ガブリエル・ピエルネ Gabriel Piernéの「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏 Introduction et variations sur une ronde populaire」をさらっている。いまさら言うまでもないほどの有名曲だし、CDなどで聴いた回数も多いのだが、合わせていても聴いていても、いつも違和感を感じる場所がある。
練習番号[13]と練習番号[17]は、短いインターミッションを挟んで同一形の変奏になっているのだが、その部分でなぜかバリトンパートの最初の二小節が、片方だけ歯抜けになっているのだ。練習番号[13]のほうはGのオクターヴ跳躍含めた3つの八分音符が見られるが、練習番号[17]のほうはその音符が3つ抜けているのだ。実際に聴いた印象だと、こんな感じ。同じ音形が出てきたときは、ちょっと物足りないと思いませんか。歯抜けの部分には実は音があり、出版準備のときにミスが起こったのではないか?と考えたわけ。
ということで、ディスク大賞を受賞したといわれるギャルド四重奏団の演奏(Gramophone L1033)を引っ張り出してきて聴いてみた。1936~7年くらいの録音で、ミュール、ロンビー、ローム、ショーヴェというメンバー。作曲が1936年(1930年説と1936年説と1937年説がある)、吹込みが1936~7年くらい、ピエルネが没したのが1937年の7月17日、Leducからの出版が1938年だから、作曲家と演奏家の間にかろうじてリンクがあっただろうという推測のもとに…である。
結果、やっぱり楽譜どおりでした(^^;ちょっと拍子抜け(笑)
ということで、この楽譜は出版のミスでもなんでもなく、ピエルネの意図がきちんと反映されたものである可能性が高い。そういうわけで、演奏に際しては特に他3パートの[13]と[17]のアーティキュレーションの違いをはっきり出す必要があるかな、と感じた。
しかし、作曲を1936年と仮定するならば、作曲からレコーディングの間には1年程度しかないな。作曲家と演奏家との間にお互いの意見を聞きあう機会がなかったとしたら…?つまり、晩年のピエルネがギャルド四重奏団の演奏を聴いておらず、初演時のミスに気づかなかったとしたら?うーん、まあその可能性もないわけではなく、考え始めたら結論が出なくなってしまいそうだ。なんとかして真実を確かめる術はないのだろうか。自筆譜を発掘すれば、少し手がかりになるのかなあ。自筆譜って、やはりLeduc社に保管されているのだろうか。
一度は結論を出したものの、考え始めてしまうと、やっぱり謎なままなのでした。むー。
----------
ところで、この記事を書くに際して、いろいろなピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」の音源をいくつか聴くこととなった。ギャルドQ、ミュールQ、デファイエQ、ドゥラングルQ(アドルフQ)、ルデューQ、アウレリアQ、フルモーQ、ディアステマQ、トルヴェールQである。
意外と持っていたんだーと思いながら、まるでお酒の飲み比べのように演奏を聴き比べていましたとさ。ハメを外していたり、天才的だったり、茶目っ気の塊だったり、キラキラしていたり、四重奏団によって本当に個性が出る曲なんだなー、と思う。私自身の刷り込みは、もちろんデファイエQの演奏なのだが、ギャルドQの余裕綽々な音楽にも改めて惹かれた。70年前の録音ということになるのか…すごいな。
0 件のコメント:
コメントを投稿