日本サクソフォーン協会々報の昔の号を引っ張り出して読んでいる。2005年に発行されたVol.27に掲載されていた、上田卓氏によるマリー=ベルナデット・シャリエ Marie-Bernadette Charrierのマスタークラスのレポートが面白かったので、ご紹介したい。
シャリエ氏は、フランスの女流サクソフォン奏者。ボルドー音楽院においてジャン=マリー・ロンデックス氏に師事し、一等賞を得て卒業。1993年からボルドー音楽院の現代音楽アンサンブルクラスの教授に就任し、さらに1994年からはロンデックス氏の後任としてサクソフォン科インターナショナルクラスの教授に就任した。
教育活動だけでなく、夫であるクリストフ・アヴェル Christophe Havel(作曲家)とともに現代音楽アンサンブルのプロクシマ・ケンタウリ(プロクシマ・ソントリ)Proxima Centauriを結成し、新作の初演を数多く手がけている。これはシャリエ女史の写真だが、ソプラノからバリトンまでを操る姿が、これほど当てはまるサクソフォン奏者はそうはいないだろう。
来日は2004年。同時期に開かれた"音楽・芸術表現のための新インタフェース"国際会議へ、クリストフ・アヴェル氏が招かれたことをきっかけに、プロクシマ・ケンタウリとしての来日が実現したそうだ。国際会議への参加の傍ら、アクタスにてマスタークラスを行った、ということである。マスタークラス招聘の発起人は上田卓氏。上田氏は、ボルドー音楽院にてシャリエ氏の下で学んだことがあるのだそうだ。
ちなみに私は当時大学の2年生。まだまだサクソフォンの現代作品には疎い身で、このマスタークラスの存在すら知らなかった。もし今、同様のイベントが開かれるならば、研究室サボってでも聴きに行ってしまうと思うのだが。
受講曲は、小山弦太郎さんの演奏でクリスチャン・ローバ「バラフォン」「ジャングル」、大栗司麻さんと貝沼拓実さんの演奏で、同じくローバの「アドリア」。普段演奏する機会は多い作品群だが、ボルドー発のこの作品を、現地のサクソフォン科教授に教えてもらう機会って、そうはないのではないか。
マスタークラスの後は、シャリエ女史のミニ・コンサート。これまた凄いプログラムで、
Hans-Joachim Hespos - Ikas (Alto Saxophone Solo)
Christophe Havel - Oxyton (Baritone Saxophone Solo)
Bruno Giner - Et interra... (Snaredrum Solo)
François Rosse - Huk'kuSpatuS (2 Voices)
Jérôme Jois - Overwritten (Soprano Saxophoe Solo)
Philippe Laval - Enfin (Tenor Saxophone & Percussion)
うーむ、きちんと聴いたことがあるのは、アヴェルの「Oxyton」くらいだ。フランスの現代作品とはいっても、パリ周辺の作品については日本への情報の輸入量がそこそこ多いが、ボルドー周辺の作品に関しては、日本ではほとんど知られていない、ということなのだろう。どんな音がする作品なのか、興味あるところだ。
レポートの最後に、上田卓氏からシャリエ女史へのインタビューが掲載されていた。ボルドー音楽院への留学の情報もわずかながら話されていた。日本からボルドーへ留学して、そこで取り込んだことを生かした活動を行ってくれる方がいると、面白いだろうなあ。
BGMは、「ær(Alba musica / MUSIDISC MU291672)」。以前、上田卓氏から送っていただいたものであり、ブログ上でレビューした。「S」が特にお気に入り。電子部品を散りばめた万華鏡のような響きが心地よい。
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