2010/10/13

A Transcription of Cesar Franck's Sonata

アメリカのサクソフォン奏者、トッド・オクスフォード Todd Oxford氏が、テキサス大学オースティン校博士課程を卒業する際に書いた論文をご紹介する。その名も、「A Transcription of César Franck's Sonata in A Major for the Baritone Saxophone」。最近よく演奏されるフランクの「ソナタ」(原曲はヴァイオリン)を、バリトンサクソフォン用に編曲した顛末を、論文形式でまとめたものである。

まずこのCDをご紹介しておこう。論文の発表とほぼ同時にレコーディングされた、オクスフォード氏のCD「Finesse(Equilibrium EQ-22)」。フランクの「ソナタ」をメインに、バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」、ボザ「即興とカプリス」、ボノー「ワルツ形式のカプリス」という、真っ向勝負の4曲を、全てバリトンサックスの演奏で収録したアルバムだ。私が初めて買った全編バリトンサックスのアルバムでもある。Amazonへの購入リンクはこちら→Todd Oxford : Finesse

クラシックの分野で捉えてしまうなら栃尾克樹氏の「アルペジョーネ・ソナタ(Meister Music MM-1189)」と比肩するほどの素晴らしいアルバムだ。チェロ奏者などにアドヴァイスを受る等、時間をかけてレコーディングの準備が為されたということは知っていたが、まさか論文がベースにあるとは知らなかった。

論文の内容は、下記の通り。
Chapter 1 : Biography of César Franck
Chapter 2 : The Sonata in A Major for Violin and Piano
Chapter 3 : Preparation and Research
Chapter 4 : Preparing the Transcription

第1章がフランクの経歴、第2章が「ソナタ」の成立の調査。続く2つの章が、実際の編曲作業についての解説である。例えば、調性やアーティキュレーション、ブレスなどに関する考慮が、ひとつひとつ丁寧に解説されている。そして、本編にも増して面白いのは、付録だと思う。まず、テキサス大学のヴァイオリン科教授 Eugene Gratovichへのインタビュー、編曲を進めるにあたりたくさんのアドヴァイスを受けたという、チェロ科教授 Paul Olefskyへのインタビュー。さらにさらに、オクスフォード氏の編曲譜も、ピアノスコアとともに全て掲載されている。圧倒的なボリュームだ。

さらに素晴らしいことに、この論文はテキサス大学のデジタル・リポジトリから無料で入手可能なのだ。ぜひ入手して、多くの方に読んでいただきたい。

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