2006/04/28

ハバネラQのCD、これはすごい!

昨日届きました(ありがとうございました)。ハバネラ・サクソフォーン四重奏団のCD「The 5th Osaka International Chamber Music Competition & Festa 2005(Yomiuri Telecast Corporation YC-0515)」。タイトルどおり、昨年5月に行われた第5回大阪国際室内楽コンクールの実況録音盤で、読売放送が限定盤として作成したディスク。一次予選からデザンクロ「四重奏曲」、ドナトーニ「ラッシュ」、二次予選から野平一郎「四重奏曲」、そして本選からグラズノフ「四重奏曲」、クセナキス「XAS」を収録。

何回か聴いてみたが、うーん圧倒的。ハバネラは今までセッションレコーディングのCDでしか音を聴いたことがなくて、丁寧な解釈をして丹念に音楽を運ぶような印象が強かったのだが、この録音では異常なテンションの高さのせいかまるで別の団体のように聴こえる。しかし実際に聴き終えると、これぞハバネラサウンドであるという強いアイデンティティを感じ取ることができた。現代にあって演奏にアイデンティティを感じさせる奏者ってほとんどいないのだから、やっぱりすごい四重奏団なのだなあ。

一次予選のデザンクロからまったく手抜きなしの全力勝負。しかし気負いを感じることはなく、純粋に良い音楽を奏でようとする意思が秘められているようにも感じる。音程が良いとかバランスが良いとかは当たり前で、決められた枠の中で各々が主張をしながらアンサンブルが動的に組み上がっていく。三楽章なんか音を間違えてるしタテだってあまり合ってないのに、ものすごくうまく聴こえる…なんだこりゃ。しかもめちゃくちゃ速い(笑)。

ドナトーニや野平はいわゆる「現代作品」。ドナトーニの冒頭、四本のサックスが極小音量でそれぞれのモチーフを奏でるところなんかも、ありえないほどの安定性。対して野平作品ではCDの音が割れるほど鳴らす、異常なまでのダイナミクス。一本一本の音色はぜんぜん違うのに、ユニゾンではオルガンでも聴いているようなパワーだ、うーむ…。

最後に向かって華麗なaccel.を魅せるグラズノフの終楽章、今まで聴いたどんな演奏よりもカッコイイし、加えて品格を湛えている。爆速のエンディングを聴き終えたあとに残る高揚感が心地よい。ロマン派にありがちなトリルや装飾音を多用したフレーズも、ここまで自然に…まるで四人の他愛のないおしゃべりを聞いているようだ。グラズノフに続いて最後を飾るクセナキス「XAS」はもう凄すぎて何がなにやら。現代作品ではあるものの、音楽は常に淀みなく流れていく。

大阪国際室内楽コンクールといったら言わずと知れた著名なコンクールの一つで、昨年は第一部門として弦楽四重奏曲、第二部門として木管アンサンブルの審査が行われたのだ。その第二部門で一位を得たのがハバネラ四重奏団だったというわけ。去年の今頃は大阪にハバネラとアルカンヌとスピリタスが一堂に会するということで、相当話題になっていたっけな。サクソフォーン奏者井上麻子さんのブログに、コンクールの様子が書いてあった(→http://asako-inoue.blogzine.jp/saxophonique/2005/05/post_d2e6.html)。井上さんは通訳としてハバネラ四重奏団に同行していたようである。ブログに貼り付けてある写真が楽しい。

今年の11/4に室内楽コンクール入賞者記念ツアーとして、東京文化会館小ホールにてリサイタル。絶対行こうと思います。

2006/04/27

現代音楽の魅力はどこに?

サクツェルツェットの演奏会、大学の用事&練習のため行けなくなってしまった。このまま行くと次は雲井カルテットの定期演奏会?5月か6月中に何か演奏会を聴きたいなあ。しかしつくばエクスプレスが完成したといっても、時間距離として東京まで1時間は余裕を持っておかなければいけないわけで、「つくば=陸の孤島」感は相変わらず否めない(笑)。

西村朗氏のサクソフォーン協奏曲「Esse in Anima(魂の内なる存在)」を収録したディスク(Camerata CMCD-28058)を聴いてみた。飯森範親指揮ヴュルテンベルク・フィルの演奏で、サクソフォーンソリストは須川展也氏。大学の図書館に最近入荷したものだが…これを借りていく人なんているのか(苦笑)。

さてさてお目当てのサクソフォーン協奏曲、楽器の特殊奏法を極限までひきだしたソロ・パートで、微分音やフラジオは当たり前、須川さんお得意のポルタメントやスラップまでをこれでもかとばかりに披露する長大なサックスのモノローグに、時折オーケストラのクラスターが鳴り響くという曲想。ソロは圧巻。出版されているようだが、須川さん以外に吹ける奏者は世界に何人いることやら。オーケストレーションとしては打楽器の使い方がかなり工夫されているようで、スピーカーを通して聴こえる煌びやかなサウンドが印象に残る。管は全体にシンプルな音色、難所でのきっちりしたアンサンブルも素晴らしい。

で、本題。

最近考えるのだが、特定の「現代曲」に潜む魅力ってなんだ、と。超絶技巧が~とか、ではなく“自らが特定の現代曲を繰り返し聴くようになる原因”て何なのだろうか。気に入った調性音楽だったら、「このメロディが好きだー」、とか曲の好きな部位をはっきりと意識できるのに。もちろん個人に限った疑問なので自己意識の掘り下げになってしまうが、この西村氏の協奏曲は、なんだかあまり魅力を感じない。

私はそれなりにサックスの現代音楽を良く聴く。もともとはフランスのアカデミズムにのっとった楽曲入りのCDを買っては、この奏者が好きだなあとか楽しんでいたクチなのだが、高校のころ知ったベリオ「セクエンツァIXb」から、突然にサックスに限らず無調性の楽曲に興味を持ち始めるようになった。サックスの特殊奏法などを知るようになって、サックスの現代作品を様々に聴いた。日本人作曲家によるサクソフォーン現代作品が収録された「Japanese Saxophone(BIS CD-890)」は今でも好きだな。好みの曲は次第に増え、好きな曲は飽きずに何度も何度も聴いたものである。

いろいろなサックス現代音楽作品に接してきたが、いつのまにか良く聴く曲とそうでない曲は自分の中で分かれている。うーん、不思議。同じく無調性のサクソフォーン協奏曲である伊藤康英「協奏曲」はものすごく良い曲だと思えるし、実際好きなのになあ。

2006/04/22

松雪先生のCD

ようやく聴きました、松雪明先生のアルバム「ファンタジー(Aurora AUCD-4)」。所属していた吹奏楽団では大変お世話になった(だから「先生」なのだ)からレッスンの合間に先生の音を聴く機会も多かったのだが、こうしてまとまった形として曲を通して聴くのは去年の門下発表会でのベダール「ファンタジー」以来かも。いやあ、先生の誠実で謙虚な人柄が現れた素敵なアルバムだ。こういう演奏を聴くと、音楽って奏者の人となりを率直に表現しているのだなあと強く思う。

一般には、やはりアルモ・サクソフォーン四重奏団でのテナー奏者としてのイメージが強いだろうか。私自身もテナーをメインに吹いているということもあり、アルモのディスクの端々で聴かれる充実した音色や、TVでも放映された福岡国際音楽祭でのデュトワ指揮「ボレロ」の演奏などは鮮烈な印象がある。とても明るいのに、決して軽薄というイメージを与えないその音は、「クラシックのテナーサクソフォーン」というジャンルにピタリと当てはまるように感じている。

このディスクではソプラノとアルトのみを使用。どんなフレーズにおいてもその美しい音色とあいまって「趣味の良さ」が前面に押し出されているように感じる。本来鋭い音を出すソプラノでも、まるでアルトのようにふくよか。エマニュエル・バッハのフルートソナタはまるでオリジナルのように響く。イトゥラルデの作品では意外なノリの良さも聴かせてくれるし、ムチンスキーには強い意志を感じることができた。アンコール?として配置されているピアソラ「オブリビオン」の美しいこと!うーん、すごい先生に指導していただいていたのだなあ、と再度実感。ぜひ松雪先生のテナーにしか触れたことのない向きには聴いてみていただきたい。

スーパーテクニックから「うた」までを幅広く堪能することができる。しかしやはり特筆すべきは音色、ひたすらに美しい。

変奏曲によせて

西洋には「変奏曲」がなんと多いことか。ともすれば考えられないほど長大で、日本人の感覚からすれば退屈とも思われる変奏曲がいくつもあるだろう。巷にある傑作変奏曲は数知れないが、バロックから古典派の時代にかけてヨーロッパの貴族社会を席巻したロココ趣味の風潮がそんなアイデアを生み出したのだという。なるほど、単純な主題を着飾って派手に見せる「変奏」はまさに「ロココ風」音楽と言ったところだろう。

さて、変奏曲といえばコレルリ「ラ・フォリア」、バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番終曲『シャコンヌ』」や、モーツァルト「『ねえ、お母さん聞いて』の主題による変奏曲」などは有名だろう。しかしもっとも人気があるものといえば、やはりパガニーニ「ヴァイオリンによる24のカプリス」の第24番ではないだろうか。カプリス第24番はそれ自体が主題+11の変奏+終曲で構成された無伴奏ヴァイオリンのための超絶技巧変奏曲だが、後の作曲家たちは、この主題を使用してさまざまに作品を作り上げてきたのだ。

ラフマニノフの「狂詩曲」やリストの「超絶技巧変奏曲」、ブラームスの「変奏曲」など一般に知られたもの以外にも、吹奏楽のためのジェームス・バーンズ「幻想的変奏曲」やロイド=ウェーバーによるチェロとジャズバンドのための「変奏曲」など比較的マイナーな作品があってと面白い。主題が良くできているため中途半端な変奏でもかなり聞こえが良いのは皮肉だが(ラフマニノフと他を比べちゃイケマセン)それぞれの音楽家たちのオリジナリティが溢れている。

ネット上にもいくつかあったのだが、そのうちのお気に入りを紹介。アメリカの作曲家ロバート・ムチンスキーによるピアノソロのための「Desperate Measures」というパガニーニ主題を使用した変奏曲。出てくるコードが不意にジャズ風だったりしてカッコイイ。こちら(→http://www.soundclick.com/player/single_player.cfm?songid=3069152&q=hi)で全部聴けるので、ぜひどうぞ。あとオリジナルをロック風に打ち込みしたものも発見(→http://www.archive.org/download/Caprice24/Paganini_Caprice24.mp3)。うーん…?

2006/04/20

メトード・ソルフェージュ

音楽之友社の四月の新刊で伊藤康英先生が書いた「メトード・ソルフェージュ」という教本が4/11に発売された。予てより先生から案内を頂いていて、思い立って買ってみたところ充実した内容に驚いた!

言ってしまえばただのソルフェージュの教本なのだが、とにかく薄い。四六版で80ページしかない。この80ページに文字通り”ぎっっしり”理論から実践まで詰め込まれている。大きく三部(読譜・リズム・視唱)に分かれていて、どの章からはじめてもすぐ実際の現場で活用できそう。

例えば吹奏楽をやる上で初見能力(読譜)の強さや、リズムの正しさは重要なポイントの一つであると考えるが、まさにそういった「楽譜を正確に音にする」という作業を手助けしてくれる本だといえよう。分類としては声楽用だということだが、これを声楽だけとはもったいない!楽器の初見能力を伸ばしたいというような単純な動機(私はそうです)でも、手元に置く価値のある本だと思う。ハ音記号がすばやく読めないトロンボニストの方とか、一冊いかがですか?税込1,260円。

 詳細はこちら(音楽之友社内のページから→http://www.ongakunotomo.co.jp/catalog_nomenu/detail.php?Code=502250)。

大学図書館のCDコーナー

ハバネラ四重奏団の大阪国際室内楽コンクールライヴ盤があるという情報を教えていただいた。少数限定盤だそうで、残り数枚のところに滑り込んだようだ。あぶないあぶない。到着が楽しみ。

大学の図書館のCD架には、それこそ様々なジャンルのクラシックCDがある。フルトヴェングラーの「第九」から、なんとマルセル・ミュールの「コンプリメンタリー」までと網羅するジャンルは管弦楽、協奏曲、室内楽曲、歌曲、器楽曲と幅広い。そんなCDたちはいまでも増え続けているのだが、新入架CDの選考基準がナゾだった。それなりに良い演奏のCDが並んでいるし、月に一回は入架するし…今日眺めに行ったところまた何枚か入架していたので、どうしても気になって職員の方に尋ねてみたところ…「どういうふうに選んでいると思いますか?」と逆にクイズを出されてしまったのだった。

答えを聞いてみると「なるほど!」という感じ。「レコード芸術の推薦盤を収集している」とのお答えだった。たしかにこれならば幅広いジャンルの、よい演奏のCDが無駄なく収集できるというものだ。まあ玄人向けディスクを嗜好する私としては、少々物足りないという気もするが(笑)、音楽学部がない大学の図書館にしては良質なほうだと思っている。有名曲を聴きたいときは迷わずまず図書館を探すしなあ。

…今日はNaxosの日本人作曲家選集から「黛敏郎作品集」&ギィデ交響吹奏楽団演奏のベルリオーズ作品集を借りてみた。

2006/04/14

メリロ「Aurora」

スティーヴン・メリロの吹奏楽曲で「Aurora」という作品がある。クリコフスキー監督の映画「Aurora」に寄せられたサウンドトラックから三曲を抜粋し、演奏会用に組みなおしたもの。図書館でなにわオーケストラルウィンズ2005のCDを見つけ、久々に聴くことができた。ちなみにこのCD、ライブならではの傷が多い(アンコールなどは大笑い)ものの、すばらしく純度の高いサウンドが聴ける甲種オススメ吹奏楽盤。

さて話を戻して、この「Aurora」の第三楽章「Of Valour in the Void」が個人的にすごく好きな吹奏楽曲なのだ。たぶん主題が好きとか雰囲気が好きとかなのだろうが、私的にツボにハマリまくっていて、初めて聴いたときからずっと好きな曲なのである。

例えば最初にホルンが吹くHeroic, from a Distanceのソロは「栄光の主題」(と勝手に命名)と言ったような誇り高さがあふれるメロディだし、オーボエがSuddenly Gentle...から奏でるのは「未来への不安」と言ったところ。直後にアルトサックスが受け持つメロディも「憧れと悲しみ」を連想させる響きで…例えて言えば卒業式の日に感じる複雑な心境にぴったりではないか!?

曲全体を支配する妙に荘厳な雰囲気といい、まるで卒業生退場のときに流れるバック・ミュージックのよう…そうだ、そうに違いない!これは卒業式のテーマだ!…と決め付けて以来、聴くたびにホロリとしてしまう(とは大げさか)素敵な曲です。メリロの作品の中で唯一好きなんだよなあ。ほかの作品はそれほど聴かないのになあ…不思議。スコアがStormworksのページからフルバージョンで参照できる(PDFファイル。印刷不可→http://www.stormworld.com/music/catalog/pdfmusic/aurora.pdf)。

2006/04/09

ひさびさ

ずいぶん久しぶりに楽器を吹いた。意外と吹けて一安心。しばらく予定はないが、ちょこちょことさらっていくつもり。面白そうな楽譜もあることだし。

あれ、二食コンパでの演奏って(私信)?

2006/04/07

Saxcherzetコンサート情報

今年も洗足学園音楽大学サックス科教授陣による「Saxcherzet(サクツェルツェット)」の演奏会が開催されるようだ。冨岡和男氏、服部吉之氏はじめとする日本サックス界の重鎮から、原博巳氏など比較的若い世代の奏者までが組む、超豪華サックスラージアンサンブル。去年聴いて相当たまげた記憶があるから、今年も行こうかと思っている。学生1000円(!)とお値段も破格。プログラムもミヨー「フランス組曲」(!)やラヴェル「ボレロ」など。詳細を以下に転載。

・Senzoku マスターズコンサート
スプリングコンサート 管楽器の名手達 「Saxcherzet」
出演:冨岡和男、服部吉之、池上政人、宗貞啓二、岩本伸一、大城正司、大和田雅洋、二宮和弘、原博巳
4/26(水)18:00開場18:30開演
洗足学園前田ホール
一般前売り2,500円 当日3,000円 学生1,000円
プーランク「『仮面舞踏会』によるカプリッチョ」、ミヨー「フランス組曲」、ラヴェル「ボレロ」他
http://www.senzoku.ac.jp/info/cst_info/060426.html

神奈川県にある洗足学園、つくばからは少々遠いのが難点。

雲井雅人サックス四重奏団のプログラムもちょうど今日公開されたようで…ピエルネ「民謡風ロンドの主題による序奏と変奏」を含む、「民謡」をテーマにしたと思われる意欲的な選曲。

そろそろ詳細が出揃ってきたが、今年はいくつのコンサートが聴けるだろうか。