イタリアの作曲家、ジャチント・シェルシのサクソフォン作品というと、まっさきに思い浮かぶのは「3つの小品」だろう。ソプラノサクソフォン独奏のために書かれた作品で、ドゥラングル教授の盤を始めとして録音も多い。また、最近話題になったのは 平山美智子のために書かれた「山羊座の歌」だろうか。6月3日に杉並公会堂で全曲演奏会が行われたが、この中の一曲にサクソフォンが使用されているのだ(この時のサクソフォンは、大石将紀氏が担当)。さらに、ドゥラングル教授の盤に入っている独奏曲、「Maknongan」「Ixor」辺りまでは普通に思い浮かぶだろうが、それ以上となると、多くの方が???となってしまうと思う。
ロンデックスの目録を開いてみると、その他にも4作品ほど、サクソフォンを含む編成の作品を書いているようだ。その中で(サクソフォン的に)注目すべき作品が、「Yamaon」。Bass Voice、Alto Sax、Baritone Sax、Contra Basson、Bass、Percという低音偏愛的編成のために書かれたのだが、サクソフォンが大活躍するのだ。
曲は、3つの楽章に分かれており、おもにバス(声)が主導して曲が進んでいく。サクソフォンは急速楽章で目立ちまくっており、楽譜を見ないと確証は持てないが、非常に難しいフレーズを伴った難しいパートを受け持っている。シェルシというと「単音の美学」なんて呼ばれてしまうこともあるが、「Yamaon」の作風は例えば「3つの小品」あたりを想像して聴き始めると、その鮮烈さに驚いてしまうかもしれない。まるで同じ作曲家の作品とは思えない(シェルシの作曲に関しては、いろいろなウワサがあるようだが…)。サクソフォンの音色と相まって、実にかっこいい作品だ。
幸いなことに、CDが出版されている「GIACINTO SCELSI(KAIROS 0012032kai)」。同じくサクソフォンが取り入れられた「I presagi」という作品や、「3つの小品」までをもカヴァーし、サクソフォン的興味からしても、入手しておいて損はないだろう。サクソフォンを担当しているのは、Pierre=Stéphane Meugé。XASAXのメンバーとして名高いく、このような同時代の作品についてはお手のもの、なのだろう。見事な演奏である。サクソフォン以外も、まるでライヴ音楽のような興奮に包まれており、曲が内包するパワーを存分に提示していると思う。
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そういえば、「3つの小品」にはリコーダー・アレンジ版の録音、なんていうものが存在する:「Temenos(Edition Zeitklang ez-18020)」。なんというか、ちょっと滑稽なのだが、面白いといえば面白い。そもそも、サクソフォンのために書かれた作品が、他の楽器で演奏されることなんてめったにないのだから、そういった意味でも貴重かもしれない。小ネタ。
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