内もいただいたし、家から近かったので行きたかったんですが、家庭の事情により行けなくて残念でした。
雲井先生も絶賛の感想を寄せてますね。
フォン・コックやリバーダンス、聴きたかったなぁ。

kuri さんのコメント...

> mckenさん

フォンコックを生で聴けたのは、嬉しかったです。今までもこれからも、なかなか演奏される機会はないでしょうから…。

リバーダンスは、柏原さんから伺ったところでは完全なバージョンではないそうで、いつか完全版を聴ける機会を楽しみに待ちたいと思います。

それにしてもあの驚異的なベネット…!本当に鳥肌ものでした。