最近、ダニエル・デファイエ氏に関する多くの記事・録音を、島根県にお住まいの方から送っていただいた。大変興味深く、かつ面白いものばかりだったので、今日から数日間にわたってブログ上でご紹介したい。送っていただいたF様には、深く感謝申し上げる次第。
1977年にデファイエ氏が来日した際に行われたバンドジャーナル誌上でのインタビュー。聴き手はなんと、当時東京芸術大学講師であった大室勇一氏(!)である。デファイエ氏が、当時の日本のサクソフォン界の印象、"現代作品"についての所感、サクソフォン・コングレス…などのことについて、短いながらも濃い内容で語っている。通訳は、おなじみビュッフェ・クランポンの保良徹氏。
そういえば、1977年というと、デファイエ氏時代のパリ音楽院サクソフォン科に、伝説的なクラスが存在した年である。その年の卒業生がなんと、クロード・ドゥラングル、ジャン=イヴ・フルモー、武藤賢一郎、てなもんで。インタビューの中でも、卒業生について触れられているな。
以下、少しだけ内容を抜粋したい。
大室勇一:(パリ国立音楽院のサクソフォーンのクラスについて、)教材として新しいものも使われますか?
デファイエ:ええ、それがよいものであれば。例えばシャルパンティエの「ガヴァンボディ2」のように。ただし私自身は二重音とか三重音といったような前衛的なテクニックについては美しさを感じられません。ある意味では私はもう過去の人間なのかもしれませんが、私の趣味によって美しいと感じるものを今後も守りとおしていきたいと思います。
と、デファイエ氏が自身のサクソフォン作品に関する美意識というか、そういった作品観について語り、さらに以下のように続いている。
デファイエ:ただし私の生徒については別です。彼らが卒業後に演奏家として生活していくためには。現代の作曲家が要求するようなテクニックを身につける必要があるわけで、それを勉強するよう生徒たちには勧めています。
ということで、"現代作品"についてまったく理解がなかったり、毛嫌いしているというわけではなく、自らの美意識に合ったものについてはレパートリーとして取り込み、さらに生徒にはきちんと同時代の作品を勉強させるよう、指導したということのようだ。デファイエ氏が自身の生徒にそう勧めるとは、少し意外な感じもしたが、サクソフォンの最高学府であるパリ音楽院の教授ともなれば、やはりそれだけ広い観点を持つことが必要なのだ、ということだろう。
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大室勇一:ジャズやポピュラー音楽におけるサクソフォーンについて、どう思われますか?
デファイエ:ジャズのサクソフォーンの音色については"ひどい"としか言いようがありません。良い点について言えば「リズム」でしょう。しかし、これもフル・バンドで五本のサクソフォーンがそろっていればの話で、現代の流行のように一人で自由に演奏する場合には、その点も期待できないように思います。
ばっさり(笑)。ヴィブラートを始めとするクラシックのサクソフォンのいくつかの要素が、ジャズのサクソフォンにヒントを得たものである…と考えると、このはっきりとした意見もまた、やや意外に思えた。当時一部で流行していた、フリージャズに対する意識というものがあるのかもしれない。
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