2011/06/21

2011年第3回ドルチェ楽器デビューコンサート(6/19午後)

この春洗足学園音楽大学を卒業されたばかりの、小川卓朗さんと松下洋さんにご案内いただき、伺った。ドルチェ楽器主催の、いわゆる"新人演奏会"といった感じの催しなのだが、ドルチェ楽器も力を入れてかなり大々的にやっているようだ。なんと、3週間にわたってドルチェ・アーティストサロンを独占してしまうというのだから、その気合いの入れ方には恐れ入る。

この日は午前中と夕方に用事があったため、残念ながら4人ぶんしか聴くことができなかったのだが、それでもこの催しの面白さをしっかりと感じ取ることができ、またそれぞれの奏者の個性も堪能できた。

小川卓朗:
B.マントヴァーニ - 霧雨の狂
C.ロバ - ジャングル
P.ヒンデミット - アルトサクソフォン・ソナタ
アンコール(曲名失念)

ギリギリで到着、最前列に座って音を浴びることとなった。なんとMCを挟みながらの演奏。ソプラノサクソフォンのマントヴァーニは、至極難しいピアノとのアンサンブルを見事に吹きこなしており、驚き。会場全体にドカンと音が落ちてくるのは、小川さんのアイデンティティの一つだと思っている。もうちょっとこの会場の大きさの広さにふさわしいサイズの響きを聴きたいとも思ったが(たしか同じくドルチェ楽器で聴いたマーフィ氏のマスタークラスでそんなことを言っていたような)、それは贅沢な望みというものだろう。ともかく、よく難しい曲をここまで吹くなあという感じ。
ジャングルは、響きが少ない中でも聴き応えがある、隅々まで丁寧に作りこまれた演奏。そして、再びピアノとの演奏となったヒンデミット「ソナタ」は、アルトサクソフォンの輝かしい音色が眼前に迫ってきて、鳥肌モノだった。第2楽章は凄かったなあ…この曲を、音色とリズムでもって聴かせられる現代の奏者が、どれだけいるのだろうか…。第4楽章は、ロンデックスのSNE盤と同じく、冒頭のパッセージをサクソフォンで吹いてしまうアプローチ。驚いた。
アンコールの曲名を失念してしまったのだが、もしご存じの方がいたら教えてください(>_<)

柳澤祐美子:
P.モーリス - プロヴァンスの風景
C.フランク - ヴァイオリン・ソナタより3,4楽章

なんだかモーリスは緊張していたようで、いくつかミスがあったのが残念。ただし、全体的に俯瞰すると、曲の構成として芯がしっかり通っているぶん、変にちぐはぐになってしまっているようには感じない。コンパクトでまとまった音色・コントロールなど、サクソフォンを上手く使いこなしている感じが見受けられた。フランクのほうは吹っ切れたのか、気合の入った演奏。全体的な構成感も感じられるなか、要所要所でキラリと光るものを感じ取ることが出来た。
ちょっと驚いたのが、ピアノが山崎早登美さんだったこと!なんと、先週のサクソフォニー関東の演奏会でお世話になったばかりではないか。モーリスでの丁寧な音運びと、奏者への見守るような眼差しが印象的だ。そしてなによりヴィンテージ・ピアノのような"木の音色"は、サクソフォンとのデュオとしてあまり聴いたことないものだった。

椎木健太郎:
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
J.ブラームス - ソナタ第2番

聴いた4人の中では、いちばん精神的な成熟を感じた。演奏中の立ち振る舞いや、曲に対する眼差しなど、単に場数や自信から来るだけではないほどのものがある。"オーラ"と言ってしまっても良いかもしれない。自分の枠をきちんと決め、その中にピタリと合う形でまんべんなく音楽を敷き詰めて、丁寧に聴衆へ提示してみせる姿勢は、非常に好感が持てる。
「ファンタジア」のソプラノは、やや鋭い音色ながら、ラテン的なビート感と優しい旋律を上手くミックスした演奏。ブラームスは、ちょっとアルティシモ音域の時々の不発が気になったが、それでもそれを補うほどの端正な演奏で、最初から最後までとても楽しんだ。

松下洋:
C.ロバ - XYL(バラフォン2)
M.シュルーデ - リニューイング・ザ・ミス
F.シュミット - レジェンド
P.スウェルツ - クロノス

小川さんと同じく、MC(脱力系。笑)を挟みながらの演奏。ロバの「XYL」は、実は初めて聴いたのだが、重音パートに唸り、中間部の高速パッセージにもやはり唸ってしまった。録音で聴いてもよく解らないが、これはライヴで聴くと凄いパワーを持つ曲だ。続いてシュルーデで、松下さんの本領発揮。高難易度の高速パッセージを、驚くべき速度で畳み掛けてゆく。以前ウェニアンの演奏を聴かせてもらったときにも思ったのだが、この曲の作り方は聴衆を大変興奮させるものだ。あの細身の身体のどこから、こんなパワーが出てくるんだろうと思いながら、あっという間の8分間。
シュミットもやはり高速パッセージの畳み掛けが印象的だが、どちらかというともう少しお洒落に吹いてほしい感じがあったかなあ(笑)以前ライヴで聴いたクラウス・オレセンの「伝説」が、やはり自分の中ではベストなのかも。スウェルツは「申請したつもりはなかったが、プログラムに載っていたので吹いた」とのこと。たぶん今まで聴いた中で最速だった(笑)。いやあ、本当に良く吹くなあと、驚きと感心が入り交じった30分だった。"リサイタル"として、2時間フルセットでぜひ聴いてみたい。

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