2008/07/11

蛹化の女(保坂一平×大石将紀×Others)

会場の門仲天井ホールは、清澄通りの一角にある雑居ビルの8階。古い建物で、足を踏み入れたとたんに、セミの声が聞こえてきて、しかも会場の座席が座布団やらなんやらで…タイムトリップしたかのような感覚を味わった。50席の会場が、満席。しかし、いったいどういう客層だったのだろう。おそらくサックス関連は10人もいないくらいだろうか。久々のアウェイ、って感じだ。

舞台は、大石さんが奏でるバリトン・サクソフォンの「無伴奏チェロ組曲」の一節から始まった。

ある時にむしであり、ある時におんなであった。
ある時に静物であり、ある時に動物であった。
ある時に影であり、ある時に実体であった。
ある時に老人の顔を見せ、ある時に子供の顔を見せる。
ある時に赤く染まり、ある時に白く佇む。
ある時に古典的に、そしてある時に即興的に。
ある時にやわらかく、またある時には鋭く。
ある時に暗く、ある時に眩しく、輝いて。

鮮烈な体験であった。人間の体は、こうもコントロール可能な…こんな領域に到達するのか!という驚きはほんの始まりに過ぎず、言語化不可能な空間が次から次へと繰り出される。

音響面では、国立音楽大学の音響デザイン科の卒業生の協力を得ていたそうだ。サクソフォンのインプロヴィゼイションのセクションでは、MAX/MSPのディレイやループバックを効果的に使用しながら、ある時は舞踏に寄り添うように、ある時はまったく異質な音を奏でていた。

最後、戸川純の歌に乗せて、舞台がだんだんと暗くなっていくときに、ふと涙している自分に気づく。どういう感情が沸き起こっていたのだろうか、それすらも良く分からなかったのだが。

言葉でまともに書き下すことができないが、素敵な舞台だった。うん、それだけは確実に言える。舞台をたくさん観れば(サックスの演奏会と同じように)言語化のノウハウが会得できるのかなあ。

ちなみに、つくばから連れて行った後輩のうち一人は、サックス関連の演奏会はトルヴェールに次いでこれが二度目なんだと!二度目にしては、かなり刺激が強すぎたんじゃなかろーか(笑)

それから、ちょっとした驚き。この舞台と同じ日に、代官山でThe 30th Anniversary of NYLON100%というイベントが開かれていた。1980年代前後のパンクやニューウェーブのアーティストが一堂に会したイベントであっただが、そのイベントに戸川純が出演し、アンコールで「蛹化の女」「パンク蛹化の女」を歌っていたのだそうだ!

偶然だったのか?それとも、そのイベントを見越してこの舞台を7/10に設定したのか?いずれにせよ、なかなか面白い一致ではある。

0 件のコメント: