サクソフォンがオーケストラの中で大活躍するジャック・イベール「遍歴の騎士」。商用録音として流通しているものは、ジョルジュ・ツィピーヌ指揮フランス放送国立管弦楽団/合唱団による1955年のモノラル録音、そして、ジャック・メルシェ指揮ロレーヌ国立管弦楽団による2014年のステレオ録音、しか存在しなかった。前者は、間違いなく本作品の決定盤であり、その演奏の凄さについてはブログで取り上げたこともある(サクソフォンはマルセル・ミュール)。
最近知ったのだが、同作品の新たな商用録音が最近リリースされた。ハンス・ロスバウト指揮南西ドイツ放送交響楽団バーデン=バーデンの、1953年の録音である。ここ数年にわたり「SWR Music」「SWR Classic」として、所蔵音源の大量の復刻を実施している南西ドイツ放送のレーベル発の録音だ。「遍歴の騎士」はイベールの作品の中でも際立って優れた作品であると個人的に思っており、喜ばしいこと…のみならず、その演奏内容も素晴らしいのだ。
特に急速部においては、スパニッシュな響き、シンコペーションを多用したリズムのキレなど、通常のクラシック作品とは違うスピード感が求められる作品である。フランス国立管の、ツィピーヌのアグレッシブな音運びはそれを見事に体現しており、決定盤といえるものだが、ロレーヌ国立管の演奏には不満があった(遅いし、響きがボンヤリしている)。
この、南西ドイツ放送響の演奏は、さすがにフランス国立管ほどではないにしろ、そういった推進力を十分に携えた演奏であり、フランス国立管の演奏とともに、自信をもって他者に薦められる内容だ!
サクソフォンは誰だろうか。音からすると、フランスの流派とは違うようにも思えるし、ただ、ラッシャー派という感じでもない(この時期、すでにラッシャー氏はメインの活動拠点をアメリカに移していた)し、ブムケ氏にしてはさすがに時代が合わない。もしかしたらクラリネット奏者が持ち替えで吹いている、等かもしれない。
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