2009/08/29

リヴィエの二重協奏曲(ミュール参加盤)

ジャン・リヴィエ Jean Rivierの「トランペット、サクソフォン、ピアノのための協奏曲」は、近頃急激に認知されるようになった感がある。神代修氏、雲井雅人氏、藤井一興氏のコンビでオクタヴィアのCrystonレーベルとしてリリースされた「SAXOPET!」の功績が大きいのだと思う。私自身は、実はずっと古くから聴いている録音があって、ロジェ・デルモットとダニエル・デファイエが組んで、ジラール指揮ORTFのフロントで吹きまくる演奏で、これはこれで大変趣があり、フランス風の明るい音色が聴かれ、大変な愛聴盤であった(最初は音だけ持っていたのだが、以前LPを木下直人さんに頂戴し、ずっと保管してある)。どちらもそれぞれの魅力があって、良いのだが、今回送ってもらった録音は、なんとマルセル・ミュールの参加盤である。

んー、これと同じレイアウトのジャケットを、どこかで見たことがあると思われた方も多いだろう。ミュールが参加したLondon(Decca)の「The Saxophone」シリーズと同系列の、「The Trumpet」というシリーズのVol.3なのだ!このシリーズは、どのLPもジャケットのレイアウトが同じで、それぞれが良く似通っているというわけ。トランペット独奏はルイ・メナルディ Louis Ménardiという人物で、ジャケット裏の解説によると、ソシエテ(パリ音楽院管弦楽団)とオペラ・コミークのプレイヤーだという記述があった。

Raymond Loucheur - Concertino (tp, 6cl)
Francis Poulenc - Sonate (cor, tp, tb)
Jean Rivier - Concerto (tp, sax, pf)
Johann Sebastian Bach - Gavotte en rondeau (tp, 6cl)

非常に面白いトランペットの作品集だ。レイモン・ルーシュールという人のオリジナル作品は、トランペットとクラリネット六重奏のために書かれたものだし、プーランクのソナタは金管三重奏のソナタだし(コルを吹いているのはルシアン・テヴェ Lucien Thévetだ!)、最後のバッハも、トランペットとクラリネット六重奏のためにアレンジされてしまってるし…。

リヴィエの「ダブルコンチェルト」は、サクソフォンのマルセル・ミュールに、ピアノはアニー・ダルコ Annie d'Arcoというスペシャルなメンバー構成。当時のフランス器楽界の最高峰を集めたような感じだ。技術云々とか、フランス風の輝かしい音色が云々とか、そのあたりのことはもう当たり前で(我ながらずいぶん耳が肥えたな)リズムや音が引き締まっており、音楽に常に推進力があるような印象。各個人が一流の独奏者というだけでなく、一流の室内楽奏者でもあるのだ。また、楽章によってスタイルが分離されて吹き分けられているのも聴きもの。一番楽しそうなのは、やっぱり第3楽章かなあ。曲に仕掛けられたトラップ、もといユーモアを、技術的にしっかりと表現しているのには舌を巻く。ちょっと急ぎすぎな気もしないでもないが(笑)。

ルーシュールという作曲家の名前は初めて聴いたが(サックスの作品は特に書いていないようだ)、この曲は室内楽的にも精密で破綻のない響きがして、興味深く聴いた。プーランクの「ソナタ」は、テヴェのコルが、コルらしからぬ怪しい動きをしていて面白い。どちらかというと、コルが主体の曲だものな。

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