2009/02/27

リエゾンSE第1回定期演奏会

【リエゾン・サクソフォン・アンサンブル第1回定期演奏会】
出演:家田厚志(cond.)、野原みどり(pf.)、野原武伸(sn.sax.)、成田徹、持田崇(以上s.sax.)、貝沼拓実、佐藤梓、江原あずさ、伊藤あさぎ(a.sax.)、大栗司麻、島田和音、鈴木崇弘(以上t.sax.)、小山弦太郎、鈴木啓人、原博巳(以上b.sax.)、藤木貴行(bs.sax.)
日時:2009年2月27日(金曜)19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール
プログラム:
W.A.モーツァルト - アイネ・クライネ・ナハトムジーク
E.グリーグ - ピアノ協奏曲(独奏:野原みどり)
M.ラヴェル - マ・メール・ロワ
E.グリーグ - 組曲"ホルベアの時代より"
~アンコール~
P.I.チャイコフスキー - "くるみ割り人形"よりトレパック

開演20分前にホールに入ったときは、なんだか「サックスの客」って感じではなくて、ちょっとご年配の音楽ファンというような趣の方が多く目についた。開演が近づくにつれ、ああ、いつもの方々だ~みたいな感じになっていったのだが。客席では、MJさんと並んで聴いた。

リエゾンSE。四重奏 or サックスオーケストラという編成に落ち着いてしまうサックス界にあって、珍しい編成のアンサンブルである。主宰は野原武伸氏で、総出演で指揮者つきのSnSSAAAATTTBBBBsという編成。チラシを見る限りは10重奏くらいだったと思ったのだが、どうやら14重奏くらいまでを想定しているということなのだろうか。チラシではテナーだった貝沼氏がアルト(!)のトップに移っていたり、なぜか伊藤あさぎさん(!)が乗っていたりと、想像していたのと少し違った。mckenさんが日記に書いていて思い出したのだが、そういえばリヨン音楽院のサクソフォンアンサンブルも似たような編成(指揮者つきの13重奏)だったはずだ。

演奏なのだが、このプログラム…「アイネ・クライネ」「グリーグのピアノ協奏曲」「マ・メール」「ホルベア」を並んで聴いてみると、もう野原みどりさんの圧勝って感じだ。スケール、オーラ、音色、フレージング、テクニックの全てにおいて、格が違う、どころか世界が、そして次元が違う、というほどのものでした。野原みどりさんが独奏を務めたグリーグの「ピアノ協奏曲」の曲中には、サクソフォンとピアノが絡む部分が何箇所かあるのだが、サックスだけ取り出してみると上手いのに、比べてみるとその差は歴然…。もの凄いピアニストであることは、良く分かっていたはずなのだが、こうして改めて聴く独奏は、想像をはるかに超えたものだった。サクソフォンを基準に考えてしまう自分の想像が、いかに貧弱であるか、ということを思い知らされた。

近年、野原みどりさんが共演するサクソフォンの演奏家といえば、たとえばドゥラングル教授とか原博巳さんといったところになるが、そういった世界トップレベルの人でなければ、このピアニストとはアンサンブルで等価な位置に立てないのではないかとも思った。あー…、サックスってやはりクラシック音楽の大海の中では、ごくごくマイナーな分野なのだなあ、と再認識。

まあ、そんなわけで、今も耳に残るのは野原みどりさんのピアノなのだが、さすがにそれだけではあんまりなので、いくつか感想を。指揮者を立ててのアンサンブルは、これはどうなるかと期待していたのだが、アンサンブルとしての方向性はやはり良い傾向が見られる。緩徐楽章でのフレーズの持続など、指揮者なしのアンサンブルでは絶対に達成できない演奏だ。また、弦楽器のような音の扱い方の、ベクトル一致は、これもオーケストラ指揮者ならではのものではないだろうか。そういえば、指揮者用譜面台のスコアはオーケストラのものを使用していたようだ(ホルベアでは、なんとミニアチュアスコアで振っていて、とても可笑しかった)。

サクソフォン陣営では、アルトのトップであった貝沼氏による、全体のアンサンブルの引き締めが印象深い。バスサクソフォンを演奏していた藤木氏も、理想的な発音と音色で個人的に好印象。さらに、「マ・メール・ロワ」で出現する大栗司麻さんや伊藤あさぎさんの独奏と、「ホルベア」での原さんの独奏がアンサンブルに華を添えていた。2ndや3rdでも、やはり聴こえる部分が印象的に聴こえてくるのは、さすがというべきか。「ピアノ協奏曲」以外では、最後に演奏された「ホルベア」が良かった。というか、最もコンパクトな響きで、やはりこの曲は管楽器と相性が良いことを再確認した次第。

なんか、個人的にいろいろとショックを受けたりと、考えることの多い演奏会ではあったが、リエゾンSEは、これまでになかった方向性の団体として、大変注目すべきものだと思う。今後どのような方向に進んでいくのか、楽しみにしたい。

0 件のコメント: