舞台は、大石さんが奏でるバリトン・サクソフォンの「無伴奏チェロ組曲」の一節から始まった。
ある時にむしであり、ある時におんなであった。
ある時に静物であり、ある時に動物であった。
ある時に影であり、ある時に実体であった。
ある時に老人の顔を見せ、ある時に子供の顔を見せる。
ある時に赤く染まり、ある時に白く佇む。
ある時に古典的に、そしてある時に即興的に。
ある時にやわらかく、またある時には鋭く。
ある時に暗く、ある時に眩しく、輝いて。
鮮烈な体験であった。人間の体は、こうもコントロール可能な…こんな領域に到達するのか!という驚きはほんの始まりに過ぎず、言語化不可能な空間が次から次へと繰り出される。
音響面では、国立音楽大学の音響デザイン科の卒業生の協力を得ていたそうだ。サクソフォンのインプロヴィゼイションのセクションでは、MAX/MSPのディレイやループバックを効果的に使用しながら、ある時は舞踏に寄り添うように、ある時はまったく異質な音を奏でていた。

言葉でまともに書き下すことができないが、素敵な舞台だった。うん、それだけは確実に言える。舞台をたくさん観れば(サックスの演奏会と同じように)言語化のノウハウが会得できるのかなあ。
ちなみに、つくばから連れて行った後輩のうち一人は、サックス関連の演奏会はトルヴェールに次いでこれが二度目なんだと!二度目にしては、かなり刺激が強すぎたんじゃなかろーか(笑)
それから、ちょっとした驚き。この舞台と同じ日に、代官山でThe 30th Anniversary of NYLON100%というイベントが開かれていた。1980年代前後のパンクやニューウェーブのアーティストが一堂に会したイベントであっただが、そのイベントに戸川純が出演し、アンコールで「蛹化の女」「パンク蛹化の女」を歌っていたのだそうだ!
偶然だったのか?それとも、そのイベントを見越してこの舞台を7/10に設定したのか?いずれにせよ、なかなか面白い一致ではある。
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