2006/01/31

オール・バリトンサックス・アルバム

演奏会後の虚脱状態に流され買ってしまった…栃尾克樹氏のバリトン・サクソフォーンアルバム「アルペッジョーネ・ソナタ(Meister Music MM-1189)」。大きなイベントの後は、なんだか財布の紐が緩くなってしまいますね、ああぁ。

三年前(もう三年前か!)の学園祭最終日をサボって東京文化会館小ホールで聴いた、あのプログラムがほとんどそのまま収録!ということで以前から購入を考えていたが、ようやく入手。どこまでも自然な節回し、バリトンという制約を超えた自在なコントロール…といった評は聞くが、たしかにそのとおり。サックスという枠を飛び出して、その根底にある「音楽」にアプローチしようという姿勢が随所に感じられるアルバムだった。野平一郎氏のピアノは和声構造を分析したような立体感のあるサウンド。

そんな脱力状態のままメールチェック。研究室、第一希望通らなかった…力抜けたぁ…。ある一つの特定講義の成績で決めるので、シビアだなあとは思っていたけど、まさか!落ちるとは思わなかった。総合成績なら負けないのにー。とりあえず第二希望でそのまま決まってほしい。

ファゴット・レボリューション

チェレプニン「ソナティヌ・スポルティヴ」のファゴット版音源を、管弦楽団の方に貸していただいた。珍曲揃いのアルバムで、なかなか面白い。

大学の図書館にマルセル・ミュール「コンプリメンタリー(グリーンドア音楽出版 GD-2012)」が入架していた!びっくり。いったいどんな経緯…?

2006/01/30

アンサンブル・コンサート

昨日は発表会(アンサンブルコンサート2006)~打ち上げ。楽しかったけれど疲れた…。ウォームアップの合間には、ほかの発表団体を聴く時間を多くとることができたが、どこも個性的な演奏だった。興味深く聴けたものもいくつか。

ほぼ内輪の発表会ということであまり気にしないことだが、演奏レベルについては一考の余地があるのではないだろうか(最後まで通るのがやっと、という団体も…)。楽しければOKという考えもあるにはあるけれど、せっかくの機会なので技術の向上にも生かしたいところ。

とエラソーなことを言いながら、自分もなかなか上手く吹けないのだ。もうちょっと突っ込んだ練習が必要だ。

2006/01/27

サックス以外のCDたち

普段聴くCDといったらサクソフォーン関連のものが半分くらいなのだが、ジャズとか(けっこう多い)、タンゴとか(ほとんどピアソラ)、現代音楽とか、「普通の」クラシックCDとか、友人から借りた音源とかを聴くこともある。ちなみにJPOPは名曲と言われているものを除いてほとんど聴キマセン、苦手でして…。

ジャズ、特にビッグバンドの熱帯JAZZ楽団が好きだ。厚みのあるサウンドや豪快なアドリブが手っ取り早く楽しめ、なにより聴いていて楽しい!入手しやすいのも手伝って、大体の音源を網羅して所持している。マイナーサクソフォン音楽漁り屋の自分にとっては珍しい趣味だとは思うが、クラシカル・サクソフォーンの音楽を聴くのとはまた違った楽しさがあって、脳をリセットするような役割になっているのかもしれない。

チック・コリアも好きで、代表作「Now He Sings, Now He Sobs(EMI)」始め、よく聴く録音は多い。他のプレイヤーにない独特のキラキラしたサウンドが、私的に大変好み。作曲家としても「スペイン」など、聴いているだけでテンションがグッと上がってくる楽曲が多い。

「普通の」クラシックはネットで十分検索した挙句に相当アタリをつけて買ったり借りたりが多く、無造作に挙げていくと

・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団ベートーヴェン「交響曲第九番」
・トスカニーニ指揮NBC交響楽団レスピーギ「ローマ三部作」
・デュトワ指揮モントリオール管弦楽団ラヴェル「ダフニスとクロエ」
・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団ラヴェル「ピアノ協奏曲」
・カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団ビゼー「アルルの女」
・バーンスタイン指揮フランス国立放送管弦楽団ミヨー「世界の創造」
・ヨッフム指揮ベルリンオペラ座管弦楽団オルフ「カルミナ・ブラーナ」
・バーンスタイン指揮シカゴ交響楽団ショスタコーヴィチ「交響曲第七番:レニングラード」

…このくらいかな。派手好きな性格が顕著に表れてますな。いずれも名盤と呼ばれているやつです。サックス絡みの音源が散見されるのが自分らしいというか(笑)。普通のクラシックは浅く広く、まあまだ学生ですしこういう集め方もありかな。

何も考えずに書いたら変なエントリーになってしまった…。

「気まぐれな組曲」音だし

ジェローム・ノーレ(ノレ)「Toquades」の音だしをしてみたのだが、とても面白かった!タイトルどおり、まさに「ごった煮組曲」という趣。各楽章がほとんど独立しているが、どの楽章も個性的でカッコよくて一発で魅了されてしまった。

難易度は若干高めながら、とにかく四本の楽器の絡みがおもしろい。メロディも魅力的だし、各楽器のソロもある。オプショナル・パーカッションを入れたらどんな響きがするのだろうか。ぜひ今後巡ってくる本番で使ってみたい。

Fingering Guide

こんなサイトがありまして(「The Woodwind Fingering Guide」→http://www.wfg.woodwind.org/index.html)。ページタイトルどおり、木管楽器の指使いを網羅しているサイト。サクソフォーンをはじめとする木管楽器の指使いが豊富に載っており(多すぎかも)、捨拾選択して使える。指使いの記法が少々特徴的なので、各楽器のトップメニューから「Fingering Scheme」を開きながら見ると、対応させやすいかと思う。

サックス吹きの利用方法としてはやはり第一にフラジオだろうか。加えてトリルや微分音のチャートも載せてあり、特にトリルは良くお世話になっている。フラジオは、「出るのか、こんなの」というような高い音までのせてあり、眺めるだけでも面白そうだ。木管楽器の方、わりとオススメ。

2006/01/25

デザンクロ全曲演奏

週末の発表会で、デザンクロ「四重奏曲」全楽章の演奏を予定している。といっても、出入り含めて13分という制限時間のため、大幅なカットを施したバージョンでの演奏。三楽章は去年の全国大会のためにたくさんさらったが九ヶ月もたてば忘れるもので、元の勘を取り戻すのに必死だ。…カットバージョンとはいえ、通して吹くとかなりしんどい。今年の春に予定している四重奏での自主公演では「ノーカットでの演奏!」を計画しているので、とりあえずそのためのトレーニングだと思っている。

しかしデザンクロの「四重奏曲」って、初めて聴いたときはパワフルで、かっこいい部分が耳に残るものだけれど、意外とそうでない部分(流暢なニュアンスで吹く部分)が多い。mp以下でのニュアンスの変化を楽器で必要とする場所だが、コントロールできれば相当楽に吹くことができるのではないのかしらん、と思えてきた。しかし、この「mp以下における微妙なニュアンスの変化」がどうしてもできないのだ!mf以上での変化は息で何とかなるが、mp以下となるともう、アマチュアならば大半の奏者は同じ表現になってしまう…録音して聴いてみても一目瞭然だ。

こういうところのコントロール能力が、プロとアマチュアの違いの一つなのだろう。指が回っても、縦が合っても、ピッチが合っても、こればっかりは短期間の訓練ではどうにもならない。どうやって練習すればいいのやら。

2006/01/23

サックス関連新着モノ

いろいろなサックス関連の新着ものをご紹介。

まず、ジェローム・ノーレのサクソフォーン四重奏曲「Toquades」の楽譜(Gerard Billaudot)。邦題として「気まぐれな組曲」というタイトルを耳にすることもある。後輩が以前見に行ったコンサートの中で一番ヒットだった曲だとかで、アカデミア・ミュージックに注文して三ヶ月ほどで届いた。楽譜を眺める限り少々譜面は難しそうだが、リズムは面白いしオプショナル・パーカッションもあるしでなかなか楽しそうだ。楽譜高い…まあ四人で割り勘ならば。

アポロ四重奏団のCD二枚。「Worksforus」「Words & Pictures」と題された自主制作盤で、フィトゥキンの「Hurl」やその他イギリスの作品が目当て。まだあまりじっくり聴いていないので楽しみである。

デルタ四重奏団のCD「Facing Death」。アルバムタイトルにもなっているアンドレエッセの「Facing Death」という作品を聴きたくて購入したものだったが、充実した内容で面白かった。クォーツ四重奏団の演奏でも聴いたことのあるフィトゥキン「Stub」の録音が、違った解釈で楽しめた。「Facing Death」は密度も濃く面白いのだが、ちょっと曲自体が長すぎるか。

2006/01/22

代表獲得

なんとか今年もアンサンブルコンテストで全国へ駒を進めることができた。得点を見る限り栃木県の大学の、管弦楽団のクラリネットアンサンブルと接戦だったようだが…。

全国大会は岩手県だそうです。遠いですががんばります。

2006/01/20

新コーナー「イギリスのサクソフォーン」

イギリスのサクソフォーン界について、音源を中心に解説したページをアップした。トップからたどれます。

まだまだ知識が浅いが、なんとか公開できるまで書けた。将来的にもう少し拡張する予定。John Harle Saxophone Quartetのレコーディング(プライヴェート録音)、なんとか入手できないかな…。

2006/01/19

四重奏レッスン

昨日は四重奏レッスン。外国の作品に取り組むときに外国人である必要はないけれど、できるだけ真似て近づけて自然に外国のニュアンスを湛えた演奏ができるようになるということは、やっぱり必要なのだ。もちろんそんなのは当たり前のことで、いろんな録音を聴いたり実際に吹いてみたりしながら「やっぱりここはフレンチ・スタイルが必要だよなー」と、「なんとなく(あくまでなんとなく)」わかったつもりにはなるけれど、そういった「なんとなく」を理論立ててわかりやすく私たち素人に説明できるのは、すごい。大変に充実したレッスンだった。

大多数の普通のアマチュアが音楽やるレベルなんて、ほとんど感覚によったものなのだろう。才能のある人はそれで説得力ある演奏が可能だが…結局音楽やるのに勉強は欠かせないってことか。

2006/01/16

ラージ練習中

ドビュッシーの前田昌宏編「小組曲」サクソフォンラージアンサンブル版の演奏にテナーで参加中。ドビュッシーは恥ずかしながら初めて吹いたが、難しいの何の。

ラージアンサンブルでは、松沢増保氏(!)所有のバスサックスをお借りしている。一昨日初めて吹かせて頂いたが、なんだかすごかった。スタンドすら時価だそうで…ひゃあ。

雲カルが協奏曲!

雲井雅人サックス四重奏団がゲスト出演する、グラス「サクソフォーン四重奏とオーケストラのための協奏曲」日本初演を含む公演の詳細が出たようだ。平日だがなんとかして行くぞ(実験後にダッシュすれば間に合うはず)。

・尚美学園大学オーケストラ 第三回定期演奏会
出演:井崎正浩指揮尚美学園大学オーケストラ、雲井雅人サックス四重奏団ほか
2006/2/24(金)18:00開場18:30開演
埼玉県和光市民文化センター「サンアゼリア」(JR和光市駅下車徒歩15分)
一般800円、中高生以下無料
ラウリッスン:オーマーニュムミステリウム、ベートーヴェン:合唱幻想曲、グラス:サクソフォーン四重奏とオーケストラのための協奏曲、ガーシュウィン:パリのアメリカ人
http://www.shobi-u.ac.jp/news/2005/news_531.html

2006/01/12

グレゴリー「Interference」

サクソフォンとテープのためのイギリス作品の一つに、ウィル・グレゴリー「干渉(interference)」という曲がある。サクソフォーンとテープ(=サクソフォーンとコンピュータ)の作品は様々にあるが、どの作品もとにかく変な響きが面白くてCDも数枚所有している次第。意外と?両者の組み合わせは型にはまることが多く、実に魅力的なサウンドを放つ作品を時々見つけることがある。そんなジャンルの中で、この「干渉」は特に聴きやすく、一番好きな曲だ。

AMラジオを使用したノイズとエフェクトをかけたサックスの混合音に、息の長いソプラノサクソフォーンのソロが乗る前半部。どこかしら透明感を湛えたメロディが印象的だが、対照的に後半部では9/8のエフェクト伴奏に乗ってソプラノサクソフォンが縦横無尽に駆け回る。奏者の裁量に任されたアドリブ風の箇所もありけっこう聴き応えあり。

著名なイギリスのサクソフォン奏者を中心に頻繁に演奏されているようだが、CDではサイモン・ハラーム「on fire(blackbox BBM1001)」とスティーヴン・コットレル「the electric saxophone(Clarinet Classics CC0033)」に収録。どちらもきっちり吹いているが、特にハラームの冷徹な演奏が、よりこの曲の真価を伝えているのではと思う。

しかし、とにかく楽譜が見つからないんだよなあ…。ウィル・グレゴリーの連絡先もウェブ上には見つからないし…はて。

2006/01/11

サクソフォーンフェスティバル2005 その4

サクソフォンフェスティバルの感想その4。フェスティバルコンサート&オーケストラ。

フェスティバルコンサートは「日本のサクソフォーンの新しい波」ということで、昨年よりも新しい時代の邦人作品を紹介するという興味深いプログラムだった。解説はなんとあの上田卓氏!

佐藤聰明の「ランサローテ」は須川さんの演奏。須川さんならではの美音とヴィブラートが心地よい。テクニック的には音数が極端に少ないぶんそれほどではないと思うが、このような曲を「聴かせられる」演奏家ってかなり稀ではないか。

笙との共演による武満徹「ディスタンス」は、無伴奏のバージョンをドゥラングルの演奏で聴いたこともあり、興味津々。笙が加わったことによって何がどうなったのかよく分からなかった(実はあんまり笙の記憶がない)。楽譜を前にした大城氏の、鬼気迫る演奏姿は印象的だ。

しかし続く原博巳氏は、さらにスケールアップした極限の演奏。ソプラノ一本を携えて(暗譜で!)ステージ中央に立ち、客席へストレートに向いたベルから繰り出される超絶技巧の数々。あまりにキチガイな演奏に観衆一同唖然とする他ない、といったところか。棚田文則「ミステリアス・モーニングIII」はけっこう好きな曲なので、いい演奏が聴けて良かった。次から次へと押し寄せる現代作品に、観客はかなり参っていた感じだったが(笑)。

さらに追い討ちをかけるように田村真寛氏による吉松隆「ファジイバード・ソナタ」。第三楽章のアドリブは、凄すぎ。鳥の、感情の爆発を理性が抑えきれない、といったような超絶パッセージの応酬。ピアニスト(名前忘れてしまった)もノリノリで、クラスター連打をしたかと思えばピアノの弦を指で直接弾いたりと、両者かなりキレた演奏をしてくれて、聴後感があった。そうとう疲れたけど…。

といぼっくす(フルート、ソプラノサックス、ギター、チェロ、バンドネオンという編成)は吉松隆と武満徹の大変美しい調性音楽を演奏し、難解かつ強烈な現代音楽のあとのまさに「ほっと、一息」だった。武満徹「翼」での、ピアノを加えた六人による穏やかなアンサンブルのエコーは休憩時間になってもずっと続いていた。

大規模な舞台転換の後は、フェスティバルオーケストラによる康英先生の「シンガポリアーナ」サクソフォンオーケストラ版初演と、パーカッション四人をソリストに従えたガーシュウィン「キューバ序曲」。「キューバ序曲」が良かった!フェスティバル一番のヒットだったかもしれない。とにかく楽しさ全開の音楽で、池上政人氏の指揮もノリノリ。演奏者もここぞとばかりに吹きまくり、といったふう。所々に現れるサビでは四人のパーカッションソリスト(ギロ、ボンゴ、ウッドブロック、マラカス)がステージ前方で叩いていた。いやあ、とにかく楽しかった!

来年は二日間にわたっての開催だそうだが、できれば両日聴きに来たいものだ。さらなるプログラムの充実を祈念しつつ…。

2006/01/10

久々の石丸電気

渋谷セルマージャパンに楽器調整してもらいに行ってきた。おかげでずいぶんと吹きやすい感じに。

秋葉原での乗り換えの前にテナーを抱えたまま石丸電気に寄ってみたら、マズランカ「マウンテン・ロード」のトランスコンチネンタル四重奏団によるCD(Albany TROY412)があったので購入、2000円くらい。CDの存在自体は結構前から知っていたが、店頭で見かけたのは初めてだ。雲井雅人サックス四重奏団の録音に先駆けること三年、「マウンテン・ロード」の世界初録音である。

石丸電気はあまり行かないが、サクソフォーンの棚をざっと見渡してみたところラッシャー四重奏団の演奏がずいぶんたくさん置いてあった。なかなか聞いたことのない作品だらけで食指が動かなかったが、実際のところ演奏の質はどうなんだろうか。ライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」やグラス「サクソフォーン四重奏協奏曲(四重奏版)」をちょっとだけ耳にしたことがあるが、ピッチや音色等、どうも良い印象がないんだよな。

サクソフォーンフェスティバル2005 その3

サクソフォンフェスティバルの感想その3。管打コンクール入賞者によるコンサート。

第三位の国末貞仁氏は長尾淳「ラ・リュネ・アン・パラディ」を演奏。須川さんのために書かれた、様々なスタイルの音楽が融合した曲だが、国末氏は独特の美しいメロディラインをしっとりと聴かせる演奏。ピアノの方(名前忘れてしまった)の、二楽章におけるやや硬質な音色が不思議なドライヴ感を生み出し、最後はかなり熱い演奏だった。しかし音大生の方って上手いですね、テクニックはもちろんなんだけれど、何より音色が美しい。

貝沼拓実氏はデニゾフ「ソナタ」。「現代曲」だし、お客さんどんな反応になるかなーとリラックスして聴きはじめたのだが、貝沼氏の曲へのあまりの没入っぷりに一瞬にして引き込まれてしまった。コンピュータ音楽を意識し、点描的なフレーズが散りばめられた第一楽章だが、ここまで集中力の高い演奏はなかなか耳にできるものではない。第二楽章はちょっと中だるみ。続く第三楽章はジャズのノリ全開で、ピアノとのまさに「ぎりぎりのセッション」といった趣だ…終わった瞬間に大喝采。聴いているほうも汗かいてました。
いよいよ林田祐和氏によるラーション「協奏曲」。最初の吹き始めからとにかくフレージングが自然、そして音色も美しい。フラジオも、高音域であることを感じさせない音の伸び。「ふつうの曲」だけに、デニゾフに比べいまひとつアピールにかけた感じだったのはしょうがないのかも。

ほぼ同年代とは言ってもそこは音大生。アマチュアの演奏とはくらべものにならない、ものすごい音楽が紡ぎ出されるのを肌で感じ取った。少しでもこういう演奏に近づけたらなあと思いつつ、日々練習しているわけ。いや、しかしすごいなあ。…つづく。

2006/01/08

サクソフォーンフェスティバル2005 その2

サクソフォンフェスティバル2005の感想その2。協会員によるコンサート。

最初は宗貞氏によるデュオ。ルクレールの二重奏といっても、未出版のロンデックス編E-durのものなのだそうだ。短いコラール風の序奏を抜けたとたんにすさまじい跳躍を繰り返す二本のサクソフォン。音のパレットが限定されている以上、(サクソフォンが苦手な)アルペジオが多くなってしまうのは仕方がないと思うが、スマートな美しい演奏だった。宗貞氏の、まるで生まれたときから身についているるような、自然なフレージングセンスに耳を奪われた。

ガヴロッシュのサンジュレはまさに室内楽。pp~pを基調とした美音が耳に心地よい。古典作品だからというのもあるが、サクソフォンの運動性能や音量を生かした曲も聴きたかったような。

クノールのサクソフォンソナタは石川県で活躍されているという筒井裕朗氏による演奏。このソナタはドイツのサクソフォン奏者シーグルト・ラッシャーに献呈され、ナチス政権の中で埋もれたままになっていたが、1989年にラッシャーの努力により出版、さらに2003年にはジョン=エドワルド・ケリーによって改訂版が出版されたという作品なのだそうだ(うろおぼえ)。そんな緒方英子さんの解説があったものだからフラジオがたくさん出てくるのかなーと聴いていたら、三楽章の真ん中に一発と、四楽章最後に一発、高い音が出てきました。最後のフラジオを決めた後の筒井氏は、なんだかものすごくかっこよく見えたなあ。

トラクシオン・アヴァンの演奏でプッスール「秘密の園の眺め(禁断の園への眼差し)」。グリッサンドを繰り返す現代的な書法の中に、中間部でふと織り込まれるバロックの響き。その調性が美しくて、なんとも素敵な曲、そして演奏に出会えたものだと思った。聴衆も大変に集中し、密度の濃い時間が流れていた。機会さえあれば取り組んでみたいかも…難しいか。

板橋区演奏家協会による金井宏光編ラヴェル「クープランの墓」は、最後によく聴かれるリゴードンを排し、替わりにトッカータを持ってくるという選曲、さらに編曲も良かった。演奏は、最終部に向けてテンションが爆発する、という派手な響き。成田徹氏のソプラノのすさまじいテクニック、いやあすごい。

そして須川さんの「ウズメの踊り」。同じスウェルツ作品である「クロノス」の100倍くらい難しそうな感じだが、やっぱり須川さんは須川さんらしい演奏だった。演奏にアイデンティティを感じられる演奏家ってなかなか現代にあってはいないのだから、やっぱりすごい人なんだなあ。

一番楽しみにしていたキャトル・ロゾー演奏の照屋正樹「Hommage a Ravel」。恥ずかしながらキャトル・ロゾーは初めて聴いたが、やっぱり上手い。縦の線とか発音はあまりあってないんじゃないかとも思ったが、むしろその大河のような音楽の流れに観客を飲み込んでいく感じだ。個人が主張しあって、その主張のぶつかりがとてつもなく魅力的な音楽に化けているというか…気がついたら曲が終わっていた。ぜひ今度は正統派フランス作品の演奏も聴いてみたい。…つづく。

2006/01/03

オルフ「カルミナ・ブラーナ」

突然カール・オルフ「カルミナ・ブラーナ」が聴きたくなったので、ヨッフム指揮ドイツ・オペラ座合唱団&管弦楽団の演奏(定番、というか最強盤でしょう)を引っ張り出してきた。一昨年の日立市民吹奏楽団による全曲演奏会を聴くまで、恥ずかしながら存在自体知らなかった曲だが、そこで触れた曲の持つパワー(演奏も相当な熱演だった)に圧倒され、以来事あるごとに愛聴している。

管弦楽+合唱といってもお堅い曲ではなく(世俗カンタータと言うのだろうか)、お酒を飲んだ酔っ払いの歌とか若者同士の恋の歌とかの人間のストレートな感情を歌い上げた生命感溢れる曲集である。高度な作曲技法が使われているわけでもなく、単純な構成と躍動感溢れるリズムが全編に渡って印象的な作品だ。主要部分を挟む形で存在する「おお、運命の女神(フォルトゥーナ)よ」はサウンドトラックとして使われる事も多いので耳にされたことがある方も多いのではないだろうか。

ヨッフム指揮のこの盤は、「カルミナ・ブラーナ」のスタンダードな演奏。目玉とも言える最強のソリスト陣(バリトンはフィッシャー・ディスカウ!)と、時として暴れすぎではないかと思わせるほどの強烈な合唱に支えられ、オーケストラも相当にドライヴした、曲の持つ血の流れというか、脈動、鼓動を感じられる素敵なCDである。

次の東京佼成ウィンドオーケストラの第88回定期演奏会、「合唱と吹奏楽の共演」ということでバッハ作品と伊藤康英「ぐるりよざ」に加え、メインプロとしてこの「カルミナ・ブラーナ」をやるそうだ。管楽器が活躍するこの曲としては、吹奏楽での演奏もまた面白いものになるだろう。聴きに行こうかな、どうしよう(と言っていると、たいてい行かない)。

2006/01/02

サクソフォーンフェスティバル2005 その1

忘れないうちにサクソフォンフェスティバル2005の感想でも。

今回は京王線に乗って多摩センターまで。急行を捕まえられたおかげでスムーズに到着できた。パルテノンまでのなだらかな坂道を登っていくと、楽器を背負った人がちらほら。軽く昼食を済ませていざ会場へ。

小ホール(チケットなしでも入れる)を覗いてみると、服部吉之先生の四重奏クリニックで逗子高校が受講していた。長生淳「四重奏曲」をやっていたが、すごかった。最近の高校生って上手いんですね。

若干落ち込みつつメイン・ホールへ。国立音楽大学の演奏で、四重奏+アルトサックス群のための生野裕久「ブルガリア民謡による試みパートⅡ」を興味深く聴いた。こういう場に来ると、普段周りで聴く音楽がいかに貧弱であるかということを思い知らされた感じだ。(音大生だということはあるにしても)完璧なピッチ、豊潤な音色、研ぎ澄まされた集中力、高いテクニックなどなど…。いい刺激だ。

新井靖志氏指揮昭和音楽大学の演奏でホルストの「火星」「木星」。パーカッションも交えた、大迫力の演奏。オーソドックスな編曲で安心して聴くことができた。「ここはトランペットかな」とか、「ここは弦の方がいいなあ」とか、そういった聴き方をしてしまうのはしょうがないかな。

冨岡和男先生指揮洗足音楽大学の演奏でラヴェル「ダフニスとクロエ第二組曲」。冨岡先生の指揮姿、カッコイイですねぇ。こちらはパーカッションに加えてハープ二台!を導入した超編成のサクソフォーンオーケストラ…たしか100人くらいだったか。あまりの迫力に会場も大いに沸いていた。…つづく。

安部幸明「喜遊曲」

おもしろいページを見つけた。安部幸明「アルトサクソフォンと管弦楽のための喜遊曲」に関するページ(→http://www.medias.ne.jp/~pas/abe-komei.html)だ。日本の作曲家って、けっこうサクソフォーンを含む作品を書いているのは知っていたが、安部幸明という名前は初めて耳にした。解説はリンク先のページに譲るが、こういったサクソフォーンの秘曲に光が当たり演奏されることは、いちサクソフォン吹きとして大変嬉しい。

「喜遊曲」の演奏データを読んでみたらなんと初演は阪口新で、最近では冨岡和男氏独奏!によるCDも出てるとか。Naxosによる新譜(ヤブロンスキー指揮ロシア・フィル)のリリース予定もあるようだ。聴いてみたいですな。

ところで、このページで紹介されている冨岡氏ソロのCD、入手方法がさっぱりわからないのだが…出版元のLEKINEって?どなたか知っている方いたら教えてください(→kuri_saxo@yahoo.co.jp)。

日本人作曲家といえば、どなたか大澤壽人「サクソフォーン協奏曲」を音にしてくれないでしょうか…。「ピアノ協奏曲」を聴く限り、「サクソフォーン協奏曲」もかなりカッコいいのではと推測するのだが。

2006/01/01

新年はルデュー四重奏団から

明けましておめでとうございます。

新年早々コレルリ「ラ・フォリア」の主題による変奏曲をもったりと聴き、スティラー「チェンバー・シンフォニー」を聴き、ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」をさらっと聴いて、食卓へ。おいしかった。

ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」は、サクソフォンの作品を聴き始めたけっこう初期の段階から知っていた曲だが、年齢が上がるにつれてようやく「有名な曲なんだ」と認識。楽譜は手元にあるがまだほとんど音を出した事はなくて、今年中に一回本番を作ってやってみたい曲の一つ。

ところで録音はと言えば、パリ音楽院の三代にわたる教授陣の録音であるミュール四重奏団(ディスク大賞受賞、たしか原盤はHMV)、デファイエ四重奏団(スタンダードですね、いちばんカッコイイ)、ドゥラングルの四重奏団(幻?のヴァンドレン製CD)を筆頭として、オーレリア四重奏団、フルモー四重奏団、トルヴェールなど様々なものがある。そんな中、今日取り出して聴いたのはルデュー四重奏団のCD「Singelee, Pierne, Pascal Absil(OPUS 91 2408-2)」。録音は1990年。

この四重奏団のバリトン奏者、ジャン・ルデューはデファイエ四重奏団のバリトン奏者として活躍した。誰にも真似できぬ美音と、完璧なテクニック・音楽性によって70~80年代のサクソフォン界に強い影響力を与えた伝説の名手だ。そんな彼が、15年前に自身の主宰する四重奏団で「正統派」の四重奏曲を録音した盤。しかもソプラノは、なんとあのファブリス・モレティ。そう、この録音、知られていない割になかなか凄いのです。

一聴して判るのは、とにかく表現が自然だということ。音楽大学で教えられるクラシックなスタイルのフレージングや解釈なんてものが、生粋のネイティブにかかると、ここまで自然に、会話のように表現できてしまうのか(当たり前ですが)という驚き。四人の他愛のないおしゃべりを遠くから眺めているような気にすらなる。

そう、このような自然体の演奏がいかに難しいことか。フレージングセンスなどというものは一朝一夕で身につくものではないが、カンタービレでの小川のような表現は言わずもがな、速いパッセージで駆け抜けていく曲ですら、どこか歌心溢れる演奏だ。いやーすごい。

普段自分達がアマチュアとして楽器でやっている表現の不自然さを思い知らされる…。母国語を喋るように、呼吸するように吹いてみたいと思うことはあるけれど、まだまだですな。「自然」に吹けるように、精進したいところだ(どうも文がまとまらないなあ…)。