ようやく聴きました、松雪明先生のアルバム「ファンタジー(Aurora AUCD-4)」。所属していた吹奏楽団では大変お世話になった(だから「先生」なのだ)からレッスンの合間に先生の音を聴く機会も多かったのだが、こうしてまとまった形として曲を通して聴くのは去年の門下発表会でのベダール「ファンタジー」以来かも。いやあ、先生の誠実で謙虚な人柄が現れた素敵なアルバムだ。こういう演奏を聴くと、音楽って奏者の人となりを率直に表現しているのだなあと強く思う。
一般には、やはりアルモ・サクソフォーン四重奏団でのテナー奏者としてのイメージが強いだろうか。私自身もテナーをメインに吹いているということもあり、アルモのディスクの端々で聴かれる充実した音色や、TVでも放映された福岡国際音楽祭でのデュトワ指揮「ボレロ」の演奏などは鮮烈な印象がある。とても明るいのに、決して軽薄というイメージを与えないその音は、「クラシックのテナーサクソフォーン」というジャンルにピタリと当てはまるように感じている。
このディスクではソプラノとアルトのみを使用。どんなフレーズにおいてもその美しい音色とあいまって「趣味の良さ」が前面に押し出されているように感じる。本来鋭い音を出すソプラノでも、まるでアルトのようにふくよか。エマニュエル・バッハのフルートソナタはまるでオリジナルのように響く。イトゥラルデの作品では意外なノリの良さも聴かせてくれるし、ムチンスキーには強い意志を感じることができた。アンコール?として配置されているピアソラ「オブリビオン」の美しいこと!うーん、すごい先生に指導していただいていたのだなあ、と再度実感。ぜひ松雪先生のテナーにしか触れたことのない向きには聴いてみていただきたい。
スーパーテクニックから「うた」までを幅広く堪能することができる。しかしやはり特筆すべきは音色、ひたすらに美しい。
0 件のコメント:
コメントを投稿