2008/07/12

ラランさんのCD発売記念コンサート

【ジェローム・ララン サクソフォンサロンコンサート】
出演:ジェローム・ララン、原博巳(以上sax)、森あゆみ(cl)、棚田文則(pf)
日時:2008年7月12日(土曜)15:00~
場所:アクタス6Fアンナホール
プログラム:
~第一部~
C.ドビュッシー「ラプソディ Rapsodie」
M.ラヴェル「ソナチネ Sonatine」
鈴木純明「スフルスティック Souffle-Stick」
~第二部~
A.カプレ「秋の印象 Impressions d'automne」
村上暁子「Trace」
P.ルルー「SPP」
F.プーランク「トリオ」
~アンコール~
M.ブルッフ「夜の歌 Nachtgesang」
J.S.バッハ「2本のフルートと通奏低音のためのソナタ」

ジェローム・ララン Jérôme LaranさんがCafuaレーベルにて吹き込んだアルバム、「Impressions d'automne(CACG-0119)」がこの7月に発売されることを記念しての演奏会。棚田文則氏がフランスから一時帰国してピアノを弾き、さらに原博巳さんや奥様でクラリネット奏者の森あゆみさんも参加して、大変豪華な演奏会となった。

開場時間ぴったりにアクタスに到着し、入り口のドアを開けると、ラランさんが一階に!久々の再会を喜び、今日演奏されるドビュッシーのことや、アンサンブル・ケルンのことなどについて一言二言を交わす。日本語がめちゃくちゃ上手くなっていてびっくり!開演時間までの間に、IBCサックスのKさんや、YWOのmae-saxさんなどにお会いする。アクタスにコントラバスサックス入荷したんかい!とツッコミを入れながら、会場へ。

ドビュッシー「ラプソディ(スペシャル・ヴァージョン)」。エリザ・ホールに献呈された曲の自筆譜の多くは、ニュー・イングランド音楽院に保管されている、ということが知られている。ラランさんはその自筆譜のコピーから着想を得、新たにサクソフォンとピアノのための版を書きおこしたのだという。普段聴きなれているヴァンサン・ダヴィッドの版と違って、ピアノの音運びやサクソフォンの旋律線がかなりの具合で変更されており、興味深く聴いた。

ラランさんのサクソフォンは、相変わらずのストレスフリーな良くコントロールされた音色。どんな曲想にもピタリと当てはまるのは、いまさら言うまでもなし。テクニック的な面も含めて、ある種現代におけるサクソフォンの理想形を体現している。テナーの音を久々に聴いたなあ。もしかして、「Mixtion」以来?

そういえば、棚田氏のピアノは実演で聴くのは初めてだ。アンナホールに据えられているピアノって、必ずしもベストな状態であるとは言えないものだと思うのだが、冒頭の持続音(なぜピアノであんな持続音を出せるんだ?)から始まり、多彩な音色を駆使してオーケストラのような音世界を構築する手腕。細かいところが少々弾き飛ばされていたところも含めて、フレンチ・ピアニズムって、こういうものを言うのかな。

ドビュッシーの「ラプソディ」に重ねて、ラヴェルの「ソナチネ」をピアノでやる、というアイデアは、師匠であるドゥラングル教授のアルバム「A Saxophone for Lady」にも見られる。原博巳さんの解説にもあったが、自由奔放なドビュッシーと、職人的なラヴェル、その対比を色濃く感じることができた。

第一部最後は、原さんの独奏。先日のリサイタルで聴いたばかりの、「スフルスティック」の再演である。初めて聴いたときは演奏者である原さんの印象が強く残ったが、さすがに二度目に聴くと作品自体の面白さが浮かび上がってくる。終演後に楽譜を少し見せていただいたのだが、なんだかもの凄い量の要素が詰め込まれている濃い楽譜にびっくり。

休憩後は、ラランさんの「秋の印象」から。実はこの曲けっこう好きで、てっきりオリジナルなのかなあ、と思っていたのだが、ボルドー音楽院のサクソフォン・クラス教授であるファビエン・シュラキ Fabien Chouraki氏がトランスクライブしたものなのだということ。ちょっと薄めのヴィブラートを隅々までコントロールした、「秋の印象」と呼ぶにふさわしい演奏だった。ラランさんと、奥様の森あゆみさんのデュエットで、「Trace」。タイトルの意味するところは、「何かここにあったはずのものを捜し求めて追跡している」、というようなことなのだと。ラランさんはテナーサックスに持ち替え、サブトーンをも多用しながらクラリネットとおもに不安定な世界を繰り広げていた。

ルルーのSPPは、たしか先日開かれたジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールでも二次の選択曲となっていたな。まさにスペクトル楽派の方法論的作曲の極地!冒頭のパルスが徐々に展開され、頂点へ向けて幾度も加速する。ラランさんも本領発揮というところかな(笑)。この曲の演奏が、一番面白かったかもしれない。

最後は、ラランさんがソプラノ、原さんがテナーでプーランク。サクソフォンでプーランクのトリオをやる、というアイデアは、珍しくはないが、国内で演奏される場合はソプラノ+バリトン、フランスで演奏される場合はソプラノ+テナーが多いかな、という気がする。もう何度も聴いた曲だけれど、やっぱり素晴らしい作品だ。演奏も、アンサンブルの妙が感じられて楽しい。一緒に行った友人も、「SPP」とプーランクが良かったと言っていたっけ。

アンコールに、マックス・ブルッフの「Nachtgesang」とバッハ。「Nachtgesang」は、トリオ・サクシアーナのCDを意識したのだろうか?

楽しかったなあ。終演後は、即売会にならんでCDとポスターをゲット。サインも頂く。CDのメッセージが、「Pour Kuri_saxo, First Saxophone Blog in the World, Jerome」だって!笑

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