ピエール・ジョドロフスキ Pierre Jodlowskiは、フランスのトゥールーズ地方に生まれ、リヨン音楽院に学んだ作曲家。1971年生まれとの事だから、まだ30代の若手だ。1996年~1997年にかけてIRCAMに研修員として配属され、その後も同センターとの密な協力関係の中から、様々な作品を生み出し続けている(公式ページはこちら→http://perso.orange.fr/p.jodlowski%20/)。
テナーサクソフォンとライヴ・エレクトロニクスのための作品「Mixtion(混合)」は、パリ国立高等音楽院教授クロード・ドゥラングル Claude Delangleの委嘱により、同音楽院サクソフォーン科の卒業試験のために作曲された。作品のコンセプトは、「異質な素材が寄せ集められることで、全く新しいものが生み出されていく」というもの。16分間の演奏時間の中に、数え切れないほどの様々な音素材…人の声、生活騒音、シンセサイザー音、そしてサックスの音…が構造を成して詰め込まれている。
初めて耳にしたのは、2006年7月に大泉学園ゆめりあホールで行われた、ジェローム・ララン Jerome Laran氏のリサイタル「サクソフォーン旋風」。このときが日本初演だったとの事だが、氏の熱演と相俟って、大変感銘を受けたのを良く覚えている。コンサートの数ヵ月後、訳あってララン氏から送ってもらったCD「Paysages Lointains」にも収録されており、好んで聴いている。
一聴すると、なんだかワケノワカラナイ、ぐしゃぐしゃな音楽?に聴こえるのだが、何度か聴いていくうちに徐々に頭に曲全体の構造が刷り込まれてゆき…すると、実に面白い曲だ、ということに気付かされると思う。一見ばらばらな音素材が、一点の集約に向かって解体・合成を繰り返しながら突き進む様は、何度聴いても楽しいものだ。また、中核部分に出現する、ロックのような刻みのグルーヴ感なんて、実にかっこいいではないか。作曲家自身の言葉を借りれば、この作品には音素材の「錬金術」を垣間見ることができる。
演奏は、あらかじめ録音されたテープの部分と、PC上で動作するアプリケーションプログラムを利用しているリアルタイムでサクソフォーンの音にエフェクトをかけていくという、2つの部分が混在しているようだ。楽譜の練習番号に沿って、ペダル等を使ってアプリケーションの動作を切り替えていく、という演奏方法が一般的であるとのこと。Edition JobertもしくはUnited Music PublishersからCD2枚(DVD)+楽譜という形で出版もされているようだ。うーん、ちょっと欲しいかも。
2007年11月23日、ドゥラングル教授のリサイタル@静岡に、プログラムとして組み込まれている。日本ではまだまだ知る人ぞ知る、という感じの作品なので、まだ聴いたことのない方は、ぜひどうぞ。私も静岡まで聴きに行きたいぞ(行くかも)。
どーでもいいが、曲の始まりの部分がピンク・フロイドの「狂気」と似ているなあ…、と思うのは自分だけ?
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