ようやく届いた、ハバネラ四重奏団の新譜「L'engrenage(Alpha 518)」。最近は輸入販売元として株式会社マーキュリーが日本語解説をつけているので、今回のように少々難しいコンセプトによるCDでも、英語を読み解く必要がなくなったのが嬉しい。国内では「歯車のように ルイ・スクラヴィス&クヮチュオール・アバネラ シングルリードの饗宴!」というタイトルで発売中。
アルバム一作目はサクソフォーンのための現代作品、二作目はアレンジ+古典、次は何が来るかと思っていたらなんとルイ・スクラヴィス氏との共演モノか。一般向けではないけれど、私みたいなサクソフォーンのコアなファンにはかなり嬉しい路線なのかも。
スクラヴィス氏はヨーロッパジャズ界屈指の演奏家&作曲家。特に即興演奏のスペシャリストとして、かなり定評があるらしい。バスクラリネットやサクソフォーンを操りながらそのスーパー・テクニックでコード上のアドリブから完全即興までをこなすが、今回のアルバムもその能力が遺憾なく発揮された録音だ。
記譜を受け持つハバネラ四重奏団/即興を受け持つスクラヴィス氏という、相反するサウンドが不思議なグルーヴ感を作り出している、という印象を受ける。ショックの大きさで言えばスクラヴィス氏の独特な即興演奏が上だろうが、そういった場所にあってもスクラヴィス氏を立てながら自己主張を怠らないハバネラ四重奏団。強烈な奏者同士のぶつかりが大きな実を結んだということかな。
聴きづらい曲もあるけれど、ジャズのイディオムをベースとした曲もあったりしてなかなか楽しい。リゲティの「6つのバガテル」第三楽章の伴奏を下敷きに、スクラヴィス氏が延々と即興演奏を続けていく「東風」というトラックは、アルバムのコンセプトを示唆しているようで興味深く聴いた。これ、サクソフォーン奏者だけじゃなくてクラリネットの人にも聴いてもらいたいなあ。スクラヴィス「ダンス」なんて、バスクラ奏者垂涎の的ですよ、これは。
ただ、やはり即興演奏を楽曲の核とする音楽は、ライヴでその気迫やテンションを味わってこそのものだと思うのも事実。生で聴いたら、さらに圧倒的な演奏であることだろう。
…そういえば、帯に書いてあった紹介文がものすごかったので(笑)一部抜粋して掲載:
>二十世紀末に彗星のごとく世に現れ、離れ技的センスと柔軟きわまる音楽性でバッハからロマン派から現代の新作から何から何まで流々吹きこなしてみせる天変地異的サックス四重奏団「アバネラ」-この猛者ども、とある音楽祭でうっかりルイ・スクラヴィスと出会ってしまったのが運のツキ?~(中略)~五本の管はのたうちまわるわ、ビートを刻むわ、自由を謳歌するわ、這いずり回るわ、それもよどみなく、絶え間なく、抜け目なく、あられもなく…ジャンルの境など気にする気も起こらぬアドレナリン誘発系18トラック、はたして歯車は噛みあうのか、噛みあわないのか、麻薬的悪循環は止まるのか止まらないのか!?
なんかすごい。こんなテンポのいい日本語書いてみたいねえ。
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