2012/05/07

サクソフォン×ピアソラといえば!

1990年代のクラシック音楽界でのピアソラ・ブームをきっかけとして、サクソフォンの世界でも数多くのアレンジが出てきた。見渡せば、あのアルバムにも、このアルバムにも、アレンジ物といえばまずピアソラ!という状況で、若干食傷気味にすらなってしまった向きも多いことだろう。良い演奏であれば問題ないのだが…時には何も考えないままアレンジし、そのままクラシックのスタイルで吹いてしまいました、というアルバムもあり、逆にピアソラを冒涜しているんじゃないかと思えたほどだ。そんなアルバムをいくつも聴いたせいか、いつしか自分で演奏することも避けるようになってしまった。

とは言え、ごく一部のアルバムに限って言えば素晴らしい演奏を聴くことができる。その中でも、飛び抜けて良いと感じるのは、Henk van Twillertの「Tango(Movieplay Classics SMP 850453)」というアルバムだ。ザルツブルグ・チェンバー・ソロイスト・クインテット、そしてヴァイオリンのSonja van Beekをゲストに迎え、バリトンサクソフォンで共演してしまったというから驚きだ。このアルバムは、私がこれまで入手したサクソフォンのアルバムのなかでも10本の指に入るもので、強烈なテンションとテクニック、ヴァイオリン・ソロとバリトンサクソフォン・ソロの良さを引き出したアレンジ、録音の良さなど、良い点を挙げていけばキリがない。

1. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Libertango リベルタンゴ
2. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Solitude 孤独
3. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Verano Porteno ブエノスアイレスの夏
4. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Novitango ノヴィタンゴ
5. Huizinga, Henk ヘンク・ホイジンガー - Desierto 砂漠
6. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Reminiscence 想い出
7. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Close Your Eyes & Listen 目を閉じて、聞いて
8. Huizinga, Henk ヘンク・ホイジンガー - Chubasco にわか雨
9. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Years of Solitude 孤独の歳月
10. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Violintango ヴァイオリン・タンゴ
11. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Deus Xango ジャンゴの神
12. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Whisky ウイスキー
13. Piazzolla, Astor アストル・ピアソラ - Undertango アンデルタンゴ

冒頭の「リベルタンゴ」でのはじけっぷりにも驚くが、ゆっくりな曲ではさらに濃密な時間が流れる。美しい曲、激しい曲を交えながら、曲は進み、最後の「孤独の歳月」からの5曲の流れは、凄すぎる。最初聴いたときは「アンデルタンゴ」の後にブラヴォーを叫びそうになったものだ。

YouTubeに「リベルタンゴ」の演奏がアップされていたので、貼り付けておく。良さがイマイチ伝わらないかもしれないが、この緊張感がアルバム全編を通して続く。セッションレコーディングということで、完成度はCDのほうがずっと高い。

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