「ある曲の参考演奏を探す」時に取る方法は、近年目覚ましく変化した。私がサクソフォンを好きになった頃は、何か気になる曲があればインターネットを使って収録されたCDの情報を手に入れて(だいたいがmckenさんのデータベース)、東京に出てきた時にCD屋さんを回るか、CD屋さんに注文するか、当時出てきたばかりのAmazonを使うか、といったところだった。
当時は回線も細く、レンタルサーバーの容量も限られていたので、あまりネット上に録音を公開している人はいなかったと記憶する。流行り始めのMP3を使ってホームページ上に録音を公開していたプロフェッショナルの奏者が、国内・海外ともちらほら、という感じである。やはり探しだすことのできるレパートリーとしては限定的だった(そういえばGoogleも流行り始めで、gooを利用していたっけな…)。
「ファジイバード・ソナタ」が聴きたくて、須川展也氏の「Fuzzy Bird Sonata(Apollon APCE-5552)」に入っていること、そして廃盤であることを知り、入試の帰りに東京のディスクユニオンで中古を見つけて1200円で購入したり、デファイエカルテットのデザンクロが聴きたくて「サクソフォーンの芸術(東芝EMI)」を探していたところ、たまたま高校の修学旅行先の長崎の場末のCD屋で見つけて購入したり、まあさすがにそれらは極端な例ではあるが、1枚1枚の購入について、手軽さとは程遠い時間と労力が必要だった。
あれから12年。GoogleかYouTubeで"Fuzzy Bird Sonata"と調べれば、世界中の演奏者による「ファジイバード・ソナタ」がいくつも表示される。さらに、Facebookのタイムラインに流れてきた動画を何も考えずに良しとして参考にしてしまう、ということもある。想像だが、今の中高生がサクソフォン音楽をなにか調べようとすれば、まずYouTubeをチェックするのではないかなあ。さすがにデファイエカルテットなど、歴史的録音はあまり見つけられないようだが、当時からしたら考えられない動画などを観ることもできる(「世界の創造」の演奏映像など…)。
そのお手軽さが良いのか悪いのかはわからないが、今も昔も重要な事は、その中から本当に良いものを見つけることなのだろうな。誰もが発信者たりえる時代に、昔に比べて石が圧倒的に大多数を占め、玉を見つけることはままならないが、物怖じせず十分な時間を使っていろいろな演奏を探していくべきなのだと思う。もちろん、インターネット上にとどまらず、ダウンロード配信やCD、あらゆるメディアを探さなければ、本物にはたどり着くことができない可能性が高い。
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