昨日はドゥラングル教授のリサイタル@静岡音楽館AOI。本日はクローバーSQのリサイタル@東京文化会館。素晴らしい音楽に包まれてばかりで、そろそろバチが当たるのではないかと要らぬ心配をしてしまう。
【クローバー・サクソフォン・クヮルテット リサイタル】
出演:クローバー・サクソフォン・クヮルテット
日時:2012年10月14日(日曜)19:00開演
会場:東京文化会館・小ホール
プログラム:
J.S.バッハ/田村真寛「トッカータとフーガ」
D.スカルラッティ/M.ミュール「ソナタ」より
A.ベルノー「四重奏曲」
J.S.バッハ/田村真寛「ゴルトベルク変奏曲」
自由席ながら、東京文化会館の小ホールは見た目95パーセントのほぼ満席状態。日曜日の夕方とはいえ、この集客力には恐れ入るばかりだ。客席にはアマチュア・プロフェッショナル問わず、どこかで見たことがあるような方がいっぱい(須川氏が客席にいたのは驚いた)。
バッハの2作品はいずれも、メンバーの田村真寛氏の手によるアレンジ。締め切りに追われつつもじっくりと種々のアイディアを盛り込んだとのことで、最初に演奏された「トッカータとフーガ」も大変聴き応えのあるものに仕上がっていた。超高速フレーズをただ速いだけでなく快調に(嫌味にならずに)さばいていくセンスは、クローバーSQ独自のものだろう。音色の美しさは相変わらずで、特に弱音におけるコントロールはホレボレするばかり。
スカルラッティは、現代にあって取り上げる団体も少ないため、どのような演奏になるのかなと興味津々だった。"スカルラッティ2012"とでも表現できるようなもので、現代最高クラスの技術とバロック音楽の幸福な出会いを楽しむことができた。編曲者のピエルネが聴いたら、(良い意味で)驚くだろうなあ。
ベルノーはまさに佳演!このままCD作ってくださいと言いたくなってしまうくらいだ。第一楽章の、フレーズが現れては消えるその様を、音色の変化に着目しながら聴いていたのだが、その呆れるほどのヴァリエーションの豊かさに驚いた。第二楽章や第四楽章はクローバーSQの真骨頂だろう。普通ならばヒイヒイ言いながら組み立てるこの楽章を、まるで鼻歌のようにさばいてしまう。第四楽章もまさに同じイメージで、あの最終部の難所がまるで難所に聴こえないという(笑)。衝撃的だったなあ…。
休憩を挟んでバッハ。「ゴルトベルク変奏曲」というとつい先日雲井雅人サックス四重奏団がディヴィッド・マスランカ編の同作品を演奏したばかりだ(なぜか、曲が良くかぶるらしい)。アリア冒頭の空気感で客席を一気に引き込むことに成功し、そのままめくるめく変奏の世界に突入していった。細かい音符を並べたり、ダイナミクスの幅が広かったりという技術的な部分は当たり前のように完成されている。田村氏のアレンジは、音を足すなどして四声が効果的に使われているという印象を受けた。アリア以外の繰り返しは無しで、演奏時間はおよそ50分程度だったか。聴くからには、私自身が原曲をきちんと理解しておくべきなのだが、そこは勉強不足。
軽やかで、すっと心に入ってくるバッハだった。普段のクローバーSQの演奏で時折聴かれる尖った印象は身を潜め、端正さが出ていた。聞き手にとっては嬉しい誤算だったかもしれない。純粋なクラシック愛好家にこそ聴いてほしい、そしてバッハにも聴いてほしい、そんな演奏。
アンコールは「ゴルトベルク変奏曲」の第26変奏(たぶん)。心地良い余韻のなか、帰路についた。
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