WSCのリコーブースで購入したCD。先日ブログでも紹介した、Zzyzx Quartetのファーストアルバム。この団体の成立についてはそのブログ記事をご覧頂くとして、ここではCDについて詳細にレビューしたい。
非常に意欲的なCDだ。スタンダードかつおなじみとなっている高難易度の作品が3つ(エスケシュ、ゴトコフスキー、スウェルツ)、そしてZzyzx Quartetのために書かれたスペシャル・ピースが2つ。「Zzyzxらしさ」を最大限に表したアルバムだといえるだろう。もちろん、Zzyzx Quartetの面白さはこの範疇に収まるものではないのだけれど…懐の深さを知りたい方は、YouTubeの彼らのアカウント(StacyがアップしてたりStephenがアップしてたり)から各種動画を辿っていただきたい。
Thierry Escaich - Tango Virtuoso
Ida Gotkovsky - Quatuor
Piet Swerts - Klonos
John Leszczynski - They Might be Gods
Erik Norman - Suite
まず目を引くのはスウェルツの「クロノス」だろう。ちょっとサクソフォンをかじった事のある方なら「えっ」と思われる向きもいらっしゃるかもしれないが、実はこれ「クロノス」のサクソフォン四重奏版なのだ。アルトサクソフォンとピアノの版は有名だが、スウェルツ氏の元への四重奏編曲のリクエストが多かったらしく、2008年に出版されたとのこと。作曲家自身の編曲ということもあってか意外なほどにしっくりくるものとなっており、日本でも流行りそう。
Zzyzx Quartetのために書かれたレジンスキー(と読むのか?)の作品では、シリアスな響きの中に高い精神性や時折のシニカルさが織り込まれ…そのギャップが面白い。難易度は高く、生半可な気持ちでは登攀することもままならない作品ではあろう…。ノーマンの作品は、現代風のリズムを効果的に使った作品で、こちらも非常に高難易度。レジンスキーの作品よりはまだ取り組みやすいだろうか。
Zzyzx Quartetの演奏は、実に見事である。完全なテクニックを持ちながらすでにベテランの風格さえ漂わせ、あまりにスイスイ進んでいってしまうので、逆になんだか物足りないほどだ:-)どんな箇所においてもカルテットが持つ能力の80%程度で切り抜けていく、というイメージを受けた。それだけ完成度が高い、ということでもある。また、強奏においても決してがなりたてることはない。もしかしたら録音のせいもあるかもしれない。
ゴトコフスキー作品やレジンスキー作品での弱音の表現は一聴に値する。どういったレベルでのコントロールがなされているのか、想像も付かないほどだ。ある意味では、フランスの最新鋭のカルテットにも匹敵する能力ではないだろうか。ぜひライヴで聴いてみたいなあ(WSCの時はTsukuba Saxophone Quartetの2,3団体前に演奏していたため、リハーサルで聴けなかった)。
ちなみに、スペシャルゲストとしてゴトコフスキーの「四重奏曲」の第5楽章:カンティレーナにオーティス・マーフィ氏が参加、あの美しい旋律を吹いている。マーフィ氏ファンにとっては見逃せないのではないだろうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿