2014/08/22

Belgian Music for Alto Saxophone and Wind Band

管打の二次予選課題曲審査が終わり、二次予選選択曲審査に進む受験者が発表されたようだ。受験者がどの曲を選んだかも番号で掲載されている。:http://www.jmecps.or.jp/pdf/sax2ndschedulesentaku.pdf

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ベルギー・ブリュッセル在住のサクソフォン奏者(ということになるのか…)、伊藤あさぎさんからお譲りいただいたCDをご紹介したい。

「Belgian Music for Alto Saxophone and Wind Band(World Wind Music WWM 500.183)」3人のベルギーのサクソフォン奏者をフィーチャーし、Yves Segers指揮ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団をバックにベルギー産のアルト・サクソフォンのための協奏曲を収録する…という、贅沢な内容のCDである。アドルフ・サックス生誕200周年記念の一環として制作されたようだが、記念の年、ということで思い切った演奏会や録音の企画が頻発するのは、嬉しい事である。あさぎさんには、この場を借りて改めて感謝申し上げる次第。

まずは、フィーチャーされている3人の経歴を簡単に。

ピーター・ペレン Pieter Pellens氏は、1988年生まれ。ベルギーのゲント音楽院でラフ・ミンテン氏に、イタリア・ミラノのヴェルディ音楽院でマリオ・マルティ氏に、オーストリアのウィーン音楽院でラース・ムラクシュ氏に師事した。現在は母国ベルギーに在住。Five SaxやAmigo Saxophone Collectiveほかに所属するほか、現代作品の演奏にも積極的に取り組んでいる。そういえば4月に池袋のじとっこ組合で一緒に呑んだな。

ノルベール・ノジ Norbert Nozy氏は、1952年生まれ。ベルギーサクソフォン界の大御所の一人である。ブリュッセル音楽院にて、サクソフォン、ソルフェージュ、打楽器、室内楽、和声、対位法を学んだ。サクソフォンは特別賞を得、その他の科目でも一等賞を獲得している。1985年から2003年までベルギー・ギィデ交響吹奏楽団で指揮者として活躍し、数々の名録音を残している。現在は、オランダのマーストリヒト音楽院とベルギーのブリュッセル音楽院で、サクソフォンと指揮を教えている。

クリストフ・ケレマンス Kristof Kerremans氏は、1980年生まれ。この方の名前は知らなかったのだが、2008年よりベルギー・ギィデ交響吹奏楽団のサクソフォン奏者であるそうだ。レベッケとゴーイクの音楽院でソルフェージュ、サクソフォン、室内楽を学んだ。その後ブリュッセル音楽院でノジ氏に師事、さらにスヴェーリンク音楽院でアルノ・ボーンカンプ氏に師事し、卒業している。

そして、ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団だが、個人的には、現在の吹奏楽団で世界で好きな吹奏楽団を3つ挙げろと言われたら必ず入ってくる団体である。1832年に創設され、ノジ氏の時代に飛躍的に技術を高め、世界クラスの吹奏楽団に成長した。黄金期のギャルド・レピュブリケーヌに類似した編成を持ち、魅力的なサウンドと幅広いレパートリーを持つ。

プログラムは、以下。*の印は、世界初録音を表す。

Maarten De Splenter - Concerto Comenia (Soloist: P.Pellens) *
Wouter Lenaerts - Kryptos (Soloist: N.Nozy) *
Andre Waignein - Rhapsody (Soloist: K.Kerremans)

「Concerto Comenia」…この不思議なタイトルは、Commeene(Splenter氏の先生)とComenius(チェコの近代教育学の始祖)を組み合わせた造語なのだそうだ。全体的な印象は交響詩のような様々な場面を経ながらクライマックスへと至るような内容。全体は4つのパートに分かれており、冒頭まるでSF映画音楽のような不安な響きとともに始まるが、すぐに快活なタランテラ風の舞曲に(トマバラっぽい)、第3部では冒頭を想起させる内容が戻り、第4部ではバンドとともに盛り上がりを一気に聴かせてしまう。ペレン氏の演奏を、こういったCDのようなもので初めて聴いたのだが、まあなんと上手いこと!また、バンドを前にしても埋もれないだけの存在感を持っており、こと最終部に向けての疾走感は見事なものである。これ、ライヴで聴いたら興奮するだろうなあ。

「Kryptos」は、いくつかのモチーフ(Nozy氏の名前や、SAXや、アルト・サックス=A.S.)を元に響きの面白さを追求した作品と言えるだろう。サクソフォンパートはしつこいとも言えるほどの跳躍とフラジオに満ちているのだが、ノジ氏の演奏はどんとこいといった感じで余裕綽々にこなしていく。最終部のグリッサンドの応酬は、かなりの聴き物だ!

「Rhapsody」は、今回の管打の課題曲になっていることもあり、もうおなじみですね。美しいメロディを持ち、超絶的な技巧でもって一気に聴かせてしまう3楽章の作品である。やはりこの大編成で聴くと、第2楽章の壮大さが際立つ。Kerremans氏は、吹奏楽版を初演したそうな。その時の動画がこちら。


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デジタル:Belgian Music for Alto Saxophone and Wind Band
CD:Belgian Music For Alto Saxophone & Wind Band: Royal Symphonic Band Of The Belgian Guides

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