2008/05/04

クロード・ドゥラングルの生徒たち(その2)

[1992]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Stéphane Cros, Jean-Marc Pongy, Guy Rebreyend

Stéphane Crosは、mckenさんのページにてプロフィールを発見。ヴィラ=ロボス作品集に参加。ギャルドと並んでフランス国内では最も著名な吹奏楽団の一つである、パリ警視庁音楽隊に所属しているそうだ。

Jean-Marc PongyとGuy Rebreyendに関しては…おお、もしかして結成期のLes DéSAXés(デザクセ)のメンバーではないですか!?こちらのリンク先では、メンバーのひょうきんな写真を見ることができる。

[1993]
新作課題曲:
なし
1er prix:
Jean-Denis Michat, Jean-Charles Richard, Ludovic Molin

Jean-Charles Richardは、結成期のLes DéSAXés(デザクセ)のバリトンサックス奏者のようである。Jean-Charles Richardは、ジャズのほうで活躍中。YouTubeに演奏映像があった(→こちら)。

この年の卒業生の中で、日本での知名度一番と言ったら、やはりJean-Denis Michat ジャン=ドゥニ・ミシャ氏でしょう。公式ページはこちら。サクソフォン科の卒業後も、作曲・アナリーゼ・音楽史を学ぶためにパリ音楽院に残り、なんと1999年まで在籍したそうだ。現在では、リヨン音楽院のサクソフォン科教授。マスタークラスでの活躍も目覚しい。作曲家としても辣腕をふるい、師のドゥラングルもミシャの筆による作品を、自身のCDで取り上げている。

現在聴くことのできるミシャ氏のCDは2枚。以前ブログ上に載せたレビューの一部を、改めて掲載しておく。最近3枚目のアルバムを出したそうで、早く聴いてみたいなと思いつつも、まだ流通には程遠い状況のようだ。

タイトルは「Mendelssohn-Grieg(JDM001)」。ピアノのシルヴェヌ・ネリー=マリオン女史との共演盤で、メンデルスゾーンの「無言歌集」と、グリーグ「叙情小曲集」を、アルト/ソプラノサクソフォンで吹いてしまったというアルバム。

ヴィブラートも控えめで、派手さはまったく感じられないが、聴けば聴くほどにじわじわと歌心が伝わってきて感動的。私も買った当初は余り聴いていなかったのだが、ある日突然に魅了されてしまうディスク。ふとした瞬間のクレシェンドごときが、いちいち心に響くのだ。

Bach, Mozart, Schubert(JDM002)」。上記アルバムと同じく、ネリー=マリオン女史のピアノとの共演。こちらのCDには、なんとあのシューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」が入曲。録音が2002年4月とのことだから、雲井氏の「Saxophone meets Schubert(Alquimista Records)」よりも早いことになる(アルペジョーネをサックスで吹く、というアイデアそのもの的にはどちらが早かったのだろうか…それとも、もしかしてもっと昔から一般的だったのか?)。

全体のプログラムは、バッハ「無伴奏フルートのためのパルティータBMV1013」、C.P.E.バッハ「ソナタト短調BMV1020」、モーツァルト「弦楽四重奏曲ヘ長調K.421」、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ」。弦楽四重奏の作品をサックス+ピアノでやってしまうというアイデアには、まことに恐れ入るばかり。また、冒頭に置かれた無伴奏作品の、なんと説得力のあることか!これはやはり、アナリーゼの深さによるところが大きいのだろう。

[1994]
新作課題曲:
Alexandre Raskatov - Pas de deux
1er prix:
Laurent Blanchard, Nicolas Prost, Christian Wirth, Gilles Martin, Gilles Tressos, Jean-Yves Chevalier

新作の委嘱課題曲がラスカトフの「パ・ドゥ・ドゥ」!ヴィブラフォンとメゾソプラノ(女声)、ソプラノ&テナーサックス持ち替え。私が今まで聴いた中で、最も難解なサクソフォンのための作品、かなあ。この曲で優劣を付けるのは、演奏者にとっても審査員にとっても指導者にとっても酷だと思う。聴きたい方はドゥラングルの「The Russian Saxophone(BIS CD-765)」を参照していただきたい。

この年の卒業生は、現在でも演奏家として活躍が目覚しい。Laurent Blanchardは、リヨン音楽院出身ということだから、ミシャらの後輩であり、その後卒業するマレズューやマンクーゾの先輩なのだろう。セルジュ・ビション率いるリヨン音楽院から、大量の学生がパリ音楽院へと送り込まれていたのがわかる。それだけ、当時のリヨン音楽院の教育水準が高かったということか。

Nicolas Prost ニコラ・プロスト、Gilles Martin ジル・マルタン、Jean-Yves Chevalier ジャン=イヴ・シェヴァリエは、Quatuor Emphasisの奏者。Christian Wirth クリスチャン・ヴィルトゥとGilles Tressos ジル・トレソスは、ご存知Quatuor Habaneraの奏者(「いっしょに四重奏組もうぜー」なんていう会話が聞こえてきそう)。それぞれの奏者は、音楽院でサクソフォン科の講師として、後進の指導にもあたっている。

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