ユージン・ルソー Eugene Rousseau氏がRIAXレーベルに吹き込んだ4枚のアルバムは、いずれもクオリティが高く、万人にお勧めできる内容である。発売からかなり時間が経過しており、いまさら…な感もあるが、「Saxophone Masterpieces」を聴きなおしてみた。RIAXが取り扱うクラシック・アルバムの、記念すべき最初のカタログ番号を飾ったのが、このルソー氏のアルバムである。クレストン、ムチンスキー、ハイデンといったアメリカの作曲家の作品と、チェコの作曲家であるミロスラフ・カベラックの作品が収録されている。
Saxophone Masterpieces(RIAX RICA-1001)
Eugene Rousseau, saxophone
Jeromír Klepác, piano
Paul Creston - Sonata op.19
Robert Muczynsky - Sonata op.29
Bernhard Heiden - Sonata
Miloslav Kabelác - Suita
Bernhard Heiden - Fantasia Concertante
発売されたのは2000年だが、レコーディング自体は1992年の10月だということだ。ロケーションは、プラハの放送局のスタジオ。どうもリリースに至るまでの経緯が良く分からないのだが、録音はしたものの、発売のアテが見つからずテープがお蔵入りになっていたところを、プロデューサーが引っ張り出してきた…というところだろうか。RIAXのHideki Isodaって、何者?
演奏は、どの曲も模範たりえるもので、必要以上に飾らないニュートラルな音楽作りは、なんだかフルモー氏の演奏を思い起こさせる。また、弟子であるケネス・チェ氏やオーティス・マーフィ氏の演奏にも、多くの共通部分を見出すことができる。
特にムチンスキー、ハイデンは、この版こそが決定版である、と言い切ってしまえる位のものだ。ムチンスキーでは、第2楽章序盤ではテクニカルな面をことさらに強調しすぎず、隅々まで良く歌いこんだ演奏。しかし最終部に向けて、不思議と聴き手の耳を惹き付けていく。ルソー氏と親交が深いハイデン氏の作品は、アルト・サクソフォンのための名作「ソナタ」、そして本来であれば吹奏楽編成が想定される、「ファンタジア・コンチェルタンテ」の収録も嬉しい。ルソー氏が川崎のコングレスで同曲を取り上げたのが1988年だから、この録音はその4年後。吹奏楽版にはない、コンパクトさは、これはこれで面白い演奏だ。
録音は、ずいぶんと解像度が低いように聴こえるが、まあそもそもレコーディングもどういった環境であったかわからないのだし、これはこれでしょうがないのかもしれない。ピアノなど、サクソフォン以上にボヤけて聴こえるため、特に歯車のようなアンサンブルが繰り広げられている(であろう)部分では、いまいちその絡みがわからないのが残念。
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