ジャック・デスロジェ Jacuques DESLOGESの名前は、木下直人さんからLPの復刻CD-Rを送っていただくまで恥ずかしながら知らなかった。改めて調べてみると、1970~1980年代のフランスを舞台にかなり活躍していた奏者であったようだ。
1954年に、パリ国立高等音楽院のマルセル・ミュールのクラスを一等賞を得て卒業(この年の課題曲がMarius Constant「Musique de concert」)。そのほか、室内楽、音楽史、和声、対位法のクラスでも一等賞を得ている。その後スコラ・カントルムで指揮法のディプロマ・コースに進んだ。1975年、ヴェルサイユ音楽院のサクソフォン科教授に就任、1982年からはフランス国家警察音楽隊のアシスタントコンダクターも務めていたそうだ。As.Sa.Fra.=フランスサクソフォン協会が出版した最初の会報の執筆者でもあったとか。へえぇ。
独奏者としてオーケストラとの共演、ソロリサイタルで活躍したほか、デスロジェ四重奏団 Quatuor de saxophones Jacques Deslogesを結成していたそうだ。たとえばあの秘曲中の秘曲、ジェラール・ガスティネル Gérard Gastinel作曲の「Gamma 415」は、この四重奏団に献呈されているのだそうだ!それは知らなかったなあ。デスロジェ四重奏団のメンバーは、以下の通り。ギャルドに所属していた奏者も散見されますな。
Jacques Desloges ジャック・デスロジェ, soprano sax
Michel Trousselet ミシェル・トゥルーセル, alto sax
Bernaud Beaufreton ベルナール・ボーフルトン, tenor sax
Michel Lepeve ミシェル・ルペーヴ, baritone sax
そのデスロジェの演奏が収められたLPである。editions français de musiqueというレーベルは、これはO.R.T.F.のお抱えレーベルということなのだろうか?表にデスロジェ四重奏団の演奏、そして裏にデスロジェのソロ録音(ケックランの練習曲)が収められている。ピアノを弾いているのは、アンヌ=マリー・デスロジェ Anne-Marie Desloges女史…ジャックの奥さんだろう。エコール・ノルマルを卒業したピアニスト、だそうだ。
[Face 1]
J.P.Beugniot - Piéces pour quatuor
C.Pichaureau - Rafflesia
R.Calmel - Rondo
[Face 2]
C.Koechlin - Études 1, 2, 3, 6, 8, 9, 10, 11, 13, 15
四重奏の作品は、和声やリズムこそ現代的であるものの、明らかに管楽器の扱いに長けたフレンチ・スクールの流れの中にあるもの。聴き始めると驚くが、フランス産の曲が好きな向きには、素直に受け入れられる響きだと思う。カルメルの「Rondo」は、「サクソフォン四重奏曲」の最終楽章なのだそうだ。全曲を聴いてみたいが、どこか録音している団体はあるのかな。デスロジェ四重奏団の演奏は、例えばギャルド四重奏団やデファイエ四重奏団などに比べると、全体のアンサンブルは比較的クールでスタイリッシュな印象を受ける。だが音色やヴィブラートは伝統的なフランス派のそれだ。
そして、デスロジェ演奏のケックランの「練習曲」。実はいままでこの曲をあまり好きになれなかった…「練習曲」という題名と、(ドゥラングル教授のVandoren盤の演奏の刷り込みによるのだが)「何を狙って書かれているか」が分かってしまう作品、というイメージから。だが、本盤のデスロジェの演奏はその先入観を払拭するものだった。
まるでデュクリュックかランティエあたりが書いたような、純粋にお洒落なフランス産の小品として聴くことができたのだ。速い曲、ゆったりな曲の構成は、なにかの組曲を聴いているようで、この曲がいかに音楽的に充実したものであるかが、良く分かる演奏なのだ。これは素敵だ。しばらくハマってしまいそうです。
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