正真正銘、あのパキート・デリヴェラである。今更説明するまでもない、ラテン・ジャズ界の大御所だ。デリヴェラというと、私なんかはミシェル・カミロとともに「Caribe」を一緒に演奏している姿が思い浮かんでしまう(どこかで、デリヴェラ最高のソロの一つだとの評を見たことがある)。また、サクソフォンのみならずクラリネット奏者としても有名で、その演奏もおなじみだ。
そのデリヴェラが、なんとエイトル・ヴィラ=ロボスの「ファンタジア」を吹いているCDがあるとは!驚いた。「MUSICA DE DOS MUNDOS(Acqua Records aq012)」という名前のアルバムで、ピアノのAldo Antognazziとともにしっかり全三楽章を演奏している。ジャズ奏者がクラシック作品に取り組んだCDと言えば、真っ先にブランフォード・マルサリスの「クリエイション」を思い出す方がいることだろう。あれはあれで、一つの完成された世界を持っていた所に驚かされたものだ。彼のイベールを聴いたことがない人がいたら、すぐに聴いて欲しいところ。
デリヴェラが「ファンタジア」を吹いても、やはりひとつの"完成された世界"が組み上がっているのだと感じる。ここでいう"完成された世界"とは、テクニック的に優れているということではない。あるベクトルに対するブレない芯を持っていること、そして誰が演奏しているのかということがわかることである。とてもクセのある音色に、ブロウ気味の音圧、楽譜もところどころ変えてしまっているし、技術的にもそれほどスマートというわけではない。…が、ちょっとテクニックがある無個性な演奏よりも、よほど魅力的に聴こえるのだ。
ちなみに、他のトラックではなんとブラームスの「クラリネットソナタ第2番」を(もちろんクラリネットで)吹いてしまっている。こちらは敢えて感想を書かないので、興味ある方はぜひ買って聴いてみていただきたい。
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