サクソフォニー関東第2回演奏会、ご来場いただきありがとうございました。サクソフォニーのことは、明日書く予定。
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3月の地震が起こった頃から仕事が増え、平日に開催される演奏会を聴きに伺えないことが良くあった。原博巳さんのリサイタルや、Keiさん&@君のデュオコンサートなど…。最近はようやく落ち着いてきたものの、やっぱりまだまだ仕事のほうが忙しいことは変わりないが、今日はなんとか伺うことができた。
ケネス・チェ Kenneth Tseさんと須川展也さんのデュオコンサート。ピアノはもちろん、小柳美奈子さん。須川さんと小柳さんの国内での知名度は言うまでもないが、ケネス・チェさんはどうだろう?もしかしたら、「Stellar Saxes(Crystal Records)」が吹き込まれるまでは、ごく一部のサクソフォン・マニアの間でしか知られていない存在だったかもしれない。私はmckenさんのサイトを通じてチェ氏のことを知り、昔から注目していたが、まさか2011年にもなってライヴを聴けるとは思わなかった。しかも須川展也さんとの共演ときたもんだ!
【Stellar Saxes~ケネス・チェ&須川展也 デュオコンサート~】
出演:ケネス・チェ、須川展也、小柳美奈子
日時:2011年6月13日(月曜)19:00開演
会場:銀座ヤマハホール
プログラム:
~第1部(ソロステージ)~
P.スウェルツ - ラヴェルの墓(チェsop、小柳美奈子)
B.コッククロフト - Rock Me!(チェalt)
E.グレッグソン - サクソフォン協奏曲(須川展也alt&sop、小柳美奈子)
~第2部(トリオステージ)~
J.B.サンジュレ - デュオ・コンチェルタント(須川展也sop、チェalt、小柳美奈子)
加藤昌則 - オリエンタル(須川展也sop、チェalt、小柳美奈子)
長生淳 - パガニーニ・ロスト(須川展也alt、チェalt、小柳美奈子)
~アンコール~
J.ラフ - カヴァティーナ(須川展也alt、チェalt、小柳美奈子)
銀座ヤマハホールは、確か初めて入る場所。ビルの中ということでアクタスのアンナホールやドルチェ楽器東京のような会場を想像していたのだが、全くそんなことはなく、7階から9階までをぶち抜いた立派なコンサートホール(333席)だった。室内楽を聴くには、とても良い規模だと思う。会場に着いて辺りを見渡せば、あっちにあの人が!こっちにあの人が!状態。知り合いも多し。なんだかこの感覚も久しぶりだなあ。
演奏は、スウェルツの作品から始まった。ラヴェルの「ピアノ協奏曲」をモチーフにした、もともとはピッコロとピアノのために書かれたというが、作品名も、もちろん作品自体も初めて聴くものだった。特に第2楽章の"耽美"というキーワードがすぐに思い浮かぶ曲想など、「ピアノ協奏曲」の第2楽章との共通点を強く感じる。チェ氏のソプラノサクソフォンは…これがまた美しいのだ!音量は控えめながら、響きがあり得ないほどに充実しており、サクソフォンの美しい音色の究極形のひとつと言えると思う。テクニックも驚くべきもので、さすがにフラジオのコントロールやタンギングの見事さでは最近は驚かなくなってきたが、それにしてもこの美しい音色で超高速のフレーズを駆けずり回られると、興奮してしまう。
そして、小柳美奈子さんのピアノの素晴らしいこと!EMIのCDを聴いているだけでは絶対にわからない、絶妙なニュアンスのコントロールと、美しいタッチに惚れた。ピアノや、ホールのせいもあったのかもしれないけれど、改めてそのウマさに惚れた。
簡単なMC(通訳は小柳美奈子さんでした)を挟んで、2曲目の「Rock Me」。バリー・コッククロフトは、無伴奏でいくつもの面白い作品を発表しており、「Beat Me」という作品もあり、こちらもなかなかかっこ良いが、これは杉原真人氏が昨年杉並公会堂で演奏していた。なんとサングラスをかけて暗譜で登場したチェ氏、照明も効果的に使いながら、客席の集中力を巻き込んで恐ろしいほどのテンションで吹ききってしまった。これは実に盛り上がったなあ…。今後、日本で流行ってもおかしくないかもしれない。ちなみに、YouTubeにはチェ氏の演奏がアップロードされているので、気になる方はチェックを(→http://www.youtube.com/watch?v=eSoOSmWaco8)。ただ、ライヴで聴いたときの、迫ってくるような印象とはだいぶ違うかも。
続いて須川展也さんが登場。今年の管打楽器コンクールの本選課題曲にもなっているエドワード・グレッグソンの「サクソフォン協奏曲」である。ケネス・チェ氏であれだけ盛り上がっていて、さてグレッグソンがどう来るか、と思いきや、やっぱり須川さんは須川さんだった。その前になにが演奏されていようとも、演奏開始わずか20秒で一気に聴衆を"スガワ・ワールド"へと一気に引きずり込んでしまうカリスマ性。照明も効果的に使いながら、最後の爆発までテンションをコントロールし、盛り上げていった。ちなみにグレッグソンの「サクソフォン協奏曲」は、作品としては、数あるサクソフォン協奏曲の名曲と呼ばれるものと比べると曲としての充実度は劣る気がするが、やはり須川さんの演奏で聴けば、どういう響きと構成が想定されて書かれた作品であるのかがよく判る。楽譜だけなぞれば、管打楽器コンクールの本選課題曲としては役不足だろうが、これをどうやって聴かせるか、というところにミソがあるとするならば、実はすごく考えられたセレクトなのではないか…と、そんなことを思った。
後半は、お待ちかねのデュエット・ステージ。まずはサンジュレだが、これがまた最初から飛ばす飛ばす。室内楽的な部分は、なんだかその場で合わせている感じ…と思っていたら、演奏のあとに「さっきの合わせはなんだったんだろう、っていうくらい、楽しんで演奏してしまいました」という須川さんのMCが(笑)。やっぱり:-) 古典的な端正さ、ピアノも交えての室内楽としてのトリオ、とはかけ離れたところにある演奏だったが、これはこれで楽しい!サクソフォンの音楽、として聴くならば、これ以上の演奏は決して聴くことができないだろう!聴いていて、幸福感を噛み締める感じ。
「オリエンタル」は、「Stellar Saxes」の中でも一番好きな作品だ。加藤昌則さんという作曲家の名前は最近よく聞くようになったが、作品を聴くと人気の理由もよく判る。キャッチーでクール、そしてとんでもなく難しい!5音音階的なフレーズを元に、ジャズのテイストを織り込みながら8分間駆け抜ける作品だが、実にカッコ良く、爽快そのもの。緊張と解放がうまい具合に配置されており、そのたびにゾクゾクしてしまった。そういえば、チェ氏のアドリブ部分に、グレッグソンの「協奏曲」のパロディ?と思われる部分があったのだが…?もし意図していたのなら面白いな。
最後は「パガニーニ・ロスト」。これは以前國末貞仁さんと山田忠臣さん、小柳美奈子さんのトリオYaS-375で聴いたのだが"本家"はさらにアツイ演奏。ここまでやりますか、というくらい、あの超絶難しいフレーズをフルパワーで(そう、須川さんとチェ氏のフルパワーで)聴かせるのだ。聴いているだけなのに、音を聴くことの脳内処理を求められる感じ。見事というほかない演奏だった。ちなみにこの曲「オリエンタル」とともに全音楽譜出版社から最近出版されたようである。ロビーで先行発売していたので「オリエンタル」だけを買ってしまったのだが、うーん、どこかで演奏できないかなあ。アンコールは、しっとりとJ.ラフの名曲「カヴァティーナ」。
ということで、予想通りのショッキングで素晴らしく、幸せな演奏会。この度の公演を実現するために尽力された関係者の皆様には、この場を借りて御礼申し上げる次第。またぜひ聴きたい!
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