2008/09/03

ミニマル・ミュージックへの憧れ(その2)

以前の記事の続き。

Philip Glass - Concerto for Saxophone Quartet
このブログでも度々話題にしている、ラッシャー四重奏団によって委嘱された、サクソフォン四重奏とオーケストラのための協奏曲。美しくクールな音世界が良い。全4楽章の緩急緩急という構成で、急速調の2楽章や4楽章では、プログレばりの複雑な変拍子も聴かれる。オーケストラ版のほか、四重奏のみで演奏可能なバージョンも存在している(実際に委嘱したラッシャーSQのテナーサクソフォン奏者、Bruce Weinbergerの依頼によるものなのだそうだ!)。日本での初演は3年前、雲井Qがおこなった。世界を見渡せば、数十回にわたる再演がされているようだが、充実した作品にも関わらず、国内での演奏回数は少ない。
第1楽章だけであれば、YouTubeで観られる(→こちら)。

オーケストラとの録音で言えば、ラッシャーSQとシュトゥットゥガルト室内管の共演盤が存在する(→こちら)。オーケストラは良いのだが、四重奏パートの音程感覚がすこし甘いのが難点か。四重奏版では、ラッシャーSQの旧録音ラッシャーSQの新録音、Tetraphonics Saxophonequartettの「The Invitation」というアルバム、オランダの四重奏団であるAmstel Saxophone Quartetのアルバムなどがある。

Michael Nyman - Songs for Tony
かつては秘曲中の秘曲という感じだったが、最近では有名になりすぎて「いまさら」という感じもするかな。私がイギリスのサクソフォンにはまるきっかけとなった曲だ。マイケル・ナイマンのマネージャーであり親友でもあるトニー・シモンズが1993年1月に癌で亡くなった際に、ナイマンが追悼の念を込めて書いた全四楽章の作品。友人を失ったやり場のない怒りから始まり、最後にはその死を現実として受け入れるまでの心情の変化が表現されているようにも思える。単純なモチーフの繰り返しの中に、強いメッセージ性を感じることができた。

なんと言っても、Apollo Saxophone Quartetの録音を第一に推す。これ以上の演奏は考えられない。ArgoというレーベルのCDで、手に入りづらい時期もあったが、最近は中古品が広く出回っているようだ。聴衆へのアピール度が高い第1楽章だけ録音されることも多いようであるが、やはり通して聴いてこそのこの作品であると思う。

Michael Nyman - Where the Bee Dances
ソプラノ・サクソフォンとオーケストラのための協奏曲。ミツバチの踊りからインスピレーションを得た、爽やかでスピード感のあるフレーズが折り重なる。単一楽章、17分ほどと長いが、次々に出現する主題が面白い。サックスとピアノのデュオ版も存在し、「Shaping the Curve」という名前が与えられている。

ナクソスから出版されているナイマン作品集。オケはまあ普通だが、ジョン・ハールの一番弟子とも言えるSimon Haramが演奏を担当していることもポイント高し。そしてなにより、安い!併録の「ピアノ協奏曲」は、ジェーン・カンピオン監督の映画「ピアノ・レッスン」の音楽を再構築したものだが、徐々に高ぶる感情が感動的である。

8 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ミニマル・ミュージックについても造詣が深くていらして、感激です。生まれてこのかた、ミニマル・ミュージックの話題で盛り上がったこと、皆無です(笑)。それにしても管楽器のための曲がこんなにあるんですね。私の知らない曲ばかりです。

kuri さんのコメント...

> tuckさま

ブログのほうで「Music for 18 Musicians」や「ヴェクサシオン」の記事を目にしておりまして、ミニマル・ミュージックがお好きなんだなと思いながら見ていましたが、やはり(^^;

管楽器の場合は、どうしてもブレスを取らねばなりませんので、ミニマルならではの陶酔感や没入感を得ることが難しいのですが、意外と作品は多いです。

ここで挙げたライヒ、ライリー、グラス、ナイマン諸氏のほかにも、ミニマル形式の作品はたくさんあります。それらについても、そのうちブログで書いていければと思っています。

匿名 さんのコメント...

私はフィリップ・グラスがいちばん好きです。彼は元々フルート奏者だったそうで、初期の作品はフルートをフィーチャーしたものが多いような気がします。グラスの影響で、大学入学してすぐにフルートやろうとオケ入部、挫折しました(笑)。

kuri さんのコメント...

おお!グラスですか。ピーター・グリーナウェイ監督が撮った「Four American Composers」のグラスのフィルムが、以下のリンクから観られます。もし興味がおありでしたら、ぜひ。フルート吹きだった、という話は始めて聞きました。

http://www.ubu.com/film/glass_greenaway.html

私のミニマル・ミュージックの切り口は、自分がサクソフォンを吹いていることもあり、どうしてもそこからのアプローチになってしまいます。その中でも好きなのはマイケル・ナイマンです。あの人間臭さ、俗っぽさに惹かれます。

グラスも、サクソフォンのために大量の作品を書いています。この記事で挙げた「四重奏のための協奏曲」の四重奏バージョンに関しては、音を出してみたこともあります。

匿名 さんのコメント...

「Four American Composers」はどっかで観た記憶があります。また観てみます。グリーナウェイ、大好きなんです。「コックと泥棒、その妻と愛人」がベストだと思っています。ナイマンのサウンドトラックが実に合うんですよね~。あの血肉色の映像美に(笑)。

グラスは「浜辺のアインシュタイン」からハマりました。1992年の天王洲のアートスフィアでの上演、感激でした。

kuri さんのコメント...

グリーナウェイ作品のサウンドトラックはたくさん聴きましたが、映像も観たことがあるのは、「The Piano」くらいなんですよね…。きちんと観ないと、いけませんね(^^;

ブログの「浜辺のアインシュタイン」の記事、拝見しました。名前くらいしか知りませんでしたが、興味をひかれました。

匿名 さんのコメント...

ドキュメンタリーもいいですけど、映画もいいですよ。グリーナウェイだけの世界です。

グラスは大音量による倍音効果をコメントしていて、実際、フィリップ・グラス・アンサンブルのコンサートは呆れるほどの音量だった、というレポートをどっかで読みました。私が観た「浜辺のアインシュタイン」はオペラだったので、そこまでは大音量ではありませんでしたが、気持ちよかったですよ〜。

kuri さんのコメント...

グリーナウェイの作品、ぜひ観てみようと思います。

大音量の倍音効果ってのは面白いですね。たまーにですが、ヘッドフォン使って、大音量でナイマンやライヒを聴いたりします(^^;陶酔感、没入感、ですね。