これを、100曲の名曲についての単純な楽曲解説書と思ってはいけない。内容は自由形式のエッセイ、である。とある楽曲など、2ページに渡ってきちんと曲の内容が書いてあるかと思えば、その他の楽曲では、楽曲の内容についてはほんの2行、そして他の部分は楽曲に関する芥川也寸志氏の体験談などで埋め尽くされてい場所もあるなど、実に自由奔放。しかし、なぜかこの2ページを読んだだけで、ついその曲を聴きたくなってしまうから不思議だ。
サクソフォンが含まれている作品も数多く取り上げられているが、サクソフォンが含まれていることについて触れられているものは見当たらない。なにせ、楽曲についてまともに解説していないのだから仕方が無い(笑)。ところで、イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」について見開きで掲載されているのだが、そこで書かれた文章を読んで、芥川也寸志氏がサクソフォンを吹いていた、ということを初めて知ったのだった。Wikipediaにも、次のような一文がさりげなく書いてあった。
1944年10月、学徒動員で陸軍戸山学校軍楽隊に入隊しテナーサックスを担当。このとき軍楽隊の仲間に、東京音楽学校で1級上だった團伊玖磨がいた。
クラシック音楽に関わっている身には、必携の著だ。もちろん、Naxos Music Libraryとの親和性も高く、読んだ次の瞬間には音として確かめられるというあたり、芥川氏が本作を著したその頃には想像も付かなかったのだろうなと、ふと時代の移り変わりに思いを馳せるのである。
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