交流会の次の日、かねてより大山さんよりご案内いただいていたこのリサイタルを聴くために昼過ぎに東京へと戻った。
【大山権之助サクソフォンリサイタル】
出演:大山権之助(sax)、富山里紗(pf)、佐藤淳一(cond)、加藤里志、丸場慶人、上野耕平、野村亮太、木村有紗、東秀樹、持田崇、須々木由子、岡村麻美、細川紘希、中村賢太郎、塩塚純(以上sax)
日時:2013年7月14日(日曜)14:00開場 14:30開演
会場:すみだトリフォニーホール・小ホール
プログラム:
J.S.バッハ/G.ショッカー - パルティータ イ短調BWV1013+パルティータのゴースト
W.オルブライト - ソナタ
C.ドビュッシー/佐藤淳一 - ラプソディ・オリエンタル
T.エスケシュ - テネブレの歌
J.イベール/J.M.ロンデックス - コンチェルティーノ・ダ・カメラ
D.ミヨー - スカラムーシュより第3楽章(アンコール)
(アンコール2曲目わからず)
洗足学園音楽大学にて佐藤淳一さんと同世代であったそうだ。大山さんの独奏をきちんと聴くのは初めてだったが、一言でいうと「誠実」な演奏が印象的だ。例えばオルブライトのヴィブラート一つとっても、隅から隅まで「正格な」箇所に理想的な速度と深さでかかる、という状況が連続していく。センスの賜物か、それともそれだけのリハーサルをこなしているのか…。音色もストレートななかに暖かみがあり、聴いていて心地よかった。
プログラム的にも興味深い。パルティータは、なんとゲイリー・ショッカーによるオブリガード付き(オブリガード・サクソフォンは野村さん)。通奏低音のようなものを想像していたのだが、もっと旋律から近い距離を並走し、ポリフォニー的な効果を生み出していた。オルブライトもも聴けて良かった!第2楽章の美しさには、大山さんの演奏スタイルがピタリと当てはまる。逆に第1楽章や第4楽章なんかは、もっと不良のような?スリリングさを聴いてもみたかったな、と思った。
後半は豪華アンサンブル、そして佐藤淳一さんの指揮との共演。ドビュッシーは12本のサクソフォンとピアノのために佐藤さんが準備したスペシャル・アレンジ。昨年から佐藤さんが進めていた一連のドビュッシー研究の集大成とも言えるアレンジ。これがどんな響きがするものかと思っていたのだが大変に素晴らしいもので、聴きながら感動してしまった(ソロ・バックとも、演奏者も楽譜の再現に素晴らしい働きをしていた)。ドビュッシーのラプソディというと伊藤康英先生のアレンジが思い起こされるが、ドビュッシーのサクソフォンアンサンブル版アレンジとして後世に伝えられていくべきものだ。
エスケシュはオリジナル編成だが、これもなかなか聴く機会がないため、今回は貴重な機会となった。ソロのはじけ具合も、バックのアンサンブルもとても楽しい。この作品に関する解説はThunderさんのブログに詳しい。ソロと12本のサクソフォンはすなわちキリストと12人の弟子を表しているということだが、この作品が献呈されたドゥラングル教授率いるパリ国立高等音楽院のサクソフォン・クラスの12人という人数が、その人数と同一であることに今更ながら気付く。なんだか偶然では無さそうな気もする。イベールは祝祭的な雰囲気で、問答無用で楽しむことができた。
軽く大山さんにご挨拶して(差し入れは名古屋のきしめん)外に出ると、ちょうど雨が通り過ぎたあとなのだった。
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