ウェイン・シーゲル Wayne Siegel作曲、バリトンサクソフォンとコンピュータのための「Jackdaw」。この作品は、私が生まれて初めて聴いた「サクソフォンとエレクトロニクス」という編成の作品だ。私がまだ高校生だった頃に、Clarinet Classicsからリリースされた、論文付きの2枚組CD「History of the Saxophone(CC0040)」に、サクソフォン音楽変遷の一例として収録されていたのである。
数多くの「サクソフォンとエレクトロニクス」という編成の音楽の中で、このマイナーな作品がピックアップされているのは、少し不思議な気もするが、そこはきちんと理由があるようで。このCDをプロデュースしたのは、イギリスのサクソフォン奏者、スティーヴン・コットレル Stephen Cottrell氏なのだが、そのコットレル氏自身がそれまでにCDに吹き込んだことのある録音が、同一テイクで収録されていたようだ。
とにもかくにも耳にすることになったのだが、マルセル・ミュールの録音目当てで買ったこのCDで、最終的にたぶん一番聴いたのがこの「Jackdaw」と、もう一つLondon Saxophonicが演奏するWill Gregoryの「Hoe Down」だったと思う(ミュールの演奏は、収録数が少なく、復刻状態も悪かったので、わざわざこのCDを取り出して聴く必要もなかったのだ)。
最初スピーカーから鳥の鳴き声が流れてきたときは驚いたが、曲の持つグルーヴと、ミニマル風に繰り返される走句、そしてステレオスピーカーを効果的に利用した空間音響に惹き込まれ、10分間を一気に聴き通してしまった。あまりゲンダイオンガクという感じはせず、むしろ耳に心地よい環境音楽的な雰囲気をも持つ作品だと思う。
もとはバスクラリネットのために作られた作品だそうだ。聴き比べてみると、バリトンサクソフォン版のほうがゆっくりのような。楽器の特性に応じて、いろいろと変更されているみたいだ。作曲家、シーゲル氏の公式YouTubeアカウントで、一部を試聴することもできる。
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