2022/04/17

木下直人さんから(ミュール新発見盤)

木下直人さんから、マルセル・ミュールの新発見盤の復刻CDを送っていただいた(いつもありがとうございます!)。

Polydor Disque 522.956という型番が付いており、演奏者欄にAndre Messier et son orchestre "FANTINITZA", Solo de saxophone Marcel Muleの記載がある。


このAndre Messierという人(演奏者であり、収録曲のうち一方の作曲者でもある)は、映画音楽の作曲者として有名らしく、フィルモグラフィを調べてみると、The Forest of Farewell (1952)、The Orphans of Saint-Vaast (1949)、Love Around the Clock (1943)、L'Etrange Nuit de Noël (1939)、Le Château des quatre obèses (1939)、といった映画名が挙がる。

このSPには、Andre Messierの「Cendrillon Moderne: Valse-ballet」と、Andrew Walrenceの「Leger Tourbillon: Intermezzo valse」という2曲が片面ずつ収録されている。曲の素性などは、インターネット上でかなり調べてはみたのだが、どうも不確かな情報しか出てこない。また、Andre MessierとAndrew Walrenceが同一人物だと主張する情報もあり、なかなか情報を整理できなかったのが悔やまれる。もう少し調べてみたいのだが、純音楽というよりも、映画音楽的な方面から調べないと難しそうだ…。

内容は、極めてポピュラー寄りの、ダンスミュージックといった装い。ミュールのサクソフォンの軽やかさ、美しさ、気品は、頭一つ抜けていると感じる。ミュールはダンスバンドなどで演奏しており、ヴィブラートをその経験から取り込み、クラシック音楽へと輸入していったとされているが、こういった演奏を聴くと、余技として単純に軽々しく演奏していたわけではなく、ミュールは、天性・努力の賜物としての一級品の演奏を、どんな場へも持ち込んだのだなと、実感する。

SPからの明瞭な復刻は、木下直人さん独自のシステムによるもの。ノイズは敢えて無修正であり、しかしながら演奏そのものに耳を遣るとノイズは全く気にならないどころか、むしろ市販品のノイズ除去盤がリマスタリング段階でいかに無神経にノイズを消しているかが分かってしまい、木下さんの盤以外聴けなくなってしまう…。

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