去年に引き続き、伺ったのは2度目。当日券もほとんど出ないほどの満員で、客席は中高生、音大生、プロ奏者、といったところが大半を占める。私の個人的なお知り合いの方も、何人もいらしていた。
【第16回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:東京藝大サクソフォーン専攻生
日時:2008年2月20日(金)18:30開演
場所:川口総合文化センターリリア音楽ホール
プログラム:
F.プーランク - トリオ(sax:佐藤琴美、須永和宏、pf:吉武優)
C.パスカル - 四重奏曲(sax:塩入幸恵、横山美優、三浦夢子、本堂誠)
松岡大[示右] - トゥリアエズ(sax:石橋梓、鈴木崇弘、高橋陽香、田中拓也、福田享、丸場慶人)
H.トマジ/柏原卓之 - バラード(sax solo:角口圭都、cond:池上政人、sax orch:高橋陽香、石橋梓、寺田麗美、細川紘希、福田享、横山美優、鈴木崇弘、須永和宏、三浦夢子、丸場慶人、田中拓也、本堂誠、harp:逸見美帆子)
~休憩~
K.シュトックハウゼン - 少年のデュエット(sax:佐藤淳一、田村哲)
N.ブルグミュラー - 二重奏曲(sax:依藤大樹、pf:城綾乃)
G.リゲティ - 6つのバガテル(sax:伊藤あさぎ、細川紘希、寺田麗美、大石俊太郎)
M.ラヴェル/ミ・ベモルSE - クープランの墓(cond:池上政人、sax:総出演)
~アンコール~
J.マティシア - 悪魔のラグ Devil's Rag
理由はよくわからないのだが、去年よりも印象深かったなー。客席の沸き方も明らかに違うし、一つ一つのグループが上手いだけではなくそれぞれ個性的で、それぞれの演奏者の吹き方や衣装や表情を、一日経った今でもはっきりと思い出すことができるほどだ。気取らない、着飾らない演奏で、奏者の「地」がより強く出たのかな?聴いていた位置のせいもあるかも知れない(今回は前方中央ブロックの最後列、前回はけっこう後ろのほう)。
プーランク、ソプラノの音色もテナーの音色もホレボレしてしまうほどだし、2本の楽器がユニゾンで奏でる部分の、幸福感に満ち溢れた感じとか、いいなあ。あ、佐藤琴美さんの衣装が非常にかわいらしかったです(笑)。女性陣は、衣装や髪型に気合が入っていらっしゃって、どなたも素敵でした。パスカル、比較的若いメンバーで固められた四重奏で、ああ、まだ入学して1年なんだなあ、というちょっと垢抜けない感じのサウンド。それでも、テクニカルな面は余裕でクリアしており、さすがだ。ところどころ出現する和声とか、ビート感を上手くコントロールしていく様が見事だった。第1楽章が印象に残っている。
松岡大[示右(←しめすへんに、みぎ)]氏の作曲による「トゥリアエズ」。ソプラノとバリトンがそれぞれ2本ずつ、アルトとテナーがそれぞれ1本という編成の、3つの楽章から成る作品。実に面白い作品だった!特殊奏法を随所に使用しながら、極端にユーモラスな音世界を表現しており、これは普通のサクソフォンのアンサンブルとして聴いてみたい/演奏してみたいと思える。演奏も、なんだか楽譜そのまんまのユーモアに溢れた、完全に乗り切ったプレイで、奏者の作品に対する共感度が高いのだろうなと思った。委嘱が上手くいった好例だったと思う。
トマジ。真っ赤なドレスで現れた角口圭都さん、柏原卓之氏の編曲と池上政人氏のタクト、そしてSn.からBs.までの学部生によるサックスオケ(ハープ入り)という、最強のバックアップを得て、ある時は一音一音を慈しむように吹き、またある時はのびやかにフレーズを歌ってゆく姿が、とても印象的だった。角口さんの、演奏できる幸せをかみしめているような音には、なんというか、理屈抜きの感動を味わいました。一緒に連れ立って行った後輩たちも、とても驚いていたようだ。それにしても、こうして聴いてみると「バラード」って、実にロマンティックな曲だ。
休憩をはさんで、シュトックハウゼン。川口リリアの音楽ホールは、ステージ上方にパイプオルガン奏者のための高台があるのだが、なんとその場所を使用して演奏された!真っ白な衣装で登場した2人に、スミレ色のライトが当たった状態で演奏される「少年のデュエット」。ちょっとトリップしそうになりました。それにしても、あんな離れた位置から、どうやって合わせているんだろうか。意外とアンサンブルしやすいのかな?曲が終わった後の、客席のざわつきが面白かった。
ブルグミュラーは、ピアノの教則本でも有名なヨハン・ブルグミュラーの弟、ノルベルト・ブルグミュラーの手によるクラリネットとピアノのための作品。ロマン派音楽の典型な、甘いメロディに満ち溢れた作品で…いやあ、こんな作品があるんだなあ。ピアノとサクソフォンの、アンサンブルの妙を楽しむことができた。
「6つのバガテル」…出版されているのか!という驚き。ハバネラSQバージョンではなく、Schott社から出版されているのだと。へえ~。第1楽章こそ「?」という感じだったのだが、楽章が進むにつれてぐっと惹き込まれてきて、第4~5楽章あたりから最後にかけてはまさに圧巻だった。そもそも、響きのコントロールの仕方が根本的に違うのだろうか。場面々々によって、会場に響く音がまったく違って聴こえてくるのだ。面白いな。
で、最後は「クープランの墓」ですよ。自分たちでもやったことがあって、この曲のこの編曲の難しさは重々承知しているため、よけいに驚いた。こりゃすごいや。「プレリュード」とか、なんであんな風に軽々と吹けるのだろうか(苦笑)。いやはや~。アンコールは、マティシアの、原曲はピアノとサックスのための作品を、そのままオーケストラの編成で演奏して終演(最後に盛大なオチがついていた笑)。いやー、面白かった。終演後は後輩たちと東京に出て、ラーメンをおごらされ(?)、そのまま帰途についた。
2 件のコメント:
パガテルの楽譜持ってるよ。
ハバネラ版とはパートの割り当てがところどころ違っているので、聴いた感触も変わるんだろうね。
まぁ、どのみち、難しくて僕らには吹けません。
> image/air_さん
持ってるんですか!
ハバネラのCDでは、「彼らだけに演奏許可が与えられている云々…」みたいなことを書いてあったので、探そうともしませんでした。
今回の楽譜はSchottからの出版だそうで、リゲティの楽譜ってほとんどがSchottかPetersから出版されていますから、ある意味、お墨付きのアレンジなのかもしれません。
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