サクソフォンフェスティバルの感想その4。フェスティバルコンサート&オーケストラ。
フェスティバルコンサートは「日本のサクソフォーンの新しい波」ということで、昨年よりも新しい時代の邦人作品を紹介するという興味深いプログラムだった。解説はなんとあの上田卓氏!
佐藤聰明の「ランサローテ」は須川さんの演奏。須川さんならではの美音とヴィブラートが心地よい。テクニック的には音数が極端に少ないぶんそれほどではないと思うが、このような曲を「聴かせられる」演奏家ってかなり稀ではないか。
笙との共演による武満徹「ディスタンス」は、無伴奏のバージョンをドゥラングルの演奏で聴いたこともあり、興味津々。笙が加わったことによって何がどうなったのかよく分からなかった(実はあんまり笙の記憶がない)。楽譜を前にした大城氏の、鬼気迫る演奏姿は印象的だ。
しかし続く原博巳氏は、さらにスケールアップした極限の演奏。ソプラノ一本を携えて(暗譜で!)ステージ中央に立ち、客席へストレートに向いたベルから繰り出される超絶技巧の数々。あまりにキチガイな演奏に観衆一同唖然とする他ない、といったところか。棚田文則「ミステリアス・モーニングIII」はけっこう好きな曲なので、いい演奏が聴けて良かった。次から次へと押し寄せる現代作品に、観客はかなり参っていた感じだったが(笑)。
さらに追い討ちをかけるように田村真寛氏による吉松隆「ファジイバード・ソナタ」。第三楽章のアドリブは、凄すぎ。鳥の、感情の爆発を理性が抑えきれない、といったような超絶パッセージの応酬。ピアニスト(名前忘れてしまった)もノリノリで、クラスター連打をしたかと思えばピアノの弦を指で直接弾いたりと、両者かなりキレた演奏をしてくれて、聴後感があった。そうとう疲れたけど…。
といぼっくす(フルート、ソプラノサックス、ギター、チェロ、バンドネオンという編成)は吉松隆と武満徹の大変美しい調性音楽を演奏し、難解かつ強烈な現代音楽のあとのまさに「ほっと、一息」だった。武満徹「翼」での、ピアノを加えた六人による穏やかなアンサンブルのエコーは休憩時間になってもずっと続いていた。
大規模な舞台転換の後は、フェスティバルオーケストラによる康英先生の「シンガポリアーナ」サクソフォンオーケストラ版初演と、パーカッション四人をソリストに従えたガーシュウィン「キューバ序曲」。「キューバ序曲」が良かった!フェスティバル一番のヒットだったかもしれない。とにかく楽しさ全開の音楽で、池上政人氏の指揮もノリノリ。演奏者もここぞとばかりに吹きまくり、といったふう。所々に現れるサビでは四人のパーカッションソリスト(ギロ、ボンゴ、ウッドブロック、マラカス)がステージ前方で叩いていた。いやあ、とにかく楽しかった!
来年は二日間にわたっての開催だそうだが、できれば両日聴きに来たいものだ。さらなるプログラムの充実を祈念しつつ…。
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