2010/10/06

Daniel Dorff

ダニエル・ドルフ Daniel Dorffという名前を聞くと、私も含めた多くのサクソフォン吹きの方々は、まず「ああ、あの『早歩き』の作曲家ね」と思い出して、「『タンゴは四人で』とかいう曲も書いていたよね」と続き、「あとは知らないなあ…」と、3段階を経るのみであるのが普通だと思う。小品が1曲か2曲有名で、あとは作曲者の素性も知らないし、調べようとする動機も起きない。たまに、(本人が望む・望まないに関わらず)サクソフォン界にそのような形態で作品提供をしている作曲家っていますよね。例えば「異教徒の踊り」のパトリス・ショルティーノとか、「サクソフォーン・シンフォネット」のR.R.ベネットとか。

10月の中頃に控えている本番のプログラムを決めるときに、ダニエル・ドルフの「早歩き Fast Walk」が候補に挙がっていて音出しを行った。録音を聴いたことしかなくて、その時はそれほど印象には残らなかったのだが、いざ音を出してみると楽しいもので(それもよくあることだが)、いつかやってみたい曲のひとつとなってしまった。"早歩き"というタイトル通りのウキウキしてしまう曲想、ABAの簡素な形式、ジャズ風の和音、変拍子の絶妙な割り込み、ごくごく短い各楽器のソロ…(ここから試聴可能、ABAのB部分)。

超高級料理を食べたり、バイキングでお腹いっぱい食べたり、そういった幸せではなくて、スーパーで安売りしていた98円のマウントレーニアを自分の部屋で味わう幸せ、とでも例えられるのではないかな?あるいは、コース料理の最初に出てくる素材の味を生かしたサラダか、ああ、八百屋で売っている100円の汲み出し豆腐ってのもアリかな(謎)。演奏者と聴衆に小さな幸せを届けてくれる作品だと思う。

そんな「早歩き」を作曲したダニエル・ドルフの経歴が少し気になって、調べてみた。公式ページはこちら。1956年ニューヨーク州に生まれ、18歳のときに作曲したサクソフォン四重奏曲「Fantasy, Scherzo and Nocturne」にてAspen音楽祭の20歳以下の部で最優秀作曲賞を受賞。コーネル大学とペンシルヴェニア大学で作曲を修めたが、そのときの先生にはカレル・フサやヘンリー・ブラントといった、サクソフォンとゆかりの深い作曲家も数名いた。また、なんとシガード・ラッシャーにサクソフォンを習ったことがあるとのこと(!)これには驚いた。

サクソフォンの作品リストは、次のとおり。
The Seven Chakras [tsax, pf]
Barnyard Bash [asax, pf]
Cool Street [asax, pf]
Fantasy, Scherzo and Nocturne [saxq]
Fast Walk [saxq]
It Takes Four to Tango [saxq]
Quartet [asax, vn, vc, pf]
Summer Strut [asax, pf]
The Beautiful Frog Pond Waltz [asax, pf]

現在は、有名な出版社のひとつであるTheodore Presser Companyの役員を務めているそうだ。サクソフォンの世界に明るいことは、上の経歴から想像するのはたやすいが、オーケストラ、吹奏楽、室内楽、ソロなど、数々のジャンルに幅広く作品を提供している。特に、オーケストラ作品については、あの著名なフィラデルフィア管弦楽団などともつながりが強い。

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