3月の演奏会に向けて、ディヴィッド・マスランカ「レシテーション・ブック」を練習している。ここをお読みのほとんどの方は、雲井雅人サックス四重奏団のCDでお馴染みだとは思うが、全5楽章からなるサクソフォン四重奏の傑作である。同曲は、賛美歌やグレゴリオ聖歌、マドリガルといったところに題材を求め、サクソフォンというフォーマットに最適な形で響きを再構築した作品とも言えるだろうが、題材となった曲が何だったのか、ということについて、少し追ってみたい。
第2楽章と第5楽章については、およそ一年前に調べてある(こちらからどうぞ)ので、今回は第1楽章、第3楽章、第4楽章について調べてみた。
第1楽章「コラール旋律"三つにして一つなる汝"による瞑想曲」は、ソプラノサクソフォンの単旋律から始まり、その後は予想だにしない驚異的な展開によって全曲の幕を開ける。この楽章は、おそらくバッハのカンタータBWV293である"Der du bist drei in Einigkeit"を題材としたものだと思う。調号はおなじ。元となった旋律は作曲者不詳のようで、もしかしたらバッハのオリジナルの旋律なのかもしれない。
第2楽章や第5楽章の賛美歌のメロディは、様々なカンタータで何度も引用されているが、第1楽章のこのメロディは、どうやらこのBWV293にしか出てこないようだ。やっつけ仕事ではあるが、バッハのコラールBWV293を、サクソフォン四重奏に移調してみた(クリックして楽譜を拡大、少し修正しました)。単旋律で聴いた際に思い浮かべるコード進行よりも、意外と複雑な響きがするものだなあと感じた。また、すぐに音で聴いてみたい方のために、カンタータBWV293のmidiデータへのリンクを張っておく(こちら)。
第3楽章「ここで死にゆく!」は、カルロ・ジェズアルド Carlo Gesualdo di Venosa(1561? - 1613)の作曲による、有名なマドリガル集のうちの一曲、"8つのマドリガル集"の第4巻に所収された「Ecco, morirò dunque」をそのまま置き換えたものである。もともとは5つの声部からなる作品だが、もちろん「レシテーション・ブック」では4つの声部に再構成されている。また、アーティキュレーションに大幅な変更が加えられている。それから、調号が変化し、原曲から1.5音下げられている。
もともとの楽譜のPDFファイルは、このリンク先から参照可能(Werner Ickingのウェブサイト)。前半と後半に分かれたうち、前半部分のみが取り上げられていることがわかる。
第4楽章「グレゴリオ聖歌"おお、救い主なるいけにえよ"による瞑想曲」は…かなり調べたのだが、どうしてもわからなかった!!多くの作曲家が、同一タイトル「O Salutaris Hostia」で聖歌を作曲しており、マスランカ氏がそのうちどれを題材としたのか、調べきれなかったのだ。
これはどうやら、マスランカさんに訊いてみるしかないかも…。それか、どなたか知っている方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示願います。グレゴリオ聖歌を聴きまくれば、探し当てられるのかしらん。
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