2012/04/15

Saxophone Quartet Athena 1st Recital

よく晴れた休日の昼下がり、トッパンホールにて開催されたSaxophone Quartet Athenaのリサイタルに伺った。休日の午後開催かあ…最近、平日になかなか演奏会へと伺えない私にとってはありがたいことである。演奏者にとっては会場を取るのが難しいだろうし、来場者にとってはプライベートの予定との兼ね合いが難しいだろうが、会場は大変な盛況だった!!何というか、関係者全員集合という感じで、おなじみの方がたくさん、初めてお会いする方もいたり。プログラムノートは佐藤淳一さんの手によるものだったのだが、情報量が多く、興味深く読んだことを記しておく。

【Saxophone Quartet Athena 1st Recital】
出演:Saxophone Quartet Athena
日時:2012年4月15日(日)14:00開演
会場:トッパンホール
プログラム:
D.スカルラッティ - ソナタよりK.427, K.474, K.519
E.ボザ - アンダンテとスケルツォ
G.リゲティ - 6つのバガテル
J.イベール - 物語より金の亀の番人、小さな白いロバ、机の下で
I.ゴトコフスキー - サクソフォン四重奏曲

塩安麻衣子、江川良子、冨岡祐子、平賀美樹(敬称略)というメンバー。女性だけのカルテットというと、海外ではFairer SaxやRollin' Phones、日本でもNoyer Saxophone Quartetを筆頭に、最近でもSaxophone Quartet 桜やGreen Ray Saxophone Quartetといった名前がが思い浮かぶ。海外のカルテットが、方向性を「女性ならではの云々」というところに向けて打ち出すのに対し、日本ではもっとストイックな方向性を持つ団体が多い…のかもしれない。AthenaSQも同じ傾向である。

白を基調とした衣装で現れたAthenaの面々。スカルラッティは、ピエルネの編曲をベースに、原曲のキイを使ったAthenaSQのオリジナル・アレンジ。確かヘムケ博士のアレンジも原曲キイだったような。オープニングにふさわしく、一段と華やかに聴こえる。トッパンホールの響きを味方につけ、サクソフォンの巡航速度でもって爽やかに演奏された。音色は、それぞれのソロや別のアンサンブルでも聴いたことがあるおなじみの美しさ。ボザでは、アンダンテ冒頭の冨岡さんと塩安さんの絶妙な彩りが印象深い。

第一部メインとなったリゲティは、予想通りの爆発的&スタイリッシュな演奏。実際演奏に取り組もうとすると、聴いているよりも30倍くらい難しいこの作品であるが、技術的にはなんのその、さらに内面までもかなり大きく掘り下げた演奏で、感銘を受けた。本日のアレンジは、ショット版とギョーム・ブルゴーニュの私家版を出発点として、AthenaSQがさらにオリジナルの要素を加えたスコア。聴いているだけではさすがにわからなかったが、きちんとAthenaSQの血肉として作品を取り込んでいるように思えた。

後半は、イベールから。このイベールが、重量級のプログラムのなかでオアシス的な重要な役割を果たしており、上手い配置だなと思った。塩安さんのキラキラとした音色は、このような作品ではますます存在感を増すのである。オアシスで一休みした後は、全6楽章、30分以上に及ぶ長い旅の始まり。ゴトコフスキーの「サクソフォン四重奏曲」は、その途方もないボリューム感から、リサイタルに組み入れるのは躊躇されるほどの作品である。演奏者も大変だが、聴衆を非現実の部分に繋ぎ留めておくのが難しいのだ。ともすればただの「長い曲」としてしか認知されないこの作品、AthenaSQがそれを敢えて組み込んだ所に、この演奏会にかける気合の入れようが伝わってくるのである。会場内のほとんどを巻き込んだままの、6つの違う風景を見せてくれた。やはり第6楽章は圧巻である(超速だった)。

アンコールにイベールの「物語」から「ガラスの籠」。終始見事な演奏に、会場からも大きな拍手が贈られていた。1st Recitalにてこの密度である。さて、次はいったい何を見せてくれるのか。

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