ご存知のとおり、ヨハン・ゼバスチャン・バッハ「無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番」の終曲"シャコンヌ"を康英先生(伊藤康英氏のこと、大学時代に所属していた吹奏楽団は伊藤康英先生と縁が深かったため、今でもこんな呼び方をしている)がサクソフォン四重奏のために再構成したアレンジである。雲井雅人サックス四重奏団の第4回定期演奏会に合わせて書かれ、2005年9月29日に津田ホールで初演。私もその初演を聴いた。
康英先生は、かつてバッハ「シャコンヌ」のフェルッチョ・ブゾーニによるピアノ版を吹奏楽用にアレンジしている。全曲ではないのだが、トロンボーンの和音から始まるアプローチが印象的で、吹奏楽ならではの色彩感を見事に活用したスコアが素晴らしいのだ。最近、再発売となった。
J.S.バッハ/伊藤康英「シャコンヌ」(吹奏楽編)
サクソフォン四重奏版も、特に明記されてはいないもののブゾーニ版をベースに再構築したのは明らかである。ところで、私はかつて、「The SAX」誌上の"私が選ぶサクソフォン四重奏曲の傑作"という企画において、グラズノフ、デザンクロ、クセナキス、マスランカとともに、敢えてアレンジ作品であるこの作品を選んで入れた。いや、本当に、オリジナルとしてサクソフォン四重奏のために書かれた、と言ってしまいたいほどの魅力に溢れている。"作曲"とほぼ同レベルの創造作業を経たスコアと言えるだろう。さすが康英先生!!
雲井雅人サックス四重奏団の定期演奏会での演奏は、それはそれは素晴らしいものだった。その演奏は、雲井雅人氏のSoundCloudページに掲載されているので、ぜひ一度お聴きいただきたい。
その演奏を聴いたとき、アレンジの素晴らしさにも感激してしまい、ぜひ演奏したい、というようなことを、来場していた康英先生と話した(そういえば、この時杉森さんにも会ったんだよな)。ちょうど四重奏のレパートリーを探していた時期にぶつかったりで、2005年10月3日には康英先生に宛てて出版依頼メールを送っている。楽譜の準備が整ったのは2006年の4月である。
その後すぐに楽譜を購入したのだが、あまりの難しさに、ずっと(5年間も!)取り上げられないでいた。ようやく練習を開始できたのが2010年、その後、2010年9月のカット版(Major Keyの変奏をまるっとカット)の演奏、2011年2月協会コンクール提出用の録音(Major Key開始の直前まで)を経、2011年3月21日の日本サクソフォーン協会第8回アンサンブルコンクールの演奏に向けて全曲の練習を続けていたが、コンクールは中止となった。初めて全部演奏できたのは、2011年5月22日の演奏会。そこまで出版から実に5年以上を経ており、感慨深かった。2012年7月には、世界サクソフォン・コングレス(イギリス・スコットランド)において演奏。さらにさらに2年以上を経ての今回の再演となる。
そういえば、版元のIto Musicや、ブレーンミュージックの通販サイトには、Tsukuba Saxophone Quartetの演奏映像(2011年の演奏会)が、参考演奏として掲載されているのだ。嬉しいことである。
雲井雅人サックス四重奏団以来、あまり取り上げる団体はなかったのだが、最近はSaxaccordや、Quatuor Bといったプロフェッショナルの団体が取り上げたり、また、音楽大学の学生も取り上げていると伝え聞く。この素晴らしいアレンジが徐々に拡がりつつある実感があり、これまで何度も取り上げてきた身として、嬉しさを感じる。
【Tsukuba Saxophone Quartet – Saxophone Concert Vol.6】
日時:2014年12月21日(日)18:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷センター・音楽ホール
入場料:1,000円
プログラム:
C.コリア/旭井翔一 – アルマンド・ルンバ(サクソフォン四重奏版委嘱初演)
J.L.d.ティロ – トルメンタ・タンゴ
木山光 – ハデヴィッヒII
J.S.バッハ/伊藤康英 – シャコンヌ
D.マスランカ – レシテーション・ブック
チケット問い合わせ:info@tsukubasq.com
詳細:http://www.tsukubasq.com
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