2012/01/10

木下直人さんから(アルルの女)

EMIに吹きこまれたアンドレ・クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団の「アルルの女」といえば、名盤として名高い録音である。私自身は中学生の頃からサクソフォンを吹いていながら、「アルルの女」に興味を持ったのは高校の頃…最初に入手したのはカラヤン&ベルリン・フィルの新録音盤だった。その後、同じコンビの旧録音も手に入れ、その2枚をよく聴いていた。実家にこのクリュイタンス&パリ音楽院管弦楽団のレコードがあったのを知ったのは、大学生になってからである。

一度目にしたら忘れることのない、LP時代から変わらぬジャケット(ちょっと不気味)。しかし、針を落として聴こえてくるのはとても快活な音楽である。「往年のフランスの…」という一言では片付けられない、生きた音楽がここにはあると思う。サクソフォンはギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の名手でもあったミシェル・ヌオー Michel Nouauxだ。甘美な音色、深いヴィブラートは、やはりヌオーのアイデンティティであろう。ちなみにヌオーは、1964年のパリ音楽院管弦楽団来日時に、ムソルグスキー/ラヴェル編「展覧会の絵」のサクソフォン奏者として同行している。このあたりの話は、Thunderさんのウェブページに詳しく書かれている。

これを聴くと、カラヤンの盤は重厚長大路線に走りすぎているような気もしてしまう。ただ、カラヤンの盤は何と言ってもその分厚い響きの中から閃光のように突き抜けてくるサクソフォンが魅力的でもあるのだ。もちろん、サクソフォンはダニエル・デファイエ。かなり遠慮がちに吹いているのが判るのだが、それでもあの音色を抑えることのほうが難しい、というものだろう。

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