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アンディ・スコット Andy Scott氏(イギリスのサクソフォン奏者・作曲家、アポロSQ等に参加)の、「Dark Rain」という作品を聴いて以来、ずっと楽しみにしていたCDを入手した。昨年のWSCの際にリリース準備中という情報だけは得ていたものの、肝心のリリース日がわからないままだったのだ。昨年末になってようやくavailableとなり、早速購入した。
「GAMESHOW(Sospiro Records SOSRB100112)」
Michael Ball - Concerto
Andy Scott - Dark Rain
Graham Fitkin - Gameshow
JacobTV/Marc Rogers - Tallahatchie Concerto
演奏者、収録曲目だけを見ても、イギリスのサクソフォン好きにとって垂涎の的である。独奏はロブ・バックランド Rob Buckland氏、「Dark Rain」ではジョン・ハール John Harle氏も参加、グラハム・フィトキン Graham Fitkin氏の新作協奏曲あり、バックは王立北部音楽院吹奏楽団(RNCM)…と、これでもかというほどの豪華布陣。さらに、個人的な趣味としてJacobTV「Tallahatchie Concerto」の吹奏楽編曲版(アレンジはMarc Rogers氏)まで収録されていて、「いますぐ買え」と諭されているような気になってしまう。
作曲者のアンディ・スコットが1985年に広島平和記念資料館を訪れた時に受けた印象が「Dark Rain」の基になっているという。そう、タイトルの「Dark Rain」とは原爆投下後に降ったいわゆる"黒い雨"のことであり、2005年に終戦60周年を記念して作曲された(2006年のBritish Composer Awardsを受賞)。吹奏楽と2人のサクソフォン奏者のためのダブル・コンチェルトの形態をとり、1st奏者はソプラノ+アルト持ち替え、2nd奏者はアルト+テナー持ち替えとなる。全体は22分に及び、独奏パートは各種音楽スタイルをボーダレスに吹きこなす能力と、フラジオ音域を含む高い技術力が求められる。ハール氏とバックランド氏の独奏はかなり刺激的であり、特にジャズ・スタイルの箇所においてはクラシック奏者らしからぬ吹きっぷり。イギリスサクソフォン界ならでは、だろう。最終部は、なんだかレッド・ツェッペリンの「天国への階段」を思わせるような感動的な音楽。
ボール作品は、バックランド氏が初めて献呈を受けたサクソフォン協奏曲なのだそうだ。知らない作品だったが、最終部にかけてとてもかっこ良いフレーズが頻出する。フィトキン作品は、Londonレーベルから出ているフィトキン作品集に比べれば印象はやや薄いものの、それでも面白い作品であることは間違いない。超重厚な和音(時に「ここまで?」と思わせるほど)に、ソプラノサクソフォンのエッジの効いたリズム、音運びが絡む。フィトキン好きにオススメ。
「Tallahatchie Concerto」は、管弦楽版を聴くとオーケストレーションがやや苦しいスコアであるのだが、吹奏楽編曲版を聴くとその不自然さが払拭され、まるでオリジナルの作品のようにも聴こえてしまうほどだ。バックランド氏のソロは、アグレッシブな表現も交えた説得力あるもので、この作品にふさわしい。第一楽章は非常に捉えどころなさが際立つのだが、これを面白く聞かせる手腕に舌を巻く。すでにリリースされているボーンガンプ氏の演奏(アルバム「Buku」所収)と聴き比べてみるのも面白いかもしれない。RNCMの演奏もかなり健闘している。改めて「Tallahatchie Concerto」のJacobTVによる解説を読んでみると、第1楽章のあの浮遊感のある響きの理由が書いてあった。それによると、あの超壮大なオラトリオ「Paradiso」の次の作品がこの「Tallahatchie Concerto」だったから、とのこと。なるほど。「ピンク色の影、天空にはオレンジ色の雲」という表現が面白い。
購入は、版元であるSospiro Recordsのサイトから可能。プロモ動画はこちらから。
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