2009/11/09

フランクの「ソナタ」を…

言わずと知れたヴァイオリンの名曲で、もしかしてこの曲を好きな方の中には、「サックスでやるなんて…」と目くじら立てる向きもあるかもしれない。だが、サクソフォン界では周知の通り、この曲を取り上げているプレイヤーは多い。個人的な考えだが、この曲が持つ旋律を管楽器で演奏するのは、大いに"アリ"だと思う。弦楽器、特にヴァイオリンだと、力強さという点でかなり奏者を選ぶのだと思うが、管楽器が持つダイナミクスの幅は、ある意味では弦楽器の表現力を上回る部分もあるかと感じるのだ。

で、超個人的嗜好なのだが、バリトンサックスで演奏されたフランクの「ソナタ」がけっこう好きなのです。変かな?笑。ヴァイオリンで演奏されたものはもちろん、チェロやアルトサックスの演奏ももちろん好きなのだが、かなり独自の世界を確立しているバリトンサックス版は、ずいぶんと印象が強い。

たぶん、国内ではこれが一番有名だろう。栃尾克樹氏の「Caprice en forme de valse(Meister Music MM-2043)」。栃尾氏のバリトンサックスアルバム第3弾ということでおなじみ。それにしても栃尾氏のアルバム、次々に出てくるということは、それだけ売れているんだろうなあ(私も全部持ってます)。

あまりバリトンサックスらしくない。そのらしくないところが好きか嫌いかで好みが分かれるとおもうのだが、どうなのだろうか。低音特有の、ビリビリと震える成分をごっそり取り去ったようなとても柔らかい発声だが、なんだかフルートでも聴いているような不思議な音だ。これはバリトンサックスというよりも、栃尾さんが持つ音、そのものなのだと思う。

「バリトンサックスらしさ」を求めるならば、こちらに尽きるな。高校生のころから聴いている、私にとっての「独奏バリトンサックス」の標準。アメリカのサクソフォン奏者、トッド・オクスフォード Todd Oxford氏の「Finesse(Equilibrium EQ22)」。フランクに加え、バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」、ボザ「アンプロヴィザシオンとカプリス」、ボノー「ワルツ形式のカプリス」という、なんだかどこかで見たことがあるラインナップなのだが、こちらのCDは1999年発売ということで、栃尾さんの一連のアルバムと比較すると、かなり先行しているのだ。驚き。

暑苦しく、濃密・濃厚な音世界。フランクでは、ここまで歌い上げるか!というほどの強烈なフレージングに驚き、続くバッハ、ボザ、ボノーも、無伴奏の世界を非常によく表現している。アルバム制作にあたり、弦楽器のプレイヤーにアドバイスを受けたそうで、その経緯が生きているのではないだろうか。こちらのリンク先から試聴できるので、聴いたことのない向きは、ぜひ(栃尾さんの演奏しかしらないと、驚くかも)。アマゾンへのリンクは、こちら→Todd Oxford : Finesse

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